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「あぁそうだ。俺に言う資格はない。君の言う通り、俺がイリスに会ってしまったから、君の人生は狂ったんだろう。だったら償う。俺が償ってやる」
「ふざけるな!お前に何ができる!」
「俺を殺せ…!」
これは賭けだ。死の覚悟は出来ているけど死ぬつもりはない。だけど、ハーピアと向き合うには、あの時できなかったことをやりきるにはこれしかない。
ハーピアは唖然としていた。
「何を言っている…!」
「ハーピア。俺を殺して決着をつけられるなら、そうすればいい。正直死にたくない。生きて帰りたい。でも俺は君を助けなきゃここに来た意味がない。君を助けるためなら何だってする。だから、俺を殺して気が済むならそうしろ!」
「和嵩ぁぁっ!」
ハーピアが俺のこめかみに銃を押し付けた。すでに引き金に指がかかっている。
本当にギリギリだ。一歩の間違いで俺は死ぬ。だけど、ここまで追い詰められたからこそ、手が届くものがある。
「だけど、もし…。もし、俺を殺すことに少しでもためらいを感じてくれているのなら、本当の望みじゃないのなら…もう少しだけ、待ってくれ。俺が君を助ける。イリスができなかったことを、ちゃんと果たす」
俺はゆっくり体を倒し、ハーピアにもたれた。
「だから…もう自分を殺さないで」
俺のこめかみに突き付けていた銃をハーピアは静かに下ろした。
「どうせ、何も変わらない…」
「大事なのは、変えたいかどうかだよ」
「そんなの、思ってなんかいない…」
「だったら君がこんなに悲しんでいるのはおかしいだろ?」
「だって…変えたいなんて思っていたら…口にしたら…また誰かが死ぬ…。私じゃ何もできない…」
「そんなことはないよ。君は強い。俺なんかより、ずっと。それに…もう答えは出ているんだろ?」
ハーピアは何も返さず、ただ荒い息をしていた。
「だったらさ、俺が手を貸すよ。多分、そのために俺は君と出会ったんだ。君の背中を押して、君の想いを支えるために、イリスが俺と君を巡り合わせたんだ」
「あんな女…」
「イリスは君のことを想っていた。それは間違いない。間違いないんだ」




