もろこしハウス
24、まで、怖いものは、ほとんど無かった。
今日この日、31まで、怖いものが、増えた。
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いつかの日、ある日、背の小さな子が裏庭にいました。
広い裏庭は畑でした。
夏はきゅうりとか、スイカとか、とうもろこしとか。
もう、その子どもは、31になって、疲れていました。
もう、ただ、疲れていました。
疲れている人が、周りにたくさんいるのに、ただ、31の子どもは疲れていました。
夜、寝る前、31の6の子どもは、布団の中で31の手を握りました。
いや、もしかしたら、手を伸ばしたのは31の方だったかも知れません。
31は小さな声で、言いました。
パパみたいな人じゃなくて、大きくなったら元気な人と結婚してね。
31は、その時、6がグスンと泣くのをききました。
布団からちょこっと出た6の頭を撫で、31は、疲れて眠りました。
翌朝、31は、寒くて、動けませんでした。
やっと、リビングまで来て、横たわりました。
日に日に言うことの聞かない体になってきました。
6と、4と、話をしました。
6は、テレビを見て、とうもろこしが嫌いといいました。
おそらく、とうもろこしがテレビに出演していたのでしょう。
31は、思い出しました。
いつかの日、ある日、小さい子どもがいました。
今はもう、誰もいない家、思い出と、ゴミみたいなものが混在する家。
31が6の時、裏庭は大きな畑でした。
70と一緒に、畝を作り、肥料を撒き、指で穴を作り、種を入れました。
畑のものは、どれもおいしくて、好きでした。
とうもろこしの一粒に、小さな虫がいました。
お部屋、かなと、思いました。
でも、虫は死んでいました。
その時の6は、何も思いませんでした。
31は、6の時の夏の暑さは思い出せないけれど、葉を剥いて、髭をとって、茹でて、食べて。
そこに、虫が死ぬ理由があったことなど知らずに。
31は、もろこしハウスに一人。
29と6と4は夕方までお出かけ。
玄関ドアがしまる音を聞いて、声を出して泣きました。
しょっぱい水は、もろこしハウスを茹であげる程もなく、下へと落ちました。
小さな裏庭は畑です。
スイカは先っちょがおいしいと言い出したのは誰でしょう。
切ってあるあれの、先っちょは、元の形なら、真ん中です。
31は、疲れていました。
何がなんでも、疲れていました。
上手に生きられないと、疲れていました。
70みたいに、上手に生きられないと。
でも、今はもういない70も、もろこしハウスに住んでいたのかも知れません。
誰しも、強くないけれど強くありたいと思う人も、まぁ、思わない人もいるけれど。
もろこしハウスに住む人は、茹でる人とは噛み合わないのです。




