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自己問答に陥っている俺の耳にノックの音が届く。俺が顔を上げると、フェリシティがドアを開けた。さすがにガウンを着替え、半そでのTシャツとスキニージーンズ姿だった。
「終わったかしら?成果を聴きたいのだけど」
俺は黙ってうなずいた。俺の様子から結果を察したのか、フェリシティはドアを閉め、そこにもたれた。
「何も思い出せなかったの?それとも思い出したくないものを思い出したの?」
フェリシティはポケットからタバコを出した。一本くわえて火を点ける。
「…両方とも半分正解です」
「思い出せていないけど思い出しかけてはいる、だけど思い出したくない事柄…って感じってところね」
「思い出したくない…っていうか…」
言葉少なになった俺をフェリシティは黙って見据えていた。見えない圧が俺にかかる。
わかっている。引くことはできない。止まることもできない。そんなことは、わかっているんだ。
「フェリシティさん…もう一度だけ、あのアパートに行ってもいいですか」
「今の状態で行ったら変化があるかもしれない…というのは確証が曖昧だわ。あなたを外に連れ出すリスクを踏まえてほしいわね」
フェリシティは冷淡に答え、タバコの灰を携帯灰皿に落とした。
「連中に止めを刺せるくらいの大きな情報が出てくるなら、やぶさかでもないけど」
「…保証はしません。でも、やっぱりあそこが…一番思い出せる気がするんです」
俺は額を拭った。汗をかいていた。
「こだわるのね。ジェイムズ・ソーヤ高校とか、あなたが他に行っていた場所はいくらでもあるでしょう。イリスと付き合っていたのなら、デートの1回や2回はあるはずよ。場所がニューヨークなら、回る場所なんて掃いて捨てるほどあるわ。それでもあのアパート?」
「…手紙を見つけた場所が…あそこだから…」
5人の友人の証言では俺はあのアパートで手紙を手に入れていた。イリスがあのアパートにいた以上、俺とイリスが一番接触を持っていたあの場所だけだ。
「多分、全ての答えは…あそこにあると思うから」
いや、むしろ…。
「わかったわ。でも行くなら深夜よ。人通りが少ない時に行く」
「わかりました…」
フェリシティは俺の心中を察したのか、あっさり了承して部屋を出た。




