↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/22

第22話 眠りの揺らぎ ―主の誕生の前兆―

 森の中心は、静寂に包まれていた。

 ネムリネの蕾は淡い光を脈打たせ、

 進化の眠りの中でゆっくりと呼吸している。


 人族と魔族は距離を保ちながら並び立ち、

 ドラゴンはその前で静かに目を閉じていた。


 森全体が、まるで息を潜めているようだった。


---


 ふいに――

 ネムリネの蕾が、ひときわ強く光を放った。


 ミナが息を呑む。


 「……ネムリネ……?」


 カイルが魔力視を発動する。


 「魔力が……揺れてる。

  進化の眠りの“最終段階”に入ったんだ」


 蕾の光は脈動し、

 森の魔力が波のように広がっていく。


 木々がざわめき、

 眠っていた魔物たちが夢の中で身を震わせた。


 隊長が小声で言う。


 「……これは……森全体が反応しているのか……?」


 リュシアは霧を漂わせながら、蕾を見つめた。


 「……主の魔力が、森の根を通して広がっている。

  森そのものが“主の誕生”を受け入れようとしている」


 影部隊の隊員が息を呑む。


 「これほどの魔力……

  人族領まで届くのも当然ですね……」


 リュシアは静かに頷いた。


 「でも、攻撃性はない。

  これは……祝福の魔力だよ」


---


 ドラゴンがゆっくりと目を開いた。


 「……来るぞ。

  眠りの子が“次の段階”へ進む」


 レオンが前に出る。


 「目覚めるんですか?」


 ドラゴンは首を横に振る。


 「まだだ。

  だが……眠りの奥で、意識が形を成し始めている」


 その声は低く、森全体に響いた。


---


 ネムリネの霊体は、蕾の奥で静かに眠っていた。


 ――あったかい……

 ――ねむる……

 ――ここ……ぼくの……ねどこ……


 その声は幼く、柔らかく、

 しかしどこか強い意志を帯びていた。


 ――まもる……

 ――みんな……ねむれる……

 ――ぼく……ねむりの……しゅ……


 霊体の輪郭が、ゆっくりと形を変えていく。


 光の尾が伸び、

 霧のような魔力がふわりと漂い、

 “主”としての気配が芽生え始めていた。


---


 森が――揺れた。


 木々がざわめき、

 地面が柔らかく脈動し、

 森全体がネムリネの変化を祝福するように光を放つ。


 人族の隊員が震える声で言う。


 「……森が……生きているみたいだ……」


 魔族の影部隊も息を呑む。


 「これが……主の誕生……」


 リュシアは静かに言った。


 「森が“主を迎える準備”をしているんだ。

  この森は、眠りの主の家だからね」


---


 ドラゴンが二つの勢力を見渡し、

 低く言った。


 「……これより先は、眠りの子の領域だ。

  騒ぎを起こすな。

  魔力も使うな」


 人族も魔族も、緊張した面持ちで頷く。


 ドラゴンは続けた。


 「眠りの子は、今……“自分が何者か”を形作っている。

  その過程を乱せば、森が暴れる」


 隊長が息を呑む。


 「暴れる……?」


 ドラゴンは静かに頷いた。


 「森は眠りの子の体の一部だ。

  主が混乱すれば、森も混乱する」


---


 ネムリネの蕾が、ひときわ強く光を放った。


 ミナが思わず手を伸ばす。


 「……ネムリネ……!」


 レオンがミナの肩を掴む。


 「触っちゃダメだ。

  今は……見守るしかない」


 リュシアも静かに言う。


 「主は今、夢の中で“自分の姿”を決めている。

  その瞬間に触れるのは危険だよ」


 蕾の光はさらに強まり、

 森全体が淡い光に包まれた。


---


 ドラゴンが低く呟いた。


 「……来る。

  眠りの子が……“夢の終わり”へ近づいている」


 レオンは息を呑む。


 「ネムリネ……目覚めるのか……?」


 ドラゴンは静かに首を振る。


 「まだだ。

  だが――次に光が収まった時、

  眠りの子は“主としての姿”を得るだろう」


 森の中心は、

 緊張と期待が混ざり合う神聖な空間となった。


 人族と魔族――

 二つの影が並び立ち、

 眠りの主の誕生の瞬間を待ち続けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。