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「これがナイトクラウド家の悪行の一部始終よ。ご感想は?」
「…FBIはもっと早く、ナイトクラウド家を止められないんですか?」
「殺人の立証が厳しいのよ。連中派手に暴れるわけにはなかなか証拠を残してくれない。あなたを吹っ飛ばそうとした時みたいに派手に動いた時も、警察や政治家に協力者がいるから証拠もさっさと隠滅してしまう。口惜しいけど、私達は後手に回っている」
フェリシティの語調に悔しさが滲んでいた。
俺の責任は重い。俺の記憶がナイトクラウド家に致命傷を与えられる。イリスやハーピアを巻き込んだ不条理の連鎖を断ち切れる。
「…絶対に止めなきゃ」
これもまた、イリスの意志を受け継ぐことになる。彼女ができなかったことを、俺がやらなければならない。
そうしないと、イリスがあまりに報われない。
「…あなたの正義感は見上げたものね。国籍変えてFBIに入らない?」
「やめてくださいよ」
「ごめんなさい。あんまりにも深く受け止めていたから」
フェリシティは優雅に紫煙を吐いた。
「でもことさらあなたを信用できるようになったわ。人間ってね、不条理を前にすると足が竦むの。ましてや当事者になってしまうと何もできなくなる。普段エラそうに正義を語っている人間ほど修羅場に入ると保身に走るわ。正義を貫くことは基本的に人間業じゃないのよ」
「そんな…。フェリシティさんほどじゃないですよ」
「私は正義に燃えるようなタイプじゃないわ。私の会社がたまたま悪人どもを駆逐して、火種に睨みを効かせるのが仕事というだけよ。私は給料をもらうためにやっているだけよ」
素っ気ない、クールな返答だった。あくまで仕事。善悪や個人の感情の良し悪しで測れない。大人のスタンスは今の俺にはわからない。感情で動く俺とは違う基準でフェリシティは動いているのだろう。
ウェイターがデザートを運んできた。イタリアンではドルチェというのか。小さなティラミスやソルベがあるアラカルトだ。食後のドリンクとして熱いエスプレッソも出される。俺とフェリシティはそれぞれアラカルトに手を付ける。
「ちなみに出発は明後日よ。チケットは明日にはポストに入れさせるわ」
「わかりました」
「荷造りは早めに。そうね…ひとまず滞在期間は1週間を見込んでみましょうか」
「1週間…」




