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第79話 ねぎま理論

【20年前 帝都・元老院議事堂】

議員たちの罵詈雑言が、センポへと向けられる中帽子の上の雄鶏の人形が喋りだす。


雄鶏「えぇ~? でもこの鶏肉、バロア帝国産だから柔らかくてうまいけど……」


それを聞いた議員たちは言葉を止める。


議員1「い、今…なんと?」


議員「帝国産の鶏肉だと……?」


雄鶏の人形は、串に刺さったネギをじーっと見つめる。


雄鶏「この変な緑の野菜、美味しくなさそうだもん。これ何?」


ロバ「今お前『ネギ』って言ってたじゃねぇか!?鳥頭にもほどがあるだろ!」


ロバの人形は両手を大きく広げ、議場にも訴えるように叫ぶ。


ロバ「それに変な野菜じゃねぇよ!ジパング国じゃ一般的な野菜だぞ!?食ってみろって、うまいから!」


雄鶏「ええ~?でも俺草好きじゃねえんだけど」


議員3「ジパング国の……野菜だと…?」


雄鶏は、渋々といった様子でネギをかじる仕草をする。


雄鶏「うえええ……やっぱ草じゃんか。微妙に青臭いし……やっぱロバくんにあげるよ」


ロバ「いやいや、それ単体じゃなくて一緒に食えって言ったろさっき!」


ロバは串を指し示す。


ロバ「バロア帝国産の鶏肉と、ジパング国産のネギ!!一緒に口に入れてみろって!」


ハヌス「……二つの国の食材を使った料理なのか。あの『ネギマ』とやらは」


グラバー「へえ……見たことねえが。少し食ってみたくはあるな」


雄鶏は、しぶしぶ串に口をつける仕草をする。


雄鶏「……お?おおお……!?」


ロバ「どうだ!? 味はよ!」


グラバーを含め、複数の議員たちが思わず前のめりになる。

議場の空気が、明らかに変わっていた。



雄鶏「いや~…やっぱ青くせぇわ」



ロバの人形が、盛大にズッコケる。

グラバーも思わず頬杖を崩し、机の上にコケるようなジェスチャーをする。


しかし。


雄鶏「けどさ、不思議なんだよな~」


ロバ「……なに?」


雄鶏は、串を眺めながら首を傾げる。


雄鶏「さっき単体でネギ食った時よりも、なんか炭火の風味が増しててさぁ。ちょっと美味くなってる気がすんだよ」


議場に一瞬の静寂。議員たちが思わず目を見合わせる。


ロバ「だろ!? だろ!!?」


ロバは、得意げに胸を張る。


ロバ「単体じゃクセがあってもな。組み合わせりゃ、互いの良さを引き立てるんだよ!」


そこで。

今まで押し黙っていた杉原センポが、静かに口を開いた。


杉原センポ「一見、相容れないと思える食材であっても」


ゆっくりと、議場を見渡す。


杉原センポ「組み合わせや工夫次第で、互いを損なうことなく……むしろ、その価値を高め合うことができるものなんです」


わずかに微笑む。


杉原センポ「それは、食に限った話ではございません」


ロバ「まあそれはそれとして!どうすんだって今日のライブはよぉ!!」


雄鶏「だから、キャンセルすればいいんじゃねえ?猫来たらそのまま飲み会しようぜ」


ロバ「だから簡単に言うなって!」


せっかく意味深な言葉を紡いだセンポの頭上で、どうでもいい会話を再開する人形たち。


グラバー「……プッ」


議場の静寂の中、小さく漏れた笑い。


議員2「ぐ、グラバー卿……?」


グラバー「ハッ……ハハッ……!」


若きグラバーの肩が震える。


グラバー「アハハハハハハハハッ!!!」


ついに、堪えきれず議場のど真ん中で、盛大に笑い出した。


議員1「お、おい!よさんかジェームズ!!」


議員3「ここは崇高な元老院だぞ!!」


しかし。


ハヌス「……ブフッ」


彼の隣に座っていたハヌスも抑えきれなかった。


ハヌス「フ……フハハハハ……!」


議員4「ハヌス卿……!? まさか、あなたまで……!」


直後。


グラバーとハヌスは、揃って腹を抱えて笑い出した。


議員1「ジェームズ!エドワード!!よさんか貴様ら!!」


それに釣られるように、他の議員たちも笑いを堪えきれなくなっていく。

極度の緊張感に包まれていた議場で繰り広げられる、あまりにも気の抜けた人形たちの会話。

そのシュールさに耐えきれず、笑いは次第に議場全体へと広がっていった。


笑いによって、少し肩の力が抜けたのか一人の議員がセンポに声をかける。


議員5「ジパングの使者よ、どうせならそのふざけた人形劇を最後まで見せてほしいのだがいかがか?」


議員1「な、何を!?そのような」


議員4「まあまあ、よいではないか」


肩を揺らしながら、まだ笑いの余韻を残している。


議員4「ここまで来て中途半端に終わる方が、よほど気持ち悪い」


議員3「し、しかし……ここは帝国の中枢で!」


議員2「だからこそ。これほど不可解なものを目の前にしておきながら、見ぬふりをする方が愚かであろう」


議場に、小さなざわめきが広がる。


グラバー「ハハッ、いいねぇ」


頬杖をついたまま、口元を歪める。


グラバー「どうせなら俺も最後まで見てみたい」


ハヌス「同感だな……」


視線が、一斉にセンポへと集まる。

センポは、わずかに目を細めた。


センポ「……承知いたしました」


静かに一礼する。


杉原センポ「ではもう少々、お付き合い願えればと」


すると、再び雄鶏とロバの人形が動き出した。


雄鶏「でもさぁ、ドラムの犬がいねえんじゃ無理じゃね?そんな都合よくドラムやってくれる人が現れるわけ」


???「フッ……どうやらお困りのようだな。お前ら」


帽子の奥から、やけに丸みを帯びた赤い人形がせり出してくる。

その場の空気が、わずかに変わる。

思わず議員たちも、議論そっちのけでその異様な存在に釘付けになった。


雄鶏「お、お前は……!!?」

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