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マシュマロ 【私にとっては、ぜんぶ可愛いのです。絶望と狂気に満ちた、認識乖離ホラー】  作者: 鈴音めぐり


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第一話 おうち

私は小さくて色が白いので、マシュマロと呼ばれています。

私の部屋は、とっても可愛いのです。

壁紙は淡いピンク色で、赤くて細い模様がたくさん入っています。指でそっと撫でると、少し暖かくて気持ちいいんです。窓には白い布がかかっていて、風が通るたびに右へ、左へ、優しく揺れます。


ベッドは真っ白で、ぬいぐるみがたくさん置いてあります。うさぎさん、くまさん、猫さん、それから首のない子や、首だけの子もいます。私はその真ん中で膝を抱えて座るのが大好き。

囲まれていると、まるで雲の上にいるみたいで、とても安心します。

外から見たら、きっと「なんて幸せな子だろう」と思ってもらえるはずです。


部屋の隅には、黒い布で包まれた四角い箱が、たくさん積み重なっています。

毎日、ひとつずつ増えていくのです。

今日も、朝の九時ちょうどに届きました。

玄関のドアをそっと開けると、いつものように置かれています。

私は箱を両手で抱き上げました。

ずっしりとして、不安定なのです。

「今日も、ありがとうね」

私は箱に頰をくっつけて、そっと囁きました。

中からくちゅ……という、とても可愛い音が聞こえます。

私は嬉しくなって、それを部屋の隅の山に重ねました。

もう二十三個目。山はだんだん大きくなって、私の背より高くなっています。

天井に届きそうで、なんだか楽しみです。

誰が運んでくるのかは、知りません。

ドアの外で、ずるり……ずるり……と、湿った音がすることがあります。

私はそれを聞くたび、「また来てくれて嬉しいな」と心の中で思うのです。


リビングには、家族が待っています。

おとうさんは、リビングの真ん中の大きな椅子に、いつも座っています。

黒いスーツをきちんと着て、白ネクタイもまっすぐ。

「おとうさん、今日もお仕事お疲れ様」

私が声をかけても、おとうさんは何も言いません。

ただ、静かにそこにいてくれます。

おかあさんは、天井が大好きです。

白いワンピースを着たまま、のんびり揺れています。

「おかあさん、今日はとっても機嫌よさそうね」

おかあさんは目を開けていませんが、きっと幸せな夢を見ているのでしょう。

おとうとは、最近床下がお気に入りです。

前はクローゼットの中が好きだったのです。エサをあげても食べません。

「おとうと、そろそろ出てくれば?」

私が床に耳を寄せて言うと、奥の方で何か、くちゃ……という小さな音が聞こえます。


私はこの街が大好きです。

家族がいて、

ぬいぐるみがいて、

箱の山がいて。

全部、優しくて、可愛いんですもの。

今、窓の外は薄い桜色の空です。

そろそろ、街を少しだけお散歩してもいい時間かもしれません。

私は立ち上がり、家族たちに小さく手を振りました。

「行ってくるね。みんな、いい子でお留守番してて」

ドアを開ける前に、私は振り返って、積み重なった黒い箱の山を見上げました。

一番上の箱が、ほんの少しだけ、震えた気がします。

私は、嬉しくなって、にっこりと微笑みました。


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