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第78話 一触即発の議場

【20年前 帝都・元老院議事堂】

怒号と疑惑の声が飛び交う議場で、杉原センポの被る帽子のクラウンが突如開いた。

そこから現れた、ひとりでに動くロバと雄鶏の人形。

しかも雄鶏の手には、なぜか焼き鳥の『ねぎま』が握られている。


あまりにも異様な光景に、議員たちはただ困惑するほかなかった。


ロバ「今日、犬と猫来るの遅くねぇ?」


雄鶏「たしかになぁ。犬のやつ、こういう時は意外と早いのに」


議場が騒然とする。


議員1「な…何事だ!?人形が独りでに動いているぞ!」


議員2「しゃ…喋ったぞ…」


議員3「あの帽子……まさか幻惑魔法の魔道具の類か!?」


ロバ「あ、今ラ〇ン来たわ」


ロバは、帽子の中から何か四角い板のようなものを取り出して目を落とす。


ロバ「おいおい、マジかよ~……」


雄鶏「おー、どうしたどうした?」


ロバ「いやさぁ、猫のやつは寝坊して今から家出るってよ」


雄鶏「相変わらずマイペースだなぁ、アイツ」


ロバ「問題は犬だよ。あいつインフルかかって、今日来れねぇってさ」


雄鶏「えぇ~!?それマジ?略してそマ?」


ロバ「略す必要あったかそれ…?いやマジマジ。どーすんだよ今日のライブ。ドラムいねぇとバンドとして成立しねぇぞ」


荘厳たる議場のど真ん中で始まった、人形たちのやり取り。

それはまるで、ファミレスでだらだらと雑談しているかのような、あまりにも緊張感のないものだった。

グラバーは呆れたような目で頬杖をつき、ハヌスは腕を組んで目を細めた。


グラバー「おいおい、何だアレ……何見せられてんだ俺たちは」


ハヌス「わからん……。それにしても、あのスギハラとかいう男……なぜこの混沌の中心にいながら、あれほどにこやかな顔でいられる……」


グラバー「ハハッ、議場のど真ん中で大道芸披露とはな……。ジパングの使節は肝が据わってる」


ハヌス「ただの礼儀知らずか……あるいは帝国に対する挑発か」


帽子の上の人形たちは構わず会話を続ける。


雄鶏「キャンセルするしかねぇんじゃねえ? うーん、美味ぇ美味ぇ」


ロバ「簡単に言うなって!向こうももうプログラム組んじまってんのによぉ。……ていうかお前、さっきから何食ってんだよ?」


雄鶏「んー?焼き鳥のねぎま!うめーぞぉこれぇ」


ロバ「ニワトリのお前が、さらっと鶏肉食ってんじゃねぇよ!倫理観どうなってんだ!」


雄鶏「そんなカリカリすんなって~。君、野菜好きだろ?このネギの部分あげようね~」


雄鶏の人形は、串の先をロバに向けながらへらへら笑う。


ロバ「いらねぇよ!!好き嫌いすんな、一緒に食え!一緒に!!」


その時。

ついに、一人の議員が耐えきれず席を蹴って立ち上がる。


議員3「ジパングの使者よ!!」


怒声が、議場に響き渡る。


議員3「ここは帝国の中枢、元老院であるぞ!場を弁えよ!!」


それに続き、別の議員も立ち上がる。


議員4「四百年近く我らとの交易を拒絶しておきながら…。今さら現れて、『開国した』だの『友好関係を築きたい』だのと、よくもぬけぬけと……!」


議員5「その挙句がこれか!!」


さらに、畳みかけるように声が上がる。


議員5「この崇高なる元老院議事堂で大道芸とは……!ジパング国は、道化師を送り込んだのか!?」


議員6「覇王の真の目的は一体なんだ!?このバロア帝国を侮辱する気かッ!!」


議場の空気が一気に張り詰め、怒りと侮蔑がセンポへと集中する。



【現在 ジパング大使館・応接室】

グラバーは、ゆっくりと葉巻の煙を吐き出した。


グラバー「怒り心頭の議員たちの罵詈雑言がな……センポに、容赦なく浴びせられた」


その言葉を、梅原ナオと茅森ノノは真剣な面持ちで聞き入っている。

ノノは膝の上で、両のこぶしをきゅっと握りしめた。


――その一方で。


襖の向こう側で盗聴用の魔道具をぴたりと当てながら、耳を澄ませているステラ、カイ、リラ。


ステラ(小声)「……昔から、あの帽子の空気の読まなさは異次元レベルだったのね」


リラ(小声)「でもこれ……ほんとに一歩間違えたら、バロア帝国とジパング国って……」


カイ(小声)「今みたいな関係じゃなくて、もっと険悪になってたでしょうね…」


三人は、話に引き込まれるようにじりじりと、襖へと身を寄せていく。



ギシッ



わずかな軋み音が、静寂の中に響いた。


ステラ(小声)「ゲッ……やばっ!!」


リラ(小声)「い、今の……気づかれてないですよね……?」


カイ(小声)「二人とも! あんまり襖に身体当てすぎちゃダメっすよ!!」


三人は慌てて距離を取る。

だが、気づかれなかったのか。あるいはあえて気づかないふりをしたのか。

グラバーは語りを続ける。


グラバー「だがな……」


わずかに口元を緩める。


グラバー「そんな一触即発の空気を変えたのが。次に発した、あのニワトリの人形の一言だったのさ」


グラバーは一度吸いかけの葉巻を灰皿に置いて続ける。

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