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ヘブンズゲート・クライシス  作者: 遠藤 薔薇
105/112

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「王子様の出番をふいにしたことは謝るわ」

フェリシティだ。防弾チョッキをつけており、手には銃を持っている。俺は大広間に続くエントランスにいた。出入口付近、ちょうど大広間から死角になる位置。

「フェリシティさん…?!生きていたんですか…?」

「死神に目をつけられていたの?それは初耳ね」

「どうしてここが…」

「ネタばらしは後でするわ。ひとまず病院に行って検査を。ケガしているし」

「ハーピア…ハーピアは?!」

ハーピアは俺の隣でうずくまっていた。苦し気に頭を押さえている。

「ハーピア…!」

「あなたを庇った時にスタングレネードの直撃を受けたみたい。目は大丈夫だけど、耳はやられているわ。しばらく休ませてあげて」

するとフェリシティが俺の頭を撫でた。

「よく頑張りました」

その一声で、途端に緊張の糸が切れた。俺は力が抜けていくのを感じた。もう大丈夫なんだ。俺達は生き残ったんだ。死の覚悟までした反動が来たのか、手足が上手く動かない。

「FBIだ!おもちゃを捨てろサッグ共!」

大広間では怒号が飛び交い、銃を投げ捨てる音が連続した。向こうも制圧されたらしい。大広間に武装した特殊部隊とスーツ姿の人達が大勢なだれ込んでくる。FBIの捜査官と特殊部隊だろうか。じゃあ窓の外の強烈な光源はヘリコプターだったのか。

「ひとまずここから出ましょうか」

フェリシティが同僚と思われるスーツ姿と男と一緒に俺とハーピアに毛布を被せて連れ出した。エレベーターに乗り込む時、大広間の光景が見えた。捜査官に無理矢理立たされているローレンスやゼメキスが目に映る。スタングレネード…閃光手榴弾をもろに受けたらしい。超然と俺達を追い詰めた2人とは思えないほど、あっけなく、弱々しい様だった。

「私は明日の朝に病院に行くから」

俺とハーピアを車に乗せたフェリシティはそう言って、車を発進させた。

まだ現実感がない。病院で目覚めたあの時みたいだ。後部座席でハーピアと並んで座っている自分が本当に存在しているのかまだ信じられていない。本当はまだローレンスの前にいるのではないか、それどころか俺達は既に殺されていて、死後の自分が見ている夢なのではないか。そんなオカルトめいた感覚すらある。

「和嵩…?!」


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