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ヘブンズゲート・クライシス  作者: 遠藤 薔薇
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「何が理想だ…何が悲願だ…!自分の子どもを殺して、イリスを殺して、無関係の人間も大勢巻き込んで…!」

「言ったろう。イリスも他の人形もただの器に過ぎぬ。彼女のアウラを宿すためのな。使えぬから当然の処分だ。必然の結果だ。あのアパートを爆破したこともそうだ。機密は守らねばならぬ。君が生き残ってしまったのと、イリスを殺さなければならなくなったのは、少々痛手だったがね。だが全て解消された。君が私の手に落ちた以上、もはや憂いはない」

こんな奴が。こんな奴がイリスを、トムソン夫妻を、あのアパートに住んでいた人達を殺したのか。

最低だ。最悪だ。

「ただでさえ私の理想は時間と労力を使う。それも並大抵の量ではない。エレクトラの細胞さえ手に入ればよかったが、航空機の事故だ。死体は見つからなかった。クローニングが出来れば早かったのだがね。仕方ないから彼女の人間性や身体を再現できる遺伝子で構成することにした。これがなかなか難儀でね。

まず外見を完璧に模倣するのが難しい。初めの5体はそれで処分した。成長するにつれて彼女から離れていったからね。全く酷い仕上がりだったよ。

その後は内面の完成が手間だった。同じ環境、同じ教育を与えても彼女のような人間性にならない。中には知性すら劣っているのもいた。

だがイリスは別格だった。一卵性双生児で生まれたのは想定外だったが、外見も内面もオリジナルに一番近い存在だった。なのに…この私を裏切るとは…。この手で消さねばならなかった時の私の気持ちがわかるかね?」

妙に寂しげな口調で話しているが、違う。これはコレクションの一つがなくなった時と同じ反応だ。悲しんでいるのではない。もったいないと感じているだけだ。

「私は君に愛憎合わせた感情を向けている。君はエレクトラのアウラをより深く知り得る標ではあるが、同時に私の大切な人形を狂わせた要因でもある。私にイリスを殺させた以上、相応の報いは受けてほしいものだ。だが今は堪えよう。君の有用性をちゃんと見出さなければ、私の理想はまた遅滞してしまうことになる」

「俺をどうするつもりだ…?」

「ハーピアから聴かなかったかね?洗いざらい記憶を引き出してからは私に協力してもらうだけだ。様々な人体実験、遺伝子調査、能力査定を受けてもらう。

衣食住なら安心したまえ。私はそれなりに裕福でね。女も好きなだけで与えられる。だが君の底を知った際には死んでもらうがね。

あぁ、君の精子は商品になりそうだからそれだけはとっておこう。臓器や血も移植用に取っておくか。人間はその体の隅々まで商品になるからね」


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