#22 罠の先の罠
―地下4階 12/24 午前7時 残り28時間―
夕姫と地下5階から逃げてからどれ位経っただろうか。
僕達は今もなお、2人の無事を信じて歩き続けている。歩きっぱなしというわけでもなく、適度に休息をとったりはしているが。
地下4階は異様なほどにトラップが多く、進むのにかなり難儀している。
まあ、地下4階の小部屋で罠察知のツールを手に入れた為にトラップ自体はその通路を迂回すればいいだけだ。
しかし迂回した為に、無駄に時間が掛かっているのが今の現状だ。
「またトラップ?面倒ね、折角だし一度突っ込んでみる?」
「僕は遠慮しとくよ・・・。」
一つの通路に5、6個仕掛けてられており、通ればまず無事では済まないだろう
まあ、そんな冗談を言いたくなる気持ちも分からないでもないが。
「それにしても妙じゃない?普通罠が主体のフロアの序盤に罠を察知をツールなんて置くかしら?」
夕姫が首を傾げながら言う。
「確かにそうだね。僕達を消耗させたいならそんなものは置かないだろうし、これじゃただ迂回すればいいだけの話だ。」
狙いはわざと迂回させて時間を消耗させる?もしくは目的の場所に移動させる?
一体何を企んでいるのだろうか?
「とりあえず、今出来ることは歩みを止めずに少しでも早くこの先へ進むこと。
・・・何だか嫌な予感がするの」
「うん、僕も。油断しないでいこう。」
僕らは辺りを警戒しながら、1エリア毎進んで行く。
ようやくトラップ地帯を抜けたと思っていた矢先のことだった。
レーダーに何かが映る。音から察するに、ロボットのようだ。
「周辺を徘徊しているみたいだね。見つかる前に仕留めよう。夕姫、行くよ!」
「ええ!」
夕姫はうなづいて攻撃の準備をする。
僕は反対側に走ってロボットと挟み撃ちの状態にする。
なぜなら、この階のロボットは堅牢な盾を装備しているからだ。
幸い、一方向しか防御は出来ないようで、こうして挟み撃ちするのが定石の戦法になっている。
目的の場所についたとき、丁度相手の背後を取っていたので、すかさず数発発砲する。
弾は2発命中し、装甲にダメージを与えたが機能を停止させるまでにはいたらない。
ロボットはこちらに振り向き、盾をこちらに向ける。
・・・今だッ!
「夕姫!今だよ!」
そう言うと同時に急いで安全なところに身を隠す。
身を隠してからすぐに、ドォンという音と破裂音が聞こえて鉄塊と化したロボットがこちらに転がってくる。
「りゅうくん、怪我はない?」
心配そうな顔で夕姫が駆け寄ってくる。
手を握って少し上目遣いで見てくるので少し照れる。
「大丈夫だから。もう、大げさだなー。」
カチャ
「動かないで」
後ろから知らない人の声が聞こえる。
顔が見えないが、声から女性だと推測できた。
「貴方達のどちらかが"例の化物"かしら?」
「化物・・・?」
「そう、化物。そこらの能力者とは比べ物にならないほどのね。」
化物?今までに居たボスのことだろうか?
あいつは化物と呼んでふさわしい。
「お生憎様、私達は化物なんかじゃないわ。」
「いいえ、しらばっくれないで。貴方のどちらかが"化物"なのは確定しているのよ。
今すぐ答えないと、撃つ。」
まずい。このままだと撃たれる。
かといって真実を伝えても信じてはくれないだろう。
ここは時間稼ぎに話に乗ってみるとする。
夕姫の手をぎゅっと掴み、話し出す。
「じゃあ、どちらかがあなたが言う"化物"なら、どうするんですか?」
「私に協力してもらう。協力を拒めば、奴らに利用される前に死んでもらうことになる。」
奴らに利用される?色々と事情がありそうだ。
次は挑発して時間を稼ぐ。
「そこらの能力者とは比べ物にならないほどの化物なんでしょう?そんな銃で殺せると思ってるんですか?」
「化物とは言っても今はそこらの人間と根本的には変わらないわ。人間は頭を撃たれればしぬ。そういうことよ。」
つまり今は人間だが後々人間ではなくなると。
深夏を思い出す。あれと同じようなものだろうか。
「さて、どちらが"化物"なの?そろそろ聞かせてもらおうかしら?」
「化物は・・・
どちらでもないッ!」
刹那、バチバチと音を立てて何かが僕の後ろへ飛んでいく。




