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「あーそっかー。もうそんな時間か」
ゲームセンターから出た俺達は池袋駅まで歩いた。
その道中、俺達は他愛ない話をする。夏休みの予定、過ごし方、文化祭、受験。学生らしい話を交わす。
「じゃー俺帰るわー」
「ああ、またな」
別れ際。
一度背中を向けた槇原は急に振り返った。
「真田。上手くいくといいな」
「ありがとう」
「でも気を付けろよー」
槇原が見透かすように俺を見据えた。
「お前、手に負えないくらいの面倒事だってわかっていても首突っ込むだろ?自分の身が危ないって思ったら引いた方がいいぜー」
「わかっているよ」
「まぁ言ったところでムダなんだけどなー」
「なんだよ、それ」
「お前はお前だ。色々変わったりするかもしんねーけどな。でもどこまでお前でやれるかはちゃんと見ていないのダメだぞー。お前が負けちまったら元も子もねーかんな」
それだけ言って、槇原は背を向けた。
残響のような言葉だった。槇原の言葉の意味を模索するために、俺はしばらく立ち尽くしていた。
家に帰る前に、俺はスーパーに寄って買出しをした。約束通り夕食を作るための材料を用意するためだ。
買い物かごを持ってスーパーの中を巡りながら献立を考える。残念ながら俺の腕は平々凡々だ。実質的な一人暮らしをする上で最低限の料理をするくらいしかできない。米を炊いたり、肉を焼いたりするくらいはできるけど、複雑な調理工程は厳しい。
かといって一人暮らしの時のようにレトルトを使うわけにはいかない。すでにカットされている野菜の詰め合わせや調味済みの肉や海鮮もダメだ。刺身を買って盛り付けるなんてもってのほか。
うーん。
我ながら選択肢をどんどん狭めていることに頭を抱える。いっそのことリスクを恐れずに小難しい料理に挑戦しようか?でも失敗した時のフォローが難しい。




