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ヘブンズゲート・クライシス  作者: 遠藤 薔薇
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俺が記憶喪失なのを知っている?条件反射的に、俺は不信感を目線で送る。だけどフェリシティは人を食ったような笑みで返すだけで、煙草を吹かしながら片手で器用にハンドルを回している。

20分くらい移動した後、フェリシティは六本木にある高層ビルの駐車場にビートルを止めた。高校生が足を運ぶような場所じゃない。警戒心と一緒に不安も湧き上がる。

「ここまで来たら少しは覚悟を決めてほしいものだわ。当たり前のことを言うけど、殺るならとっくに殺っている」

フェリシティはスタスタと俺を先導する。付いていくしかないと背中で語りながら。頭の中でいざという時の逃走プランを描き、俺はフェリシティに随行した。

フェリシティは高層ビルの最上階にあるレストランに俺を連れて行った。これまた高校生には無縁の店だ。屋上で夜景を眺めながらフレンチをしゃれこむような場所。

細部まで行き届いた上品な趣に俺は思わず面食らう。フェリシティはそんな俺を横目で楽しみながら、慣れた様子でウェイターの案内を受けている。

ウェイターが俺達を通したのは奥まった場所に設置された個室だった。VIPルームみたいな部屋だ。

「経費で落ちるんだったら、とびっきりいいのを使わないとね。注文はこちらでしていいかしら?オーダーがあるなら好きに注文して構わないけど。ちなみにここは魚がおすすめよ。(ヴァン)ワイン(・ブラン)と合わせるのがオツだけど、あなたは飲めないわね」

そう言われても困る。ここで何が食べられるかなんて俺は知らない。黙ったままの俺の意を汲んだフェリシティは注文を訊きに来たウェイターにランチコースだけを頼むとさっさと下がらせた。

「こういう場所は初めて?なら堪能してほしいわ。狙われる心配も少ないしね」

「狙われる…?」

「狙撃を避けるのは当然よ。相手がナイトクラウドならアルカイダに狙われるくらいの心境でいても損はないわ」

この人はナイトクラウドを知っている。直感だけど、恐らく俺以上に詳しく。口ぶりからしてナイトクラウドとは敵対する立場だろう。

俺はわずかに警戒心を緩める。FBI捜査官だなんて肩書はまだ信じられないけど、少なくともナイトクラウド側ではない。フェリシティの言葉尻にはナイトクラウドに対する蔑みのようなニュアンスが聞き取れた。

「とりあえず、あなたがどこまでナイトクラウドについて、自分の置かれている状況についてどれくらい知っているか語ってもらいましょうか?料理が来る前に確かめておきたいわ」


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