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厄災の始まりは 神戸 から  作者: Ryu-zu
第二章 灘区 新在家周辺 サイコパス
22/216

サイコパス怒る

ピンポーン


また別の部屋のインターホンを鳴らした。


ドアの覗き穴から外を確認した様子で、家の中からは40代くらいの女性が出てきた。

 『はい、どちら様でしょうか?』

「まだ非難してないんですね。そこのモールにみんな避難してますよ」


華那子がそう言うとその女性は首を横に振った。

 『うちは身障の子供が居るので、避難所には行けないんです』

  「なんで?そんなんおかしいやろ?誰かに何か言われたん?」


衣摩が猛烈に話に食い込んで来る。

  「んじゃーうちらのブースに来るとえぇよ」

 『いえ、皆さんにご迷惑をお掛けしますし居心地も悪いと思うので』

  「身障ってどんな具合なん?」

 『・・・』

  「聞いたら対応の仕方もあるやん?教えて」

 『うちの子は、ダウン症に動脈管開存症を患っています』

  「PDAかぁ~」

 『はっ?良くご存じで…』

  「んで、シャントは?」

 『お医者様なんですか?』

  「違うよ。看護師の方ね」

 『そうなんですか。シャントは1.77でした』

  「微妙な所か。手術は勧められたん?」

 『いえ、自然閉の可能性もあるから様子を見ようと言われました』

  「今の年齢は?」

 『今年14歳になりました』

  「そっかー」


2人のやり取りを華那子と絵里は唖然として見ていた。

「絵里、こいつなんやねん?」

 「知らんわ(笑)」

 「衣摩のこんなん初めて見たしな」




  「なぁ華那ちゃん、この子助けたいんやけどえぇかな?」

「具体的に何を考えてるの?」

  「レベル付けたらダウン症もPDAも治るんちゃうかなって思ってんの」


華那子は衣摩の胸倉を掴んで自分の身体に引き寄せ、耳元で囁くように怒って言う。


「なんで助けたいんかは分からんけど、この子に人殺しさせて生かすんか?」

  「ゴブリン殺したらえぇやん?」

「おまえ、さっきからゴブリンどっかで見たか?」

「急に1匹もおらんようになっとんやで?」

  「んじゃ私が探してくる!」

「おい絵里、こんなんゆうとうけど、どないする?」

 「ゴブリン見つかるんなら行ってこいや(笑)」

  「うん、行って来るー」


  「おかあさん、ちょっとだけ待っといてくれん?」

 『はぁ?意味が分からないんですけど・・・』


残された華那子たちが事情を説明する。

母親も子供も進化すればこの先を生きていける可能性が大幅に高くなる事。


一通りの説明を終えて華那子はフゥーとため息を吐く。

衣摩は何故いきなり人助けをしようなんて思ったんだろう。

華那子は少し怒りに似た感情を持っているが、絵里は何故かすごく楽しそうだ。

人殺しの殺人鬼が人助けなんて笑わすなよと華那子は思い耽る。






  「おーいゴブリンーどこに居るのー」

大鎌を片手に空中浮遊しながらゴブリンを探すが、全く見当たらない。


地面付近をフワフワ飛んでいてもまったく見つからないので、高いマンションの屋上に行って世間を見下ろす事にした。

垂直の壁でもこの大鎌を持っていれば重力を無視して登っていく事が出来る。

登ってる途中で、この大鎌を仕舞えば落ちていくのかな?とか思うが、怖くてそれは出来ない。



マンションの屋上で周りを見渡す。

人もゴブリンも何も動いていない。

あれだけ大量に居たあいつらはどこへ行ったのか。



しばし見渡していると、数100m向こうの緑色の看板のコンビニとその隣の駐車場に、薄緑の生き物らしき者がかなりの数ウロウロしてるのが見えた。

間の仕切りのフェンスは見事に潰されて地面と同じ高さに踏み鳴らされている。


  「おった~」

衣摩は嬉々として大鎌に(またが)ってコンビニの方に向かった。


大鎌を持ったままだと普通に浮遊するだけだけど、魔女の(ほうき)のように跨ると指向性を持った浮遊が出来るとわかった。

普通の浮遊でも左右に前後に自分の意志で動く事は出来るけど、地面が無い所は浮遊できなかった。


だが跨って鎌の先を上に向けると、そのままの高さを保ったまま動くことが出来る。

鎌先を右に向ければ右に、左に向ければ左に移動する。


おもちゃを与えられたようで、はしゃぐ衣摩だった。

だが、当の目的を思い出す。


大鎌に跨りコンビニの方に進む。

上からざっと見ただけでも200~300くらいのゴブリンがそこそこ広い駐車場に集まって居る。

良く良く見ると、戦っているように見える。

  「なにしてるんやろ?」

  「まぁいいかー」


駐車場の西の端に降り立ち、近くで暴れているゴブリンを片っ端から大鎌で切り裂いていく。

チラチラ鑑定でゴブリンを見ているが、レベルが2とか3以上のゴブリンばかりだった。


サクサクと蹂躙していくと、同じようにサクサクとレベルも上がっていく。


  (楽しい♪)

半分近く倒したところでステータスを見るとレベルが10に達していた。

  

  「すっご~い」

  「あっ?」

ステータスの中に恩恵と言う新しい項目が増えていた。

鑑定してみると、一人だけだが人形化出来るスキル付きの職業だった。

  (華那ちゃんに従属したからやんなー)


だが新しい職業は覚えてないので、今のところは選択無しの人形師だけだ。

因みに、今覚えてる職業は[採掘師][掘削師][穴掘師]の三つだ。

絵里の初期職業と変わらない、ツルハシによる職業群だ。




ウキウキした気分でゴブリンを屠っていく。

元々レベルとスキルと魔法の世界が大好きで、華那子と絵里に勧めたのも衣摩だった。

楽しすぎて、大鎌を持ったままクルクルと回り出す。

回転に合わせてゴブリンも丸い範囲で倒れていく。



3分の1程残して一息ついていると、コンビニの屋根の上に居た大きめのゴブリンが憤慨した様子で降りて来る。

最初から屋根の上に居る男の子と、そのゴブリンの存在は認識していたが、特にモーションも無いのでスルーしていたが、単なる見物人では無かったようだ。




  『おいおいね~ちゃん!なにしてくれとんねん!!』


鑑定で見てみると、ゴブリンも男の子もどちらもレベルが9と高かった。

そしてゴブリンには 誘導 と言うスキルが、少年には ゴブリンテイマー と言うスキルがある。


勢い付けて飛び降りてきたゴブリンは、衣摩の大鎌の一閃で胴体が上下に分かれて崩れ落ちてしまった。

そのゴブリンが墜ちた瞬間に、駐車場に居たゴブリンの大半は我に返り、逃げ出した。



  『あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』

  『おんどりゃーどないしよんじゃー』

  「そんな若いのに、おんどりゃーって、播州人かっ?」

  「あんた、12歳かそこらやろ?」

  『14じゃ!!!』

  「中2かよっ」


  『せっかくここまで育てたのに・・・』


  「人形化(マリオネット)

衣摩は対応もせず、いきなりその少年を人形にしてしまった。


  「ゴブリンを1匹で良いから使役してきて」


少年は返事もしないでゴブリンの方に向かって行った。

そして足を怪我して逃げ遅れたゴブリンをテイムして帰ってきた。


  「うん、ごくろうさん」

  「じゃーゴブリンと一緒に着いてきて」

衣摩は任務を遂行した事と、一気にレベルが上がった事や、やっと選択できる職業を覚えた事が嬉しかった。


ニコニコと少年と手を繋ぎ、ゴブリンは肩車をして華那子の元に向かう。



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