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「重要じゃない?知ってからどうするかって。決まっていないの?」
「いや…」
思えば、具体的に何かをしようとは考えていなかった。きっと重大なことなのに。
「まぁ秘密があるからって首をツッコむ必要はないけどなー。知らぬが仏って奴。知らぬがほっとけでもいいけど」
真顔で言うダジャレは…と内心感じつつ、槇原の言葉を脳内で咀嚼する。
「もしその秘密を放ったらしにしたままでもうまくやっていけるなら、それでいいと思う。触らぬ神に祟りなしって奴だなー。でもその秘密に触れないとやっていけないなら、どうにかしなきゃいけないと思う」
2つの選択肢の内、答えは決まっている。槇原は俺の目を見てそれを汲んでくれた。
「じゃあ、その子の秘密を知った後、真田はどうなりたいの?いつもの関係性をキープしたいのか、秘密があったことに怒って全部ご破算にすんのか、それとももう一歩先に行きたいのか」
「もう一歩先?」
「その子の秘密を知った上で、これまでの関係性が変わるのも理解した上で、それでもその子を好きでいる…ずっとそばにいる…的な。カッコいい感じ。なんだろ、ワンランクアップみたいな。ポケモンでいうと…」
「あぁ、わかった、わかったよ槇原」
変な例えで余韻が台無しになろうとしていたのを止めて、俺は考え込んだ。
彼女とどうなりたいのか。
これまでの関係は1ヶ月間の消えた記憶の中を手探りするような状態だった。きっとこうだったはずだ、きっとこうあるべきなんだと。
でも今は変わりつつある。いや、そのままじゃいけなくなっている。
問題は俺がどうするかだ。
どうなりたいかを決めて、どれを取るかだ。
だったら、俺は…。
「別れる気は、ない。俺は続けたい。アイツがどんな人でも、俺は向き合っていきたい」
「じゃあそういうことなんじゃないー?」
思いの外あっさりとまとめられた。
槇原は運ばれたチョコバナナパフェにすっかり意識を向いている。スプーンでやたらゆっくりと一口一口を楽しんでいる。俺の話は甘味以下か。
「槇原…」
「真田は律儀だよなー。真面目っていうか、タフっていうか、無謀っていうか、バカっていうか」




