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ヘブンズゲート・クライシス  作者: 遠藤 薔薇
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「ローレンスがエレクトラそっくりな子どもを連れているという話が出てきてね。それも1人や2人じゃない。下手すれば両手で数える以上にいるって。あなた、イリスとハーピアのミドルネームの意味わかる?」

「エルフと…ツヴェルフですか?」

「2つ共ドイツ語でね。エルフは『⒒』、ツヴェルフは『12』よ」

⒒番目の子どもと12番目の子ども。あの2人同じように作った子どもが10人以上いたのか。

「だけどローレンスは大勢いるはずの子どもを1人しか表に出さない。それも時々入れ替わっている。まるで取り換えているみたいにね」

「取り換えている…ということは…」

「ハーピアの言を借りたら処分されているってことでしょう。予想以上胸くそ悪い話だわ」

フェリシティが眉間に皺を寄せた。

今表に出ているハーピアは12番目なら、殺された子ども少なくとも10人以上いることになる。ゾッとした。

「ローレンスはエレクトラを再現した子どもを侍らせていたのよ。本気でエレクトラを創造しようとしていたのには驚きだけどね。ただその過程で不良品を処分していたんでしょう。手前の都合で生み出しておいて、思い通りにならなかったら処分。典型的な悪役がすることだわ」

怒りが蘇る。自分の母親を作りたいがために、生まれた子どもをエレクトラにするように育てた。でも思い通りにならなければ殺す。家族の、ましてや父親のやることではない。そんな理不尽にイリスが殺されたかと思うと憤りが止まらない。

「…そんなの、おかしい。狂っている」

憤った心のまま、俺は呟いた。

「イリスもハーピアも…それで苦しんでいたのか」

「異常な家庭環境と言わざるを得ないでしょうね。父親が自分の母親を再現するために娘を育てるなんて倒錯もいいところだわ」

赤ワインを空けたフェリシティが再びグラスに注ぎ始める。赤ワインが血の色に見えた。

「この殺人は他の権力者の利害が絡むものじゃない。あくまでローレンスが勝手にやっていることよ。だからこの殺人を立証してしまえば、私達は堂々とナイトクラウド家を調査できる。そして芋づる式で他の悪行も引きずり出せるってわけ」

ワインをすぐに飲み干した後、フェリシティは懐から加熱式たばこを出し、煙をくゆらせる。


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