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#12 合流

―地下8階階段前 12/12 午後11時 残り57時間―


今僕と夕姫は階段の近くの部屋で休息を摂っている。

まだ2人が着いていなかったので待っているのだ。

だが、この部屋には静寂に包まれている。

というのも、夕姫が僕が勝手に1人で飛び出して囮になったことにちょっと怒っているのだ。

その罰として僕は"黙って抱き枕になる刑"に服している。

とうの本人は抱きついたまま熟睡して、おかげで1人で起きている羽目になっているわけだが。


右腕に巻かれた包帯を見る。

血が滲んで見た目はとても痛々しいが、痛みに慣れてしまったのかそれほど痛み自体は感じない。

先程の戦闘を思い出してよく帰って来れたと我ながら感嘆するが、不可解な点がある。

何故僕はあのロボットの攻撃を躱すことが出来たのか。

僕の目にはロボットの動きがスローモーションに見えたのだ。

そう考えてみれば、シャッターのときもそうだ。急にシャッターが閉まるのが遅くなったりはしない。

・・・僕の能力は視力関係の能力なのだろうか?

でも、極限状態で目の前の出来事がスローで見えるというのは無いことも無いだろう。

また、ただの視力関係の能力なら能力検査に引っかからない理由が説明出来ない。

決め付けるのは早計だろうか。

他に何か考えられるものはないかと考えながら、夕姫が寝言を言いながら抱きついてくるのを意識しながら、時だけが刻々と過ぎていった。



時間は12時半。

突然、部屋のドアが空く。

影山さんと深夏だ。

しかし、影山さんのコートには血が付いており、深夏も暗い顔だ。


「影山さん!どうしたんですその血は!」


「あたしを庇って・・・。」


深夏が今にも涙が出そうな顔で答える。


「ん?ああこれか。少し腹に矢を喰らっちまってな。大したことはないよ。

それにそっちこそその腕の包帯はどうしたんだ?」


これまでの経緯を話す。

それを聞いて、少し頷いて影山さんは話し出す。


「そっちは人型ロボット、か。こっち側はトラップ地獄で少し時間が掛かってしまってな。

この腹に受けた矢もトラップのものだ。

まあ、皆無事で何よりだな。」


「そうですね。皆無事で良かった。」


分断されたときはどうなるかと思ったが、合流出来て本当に良かった。

しかし、下手をすれば誰かが死んでいた可能性も少なくない。

これから階を進むにつれて凶悪になるのだから、考えるだけで寒気がする。


「ところで夕姫は・・・ああ、お前に抱きついて寝てるのか。まあ、無理もないな。」


少し苦笑しながら影山さんは言う。

無理もないというのは今日1日歩いて疲れたからだろうか。


「ええ、かれこれ1時間半ぐらい離れなくて・・・。」


「どうやら、能力の使用には過度の疲労が伴うようだ。

彼女は今日でかなりの能力を使用しただろう?眠くならないわけがないさ。

朝までそのまま寝かせといてやれ。」


過度の疲労。

夕姫はそんな素振りを見せなかったが、かなり疲れていたのだろう。

そう考えると、"黙って抱き枕になる刑"も仕方ないかなと思ってくる。

でも、夕姫がそんなに疲れていたということに気づかなかった自分が情けなく思ってくる。


「じゃあ俺は見張りをしてくるよ。朝までゆっくり休んどいてくれ。」


「でもそれだったら影山さんだって・・・。」


能力の使用には過度な疲労が伴う。

深夏を守るために何度も使用したはずだ。


「俺はお前らとは鍛え方が違うからな。まあ、適度に休憩は摂るよ。」


影山さんは少し笑いながらそう言う。

絶対強がりだ。だったら過度の疲労なんて自分で試して言わない。

僕はポケットからメモリを取り出して影山さんに投げる。

マップ詳細化のプログラムが入っているものだ。


「ん?これは?」


「端末の追加プログラムが入ってるメモリです。あと一回使えるので使ってください。」


「おう、ありがとよ。」


影山さんは早速端末にメモリを挿してインストールを開始する。

インストールの最中に座っている深夏に近づき、声をかける。


「深夏、お前も朝まで寝てな。」


「ううん、あたしも手伝う。このままだったらただの足でまといだもん。」


深夏は首を振って拒否する。


「おっちゃんの厚意はありがたく受け取っとくもんだよ。いいから寝とけって。」


「嫌だ。何がなんでも付いていく。何なら途中で見張りも変わる。」


深夏の目はとても真剣だ。

その目に負けたのか、首をすくめてドアを開ける。


「やれやれ・・・。3時間ぐらい経ったら戻ってくるからその時に代わってくれ。それまでは休んでろ。」


「うん。」


影山さんは部屋から出ていき、深夏は椅子にもたれ掛かる。

2人はすっかり仲良くなったみたいだ。

2人の厚意に甘えて僕も寝るか。


「おーい、夕姫。隣の部屋にベッドがあるからそこで寝よう?」


「んー・・・」


僕は夕姫を持ち上げて隣の部屋のベッドに寝かせる。

しかし、僕から一向に離れようとしない。

やれやれ。仕方ない、"黙って抱き枕になる刑"だし一緒に寝よう。

ベッドに寝ると、夕姫が一層抱きついてきて完全にホールドされる。

柔らかい。夕姫の心音が聞こえてくる。

これはドキドキしすぎて寝られないパターンだ。

腕に抱きつかれるのは慣れたが、完全に抱きつかれるのは流石にキツイ。

ただでさえ好きな人なのに。

しかしこう見てると可愛すぎて頭を撫でたくなってくる。


「・・・おやすみ・・・」


「ん?」


空耳だろうか。おやすみと聞こえた気がした。


「ああ、おやすみ。」


しばらくは寝られないだろうなあ。

夕姫の頭を撫でながらそう思った。

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