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第十二話

煌びやかなシャンデリアの下には、これまた美しく着飾った貴族たちが談笑している。私はその様子を扉の隙間から伺っていた。

「メイ...どうしよう。なんだがすごくお腹が痛い...」

「リラ様、それ、緊張っていうんですよ。落ち着いてください」

そう言うメイも、先程から足が忙しなく動いている。お互い緊張してるのね、と笑い合い、それから改めて自分の姿をみた。

(大丈夫かしら...。似合っている気が全くしないんだけど...)

何回見ても、自分の姿に慣れなかった。まぁ、13歳の頃に1回社交界デビューし、それ以降まったく夜会に出ていなかったのだから仕方ない。

扉を閉め、心を落ち着かせる。

「リラ様、そろそろ行きましょう」

そう言って隣に立つのは、正装のルークだった。

今回エスコート役は、最初レオお兄様の予定だったが、今回はレオお兄様の王位継承の発表もあり、変に勘ぐる貴族が出てくる可能性から、上位貴族の次男でもあるルークが選ばれた。

「よく平気でいられるわね...。」

「私はリラ様と違って、定期的に夜会にはでていましたからね。」

なんでもないように肩を竦め、ルークが腕を差し出した。私はその腕に掴まると、背筋を伸ばした。宰相の合図と共に、会場へ続く扉が開いた。





「まぁ、リラ様!社交界デビュー以来ですわね!私のこと、覚えていらっしゃいますか?」

「ご無沙汰しております。チェルシー伯爵夫人。もちろん、覚えていますわ」

(このやりとり、何回続くのかしら...)

入場してしばらくたった今、このやりとりがずっと続いている。13歳以来、夜会に参加していなかった私は、いろんな貴族の方からの挨拶されていた。もちろん、全員覚えているわけではない。

(でも、ルークから『笑顔で、愛想よく』って言われてるし。現に隣にいるしね)

チラリと隣を見ると、にこやかに笑って対応しているルークの姿があった。ルークは入場してからずっと隣で私を見張っている。

(いい加減疲れた...)

ちょうど、挨拶の列が途切れたところでルークの手を引っ張った。

「ねぇ、ちょっと休憩しない?」

私がお願いすると、そろそろルークも限界だと思っていたのかすんなりと頷いて、周りを見渡した。辺りには座るところがなく、中庭まで出なければならなかった。

私とルークは中庭に移動し、ちょうど死角になるベンチに座った。

「何が飲み物を持ってきます。リラ様はそこから動かないでくださいね。」

ルークはそう言って私に念を押すと、会場へ消えていった。

(そこまで念を押さなくても、別に移動したりしないわ)

改めて中庭を見渡すと、その広さに圧倒された。王宮に移り住んで、4日が経った。そこそこ王宮には慣れた気でいたが、まだまだ私の知らない所は多くあるらしい。

ぼーっと景色を眺めていると、すぐ近くから声がした。

慌てて横をみると、今回の夜会の夜会の参加者であろう男性が立っていた。

「突然声をかけてしまって申し訳ありません。あの、もしかして、今回王族に加わるリラ・クラーク嬢でいらっしゃいますか?」

「えぇ、そうですけど...。」

立ち上がり、淑女の礼をする。そして、いけないとは思いつつ、その男性を訝しむように見てしまった。

(このひと、誰なのかしら...?)

今日の朝、ルークから渡された資料には載っていなかったはずだ。となると、正式な夜会の参加者であるかどうかも怪しい。

(こんな時に限ってルークはいないのよね...)

いや、こんなときを狙って声を掛けてきたのかもしれない。そう思い直し、警戒心をもって男性をみると、その男性は慌てたように名乗った。

「名乗り忘れていましたね。申し訳ありません。私は、エヴァン・ブランシェットと申します。」

「ブランシェット...?」

確か、隣国の王族も同じ名前ではなかったか...?

わたしの中にその疑問が浮かび上がり、その疑問はすぐに確証へと変わった。

「もしかして、ケルピア帝国の第二王子の...?」

私が発した疑問はその男性の微笑みで肯定された。私は慌てて礼をし直した。

「すぐに気づかず、申し訳ありません。私は、今回王族に加わる、リラ・クラークと申します。」

エヴァン殿下は、クスクスと笑うと隣に座ってもいいかと尋ねてきた。私はすぐに了承し、ベンチに座った。

「いきなり話しかけてごめんね。君があまりに無防備だったから心配になったんだ。...僕のこと、覚えてない?」

(覚えてないって、どういうこと?)

私の記憶の限りでは、これまでエヴァン殿下と会ったことはないはずだ。

私が何も答えられずにいると、エヴァン殿下は肩を竦めた。

「まぁそうだよね。僕も君を見るまで思い出さなかったんだけど...君が社交界デビューしたあの夜会に、僕も出席してたんだ。」

「えっ」

初耳だった。自分の社交界デビューの時を完璧に覚えているわけではないが、当時と同じ参加者がいたなら、ルークが私に教えていてもおかしくない。それに...

(殿下と話したなら、絶対覚えてるはず...)

そう思い、殿下をみた。

ゆるくカールのかかった金色の髪は、月明かりを受けてきらきらと控えめに輝いている。大きな黄緑色の目には長い睫毛が影をつくっていて、隣で見ていてもとても幻想的だった。

「僕達、直接喋ったわけじゃなくて、僕が一方的に見てただけだから、君が覚えてないのも不思議じゃないんだけど。もしかしたら、僕のこと覚えてるかなって思って。」

「...申し訳ありません...」

(なんで覚えてないんだろう。同じ会場にいたらなら、視界には入ってるはずなのに...)

こんなに目を引く容姿なのに、まったく記憶にない自分が情けなかった。当時は一番食べるのが好きだった時だから、もしかしたら食べ物に夢中になっていたのかもしれない。


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