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ヘブンズゲート・クライシス  作者: 遠藤 薔薇
74/112

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ハーピアの話とも合致する。俺の中でも点が線になった。

「ただ、私達はミスを犯していた。余分な死体の調査に思いの外手間取った結果、私達はもう一つの重要な証拠を見逃していた。それがあなたの言っていた千切れた手紙と…あなた自身よ」

「でも手紙はハーピアが…」

「そう、手紙自体は見事にかすめられたわ。ただ私達の協力者は優秀なの。手紙の写真を撮ってくれていた。あの写真を見た時は衝撃だったわね。まさかイリスと個人的に接点を持っていた人物がいて、それが奇しくもあの爆発事故を生き残っていたなんてね。ただその頃にはあなたはもう日本に帰っていた。接触を試みようにもナイトクラウド家が目を光らせていたから接触は難しかった。連中見境ないからね。気に障ったら何をしでかすかわからないもの。それに国境を越えて調査するには色々通さなきゃいけない話もある。相手がナイトクラウド家だとなおさらね。おかげで完全に後手に回ったわ…不愉快なことに」

フェリシティの言葉尻に苛立ちが混じる。彼女が日本に来るまでにあった、煩雑な手続きを思い出したようだった。

「手紙の残りの破片も見つからない以上、私達は直接あなたと接触する必要があった。だけどナイトクラウド家は先手を打って動いていた以上、何もできない。その時にはすでにナイトクラウド家の人間が日本に行ったらしいという情報が入っていたしね。私達は最善の注意を払って日本に渡った。正直、空振りに終わる可能性はあった。あなたが変死体になって出てくるパターンの方が有り得たからね」

否定できない。その結末は俺にとってはかなりリアリティが伴う。本当に変死体になっていたことだってあったのだ。

「ただ、幸運なことあなたは生きていた。ナイトクラウド家が手を引いた後でもね。記憶が戻っていないのは残念だったけど、私達は貴重な生き証人をどうにか確保できましたとさ…めでたしめでたし」

フェリシティが話し終えたタイミングでウェイターが来て皿を下げていった。

しばらくしてウェイターがメインディッシュを持ってくる。次の料理は牛肉のステーキ。厳密にはタリアータというらしい。違いがよくわからない。

「続編がどうなるかはあなた次第ね。ニューヨークにまで行って、記憶が戻るかどうか、その記憶が有用かどうかで展開は大きく変わるわ。なかなかの運試しだけど」

「…そこは頑張ります」

「そういえば、あなたとイリスの6年前の出会いはどんなストーリーなのかしら?」

タリアータに舌鼓を打ちながらフェリシティが尋ねてきた。そういえば6年前の話はしていない。直接的に関与しているとは思わなかったし、当たり前だけど初恋の話を人にするのは気恥ずかしい。


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