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彼女の露わになった肩や足が途端に色っぽく見えてきた。良くも悪くも見慣れてしまっていた俺には新鮮だった。白く、ツヤのある肌。
今更だけど、彼女はきれいだ。吸い込まれそうなくらいきれいだ。
俺はすっかり硬直して立ち尽くしていた。その間に思考は目まぐるしく回るけど、答えはでない。そもそもまともに思考が働いていない。ピンク色に染まりかけていることだけはわかる。
「和嵩」
彼女の一声で、俺は一層硬直した。全身がだ。決してある部分だけじゃない。
「私達はそういう関係でしょう?」
俺とイリスの関係なら。
記憶にないとはいえ、俺とイリスの関係ならそれは自然なことだ。年頃ならなおさら。
だけど、今は違う。
「ごめん」
俺はそれだけしか言えなかった。
「今の俺と君は違う」
彼女は眉をひそめた。何か言いたげだったが、あきらめたようにスマホに視線を戻した。
「そっか」
ただそれだけを言って。
気まずい沈黙が生まれる。とたんに公開が沸き上がる。
男としてよくない振る舞いだった。ここは素直に応じるべきだったのか?「据え膳食わぬは男の恥」って言うじゃないか。
いや、いけない。それは駄目だ。
ちゃんとケジメがついていないと、ダメだ。
とはいえ、素直に本意を語る空気ではない。
「やっぱり、飲み物買ってくる」
あからさまにごまかす意図が見え見えだったが、しかたない。俺は財布を握って足早に部屋を出て行った。
コンビニまでの道中を急ぎながら、俺は部屋に遺された彼女を想った。
どんな顔をしているのか。何を考えているのか。
逡巡していると、やっぱり申し訳ない気持ちが芽生えた。




