35 おでかけ
「次にログインできるのは年明けかぁ……」
一二月末、高校は冬休みに入っていた。僕は無理しないという条件で、いつもより少し長くリベラリアを楽しんでいた。まぁ、いつでも無理はしちゃいけないと、強く言われているけど。
せっかくの冬休みだし、もっと長くリベラリアで遊びたいけど、昴さんの会社も冬季休みに入るから、年始に会社が始まるまでVRマシンは使えない。
「今月に入ってから、リベラリアをやっている時間も長かったし、一度離れてゆっくりするのも良いんじゃないか?」
同じタイミングでログアウトした昴さんが、マシンから出てきた僕に手を差し伸べて言った。
「うん、そうだよね……」
「それに俺は、デートしたり、もっと恋人らしい時間を過ごしたいけどな」
「そ、それは僕も同じ気持ちだけど……」
昴さんは、僕の手を取って自分の胸に引き寄せ、ギュッと抱きしめた。
だから僕も、昴さんの体に手を回して、抱きしめ返した。
ああ、やっぱり落ち着くなぁ……
「明日から冬季休暇だから、あまり遠出はできないけど、少し出かけないか?」
「うん、僕も出かけたいな」
「行きたいところある?」
「うーんと……」
まだ呼び方は「昴さん」のままだけど、だいぶ自然と話せるようになってきた。
ゲーム内のラパンと昴さんが同一人物だと分かったから、昴さんとも気負わず話せるようになってきたんだ。
「僕、動物園とか水族館……牧場も行きたいな」
「いいな、それ。全部行こうか」
「ほんと? やったー!」
恋人というのはまだ恥ずかしいけど、昴さんと出かけられるのは嬉しくて、まだ何も決まっていないのにもう楽しみで仕方がない。
「ちゃんとご両親に許可をもらわないとな」
「昴さんなら、大丈夫だよ。ずっと僕を支えてくれたのを、お父さんもお母さんも知ってるもん」
僕は小学生の時にお医者さんに激しい運動を禁止されてから、外出をしなくなってしまった。
けど高校生になった頃から、昴さんが付き添ってくれて少しずつ出かけるようになったんだ。
自然と気持ちも前向きになり、検査結果もだいぶ安定してきた。そのおかげで、今回のVRゲーム体験版のプレイも許可が下りた。
だから、僕は昴さんに全信頼を置いているし、うちの両親だって同じだと思う。
いつでも昴さんは、誠心誠意を込めて想いを伝えてくれるし、僕を全力で守ってきてくれた。
「そうだと良いな」
「大丈夫!」
昴さんは、何事にも真摯に取り組んできた人だから、信頼も厚い。僕の自慢の恋人は、かっこよくてとても頼りになるんだ。
◇
年末であちこち混んでいたけど、ゆったりスケジュールで僕たちは出かけた。
僕はまだ高校生だし、昴さんと恋人同士ということは内緒にしているけど、二人で『デート』を楽しんでいる。
周りから見たら、仲の良い近所のお兄さんと遊びに出かけている……そう映っているんだろうな。
「ここのお土産屋さん、グリーンヒルのお土産屋さんに似てるね」
「確かに、なんか見覚えのあるようなグッズが多いな」
「あ、ほらこれなんかユキに似てる! こっちはメプさんだ」
今日遊びに来ているのは、動物園と水族館が一緒になっているテーマパークだ。
園内は広いので、ゆっくりまわっていたら、もう閉園間際になってしまった。もっと色々見たかったけど、お土産を買って帰ることにした。
「やっぱり、ユーアさんとモモチはいないかぁ。残念」
動物園と水族館だから、さすがにカラスと桃のぬいぐるみは見当たらなかった。
「サービスエリアにキーホルダーとか売っているかもな。帰りに見てみようか」
「うん!」
年末でお休みの人が多く混雑していたから、今日一日、昴さんは僕の手をしっかりと握って離さなかった。
はぐれたら困るからと言っていたけど、昴さんが僕の手を取り恋人繋ぎをしてくれた時は、きゅんっとなった。
人がたくさんいるのにってドキドキしちゃったけど、誰も僕たちのことを気にしていないと分かったから、僕もギュッと握り返したんだ。
昴さんは、僕が今までできなかったことを、ひとつずつ叶えてくれる。
リベラリアの世界で元気に動き回ったり、ちょっと遠出して遊びに行ったり、生まれて初めて恋人ができたり……。
そして今日は、初めて家族以外の人とお泊まりをする。
僕はまだ高校生だし、昴さんはその辺はちゃんとわきまえていて、別々の部屋を予約したと言っていた。
……でも僕は、同じ部屋でも良かったのにって思ってしまった。
昴さんは僕の気持ちを察したのか、耳元で「卒業したらな」って言ったんだ。
僕は一気に顔が熱くなった。その時が来たら、僕はどうなっちゃうんだろう……。
僕は未知の世界へ想いを馳せ、今までにない感情が胸に湧き上がってくるのを感じていた。




