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君を知らないまま、恋をした  作者: 一ノ瀬麻紀


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34 僕なりの方法で

「こんにちは、シロさん。今日は何をされますか?」

「こんにちは、ルナさん。今日はアクセサリーを作りたくて来ました」

「いいですね。では、こちらの部屋にお越しください」


 今回も、初心者の部屋にラパンはついて来ない。ルナさんに案内されてユキと二人で中に入った。

 前回の回復薬の生成釜のある部屋とは、また別の部屋だった。


「こちらの部屋では、アクセサリーの作成を試せます。本格的なものを作るには専門の場所へ行くのですが、初期の簡単なものなら、ここで作れます」


 部屋の中には、回復薬を作った時と同じような釜が置いてある。

 やっぱり、この釜に入れて作るのかな? それなら、僕のミサンガに効果が付与されているのはおかしいよなぁ……。

 僕は疑問に思ったので、ルナさんに聞いてみることにした。


「これ、僕が作ったんですけど、少しだけ効果が付与されているようなんです」


 僕はさっきのミサンガを、ルナさんにも見せた。


「確かに、モンスター避けの効果が付与されていますね」

「でも特別なことはしていなくて、宿屋で編んでバッグにしまってあったんです」

「基本的には釜に入れて完成させるのですが、強い思いを込めることで、少しの効果でしたら付与することはできます。そういったアクセサリーは、作った人の思いが宿り、パワーアップしていきます」

「パワーアップ?」

「製作者のレベルや能力値などが上がると、それに伴ってアクセサリー自体の効果も高くなっていきます」

「そうなんだ……」


 僕は、ログアウトボタン消失事件で気持ちが沈んでいた時、落ち着こうとミサンガを編んだんだ。

 その時の一番の強い思いは、やっぱりラパンへの思いだったんだと思う。もう一度会いたい、そばにいたいと。


 ……でも、それが知らず知らずのうちに効果を持つアクセサリーになっていたなんて、思いもしなかったなぁ。


「そういったアクセサリーは、誰でも作れるわけではないんですよ。これは体験版なので、ステータスには反映されていませんが、固有スキルですね」

「スキル?」

「シロさんは、サポートが得意な方なんだと思いますよ。戦闘でも前衛向きではなかったですし」

「僕はサポート向き……」


 一人じゃ何もできないと思っていたけど、アクセサリーでみんなを守ることができるんだ。それだってすごいことじゃないか。


「ルナさん、アクセサリーについて、もっと教えてください! 僕、みんなを守りたいんです!」


 僕には僕の役割がある。ラパンやユキと同じことをしようとしなくてもいいんだ。

 ずっと、僕だけみんなと違う、みんなと同じことができないと思って生きてきた。それどころか、迷惑をかけてしまっていると思っていたんだ。


 現実世界では気づけなかった僕の存在意義を、ゲームを通して気づくことができた。

 (すばる)さんが、僕のためにVRゲームを作ってくれたからだ。ラパンがリベラリアの世界で、僕にいろいろと教えてくれたからだ。


 僕は体が弱いことを、どこかで言い訳にしていたのかもしれない。

 少し遅れてでも、後ろからゆっくりついて行っても良いんだ。休み休みだって良いんだ。


 僕は、自由に動けるリベラリアを体験しながらも、どこかにずっとモヤモヤしているものがあったけど、そのモヤモヤが晴れていくような気がした。



 初心者の部屋を出ると、目の前にポンッとユキが現れた。


「あれ? ユキ?」

「シロが、自分だけの力でチャレンジしてみたいと願ったから、僕はちょっとお休みしてたんだよ」

「あ、ごめん。気づかなくて……」


 僕は、いつも一緒にいるはずのユキが、そばにいないことに気づけなかった。相棒だって思ってるのに、なんで……。


「大丈夫だよ。シロが成長している証なんだから、喜ばなきゃ。僕はサポートキャラだし、シロにサポートの必要がない時だってあるんだよ」

「でも、ユキは僕の相棒で……」

「僕はバッグの中で寝てただけだよ。シロが来たばかりの時はずっとそうだったでしょ?」

「うん、そうだけど……」

「僕はゆっくりできてありがたいけどなぁー」


 ユキはわざとらしく大きく伸びをし、毛繕いを始めた。

 ユキはこうやって、たくさんのプレイヤーを見守って、見送ってきたのだろうか。


「そんなことより、アクセサリー制作はどうだったの?」

「うん、ルナさんに色々と教えてもらってきたよ」

「シロらしいスキルだよね」

「気づいてたの?」

「んー? 僕は、シロのことならなんでも知ってるよ? サポートキャラだからね」


 ユキはそう言って笑った。

 いつもの調子のはずなのに、なぜか僕は心がギュッと締め付けられた気がした。

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