3.嵐のような訪問者たち④
* * *
(男の人ってたくさん食べるのね)
ニーナは目の前の様子をそんなふうに観察しつつ、男の人の食べる量に一人驚いていた。ジェイルーン様といい、王太子様といい、その細い身体のどこに…と聞きたくなるほど食べっぷりが良かったのだ。
「あぁ、ニーナ。これを下げたら別の種類のお茶を頼む。」
「かしこまりました。」
何故かニーナは王太子付きのメイドのような仕事をしていた。王太子様がここに来る際に護衛しか連れてこなかったことが理由で、食事の世話をする者が居なかったのだ。
ジェイルーン様が「誰か経験者を呼ぼう」と言ったのを王太子様が「わざわざ呼ぶことはない。それにわたしが無理を言うのだから、不手際があったとしても責めることはしない」と私を指名したため、今のようなスタイルとなった。
「ジル様、お茶のお代わりはいかがなさいますか?」
「…結構だ。」
ジェイルーン様にはいつもの執事の方がついていて、何をしていいか分からないニーナにとっては手本となる者がいて非常に助かっていた。
「お茶、もういらないのか?」
「あまり飲む気分にはなれませんし、食事が終わったなら、他に仕事もあるでしょうし彼女は解放して差し上げるべきかと。」
「ふ〜ん。ねぇ、ニーナ。」
声を掛けられ、王太子様へ一歩近づく。何が御用だろうか?と思い聞こうとした矢先に、立ち上がった王太子様に手を取られた。
「えっ?」
「突然無理を言ってすまなかった。感謝する。」
元々の担当ではないことをしたからか、わざわざ王太子様に御礼をされ、「そのような事をしなくてもいい」と言おうとするより先にそのまま手が握られた。
すると何処かでガチャんと小さな物音が聞こえたかと思えば、再びあの冷気のようなものを感じた。
「……ニィー。」
「は、はいっ!」
思わず聞こえた懐かしい呼び方に昔のような返仕方をしそうになる。私のことをこうに呼ぶ人は2人しかいないし、ましてやこの人がそう呼ぶ時は私に怒っているときだ。
「あ、の、どうかなさいましたでしょうか。」
「もうここはいい。ネコたちの所へ。」
「は、はい。王太子様、ジェイルーン様、失礼いたします。」
慌てて頭を下げ、言われた通りネコたちのもとへ向かう。
(どうして怒ってらっしゃったのだろうか。もしかして知らぬ間に不手際でもしてしまったのか。)
いろいろな考えがぐるぐると頭の中でまわっている。
ジェイルーン様だって怒る。けれども声を荒げて怒ることはしない。昔から怒る時は、たしなめるように怒るのだから、声を荒げて怒るよりも迫力があるのだ。
温厚な人ほど怒ると怖いってよく言いますよね。
そして、私事ですがもう1つ連載を開始しようかと思いますので良かったら覗いてみてください⊙⊙




