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ヘブンズゲート・クライシス  作者: 遠藤 薔薇
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「それはもう少し後にしよう。とりあえず彼の記憶が戻ったことはわかった」

俺は弾けたように顔を上げる。だがローレンスはその反応を待っていたかのようだった。

「あぁ、やはりな。まぁ指を折られても語ろうとしないということはそれだけ秘すべきものを抱えている証左だよ。君は実直だが単純だ」

淡々と俺を評しながら、ローレンスは杖で再び俺の肩を突いた。俺は歯噛みする。カマをかけられた。

「さて、記憶の内実を詳しく語ってもらいたいところだ。私にとって不都合な情報を、致命的な物証を君が握っている可能性がある。その可能性を放置しておくわけにはいかなくてね。あまり意固地にならずに話してくれると助かる。私は君に興味があってね。できる事なら五体満足で取っておきたい。君が良い素材とわかった暁にはぜひ我が家に迎えたい」

「何を言っているかわからない…!」

「知っているのだろう?ビュロウも私が何をしているかはおおよそ察知しているはずだ。無論物証は握らせていないがね」

フェリシティの言う事は本当だった。この男は本当にあんな残酷なことをやっている。

「君の母上は実に優れた科学者だった。私も陰ながら尊敬していてね。枯れることのない才覚、溢れんばかりの威光…本当に素晴らしい女性だ。できることならサンプルを取りたかったよ」

「お前が母さんを語るな…!」

「まぁ、子は親に似るものだ。君の中にも彼女の欠片はあるだろう。ぜひとも頂戴したい。それに私は君自身にも興味がある。あのイリスを…私の傑作をあぁもたぶらかしてくれるとは。一体どんな手を使ったのかね?」

「たぶらかすだと…!」

「あれがナイトクラウド家を捨てたのは君の影響があってこそだろう。何度か忘れさせようとしたがうまくいかなかった…。よほど君の影響が大きかったと見える。だが、これもまた好機だ。彼女の…我が母エレクトラのアウラに触れ得るのだからな。思えば彼女がどんな男を好むのかは知らなかった…。母の恋をも再現できれば、私はより彼女のアウラに近づける」

ローレンスが初めて微笑んだ。ゾッとした。エレクトラという人物に向けているローレンスの感情は並大抵のものではない。ただの微笑みにローレンスのエレクトラへの感情全てがこもっているような気がした。

「喜びたまえ。君は私の遠大な理想の礎となる。この世界で最も素晴らしく、偉大な女性を再誕させるのだ。私の悲願がようやく成就する」


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