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美人さんと私と番犬  作者: み〜さん
6/6

取り敢えず放置で。

クリスマスの話がバレンタインを越しました。


ーーーーーごめんなさい。


読んでくださって本当にありがとうございます。

 





「ごめんなさいメイちゃん。食事をご馳走するはずだったのに、私の我儘でこんなことになっちゃって。」


 高速道路に入って少しすると、巳月さんがガッツリ私に身体を向けて、神様に祈るように胸の前で手を組みウルウルと瞳を揺らす。


「えぁ、うのぉ、」


 これは何?すべて計算ずくのポーズですか?!言葉が喉で詰まって変な声出ちゃったよ!恐るべしっ!超美人!


「私とメイちゃんの初外出で遅くなるなんて印象が悪いことはしたくないから、これからちょっとお店に寄ってメイちゃんをお家に送って行くことにするからねっ。」


「ありがとうございます。そんなに気にしなくても大丈夫ですから。それに私の方こそ今日一日良くしてもらって本当にありがとうございました。」


 身体を少しずらしてシートに両手を着いて頭を下げる。


「とっても楽しかったです。」


「・・・・・・・おぅ。」


 自然と湧き上がった嬉しい気持ちのまま笑顔で巳月さんを見れば、口を塞いで顔を横に逸らされてしまった。


 それもちょっと変な声を漏らして。


 ………乙女としてはかなりショックな反応です。そんなに変な顔だったのかな、私。ゔゔっ。


 それからしばらくいじけモードで窓の外を見ていると、巳月さんが咳払いして私を呼んだ。


「その、私が武爺に言ったことなんだけどーーーメイちゃんの気持ちを一番にって思っているから、昨日も言ったけど、お友達から少しずつ私を知ってほしいの。」


 巳月さんを見ると目の下がちょっと赤く染まっていて、目もキラキラってなっている。ーーー?えっ?告白されてる?私?


「そっ、それでメイちゃんが私を………好き………だと思ってくれたらーーー」


 ほんとに告白なんですか?いや、ヤバイでしょう?!


「結婚を前提にお付き合いーーー」


「みみみみ!みつきさん?!何を言ってるのかわかってますかっ!お付き合いって!けっ!けっ!ケッコンって!」


「もちろんすぐにとはーーー」


「みみみ、つきさん!あのっ、巳月さんとはまだあって二日目ですが、女性としてとってもステキですし、憧れますし今日もとっても良くしてもらって、友達になって良かったって思いますが、いえ!今のご時世偏見なんてとんでもないと思ってますけど、ごめんなさい!私はやっぱりお付き合いするのも結婚するのも男性がいいんです!」


 シートに頭をつけて巳月さんに必死に謝ります!


 だって!出会いかたはともかく、たった2日だけど、巳月さんがとっても良い人で、ホント!私ってばなんてラッキーなんだろうって!


「メイ………ちゃん?あの、ごめんなさい。今、ちょっとよく飲み込めない言葉があったのだけどーーー」


「ーーーやっぱりな。そんなこったろうと思った。」


「「えっ?」」


 久兵衛の言葉に顔を上げれば、巳月さんと声がハモった。


「ホント、単細胞は読みやすい。」


 単細胞?それって私のこと?どーゆー意味ですかっ!


「嘘でしょ………真剣に間違えてる?」


「完璧だな。」


 泣きそうな顔を手で覆う巳月さん。


 えっ?えっ?私が巳月さんを泣かす?!ダメでしょ!あり得ないでしょ?ああああっ、でもお付き合いも結婚も無理だし。


「メイちゃん。」


 前屈みで背中を丸めていた私の二の腕を掴んだ巳月さんにそのまま抱きこまれた!


「メイちゃん、よぉ〜く聞いて!こんな外見でこんな話し方だけど、正真正銘私、“男”だから!」


「………………?」


 今なんと?


 不安定な姿勢のまま顔を上げて巳月さんの方を見れば、お顔真っ赤で眉間にしわ寄せて困惑の表情。


「メイちゃん私、お!と!こ!よ。」


 言葉を区切って強調するけど!


「ええっ?でもこんなに美人ーーー」


「ホラ!胸も無い!」


 そう言って私の手を胸に持っていって触らせる巳月さん。


「むっ、胸が無い女の人だっています!」


「いるけど、私は間違いなく男なの!」


「でも!でも!仕草も歩く姿も綺麗だし、ガサツなところがないし、お料理だって上手だし、お嫁さんにしたいナンバーワンだろうし!」


「仕草も歩き方もたたき込まれたの!お料理のできる男なんて星の数ほどいるわ!でもね、それでも私は男なの!」


「………不毛だな。」


「うるさい久兵衛!今口出さないでっ!」


 イラってきてるのがわかる口調と顔の巳月さん。


 でも!仕方ないよね、昨日初めて会ってから美人な女の人で私の頭の中に登録されちゃってて、今更男でしたなんて到底飲み込めないよ!これで男だなんてあり得ない!あり得ない!


「もうさぁ、単細胞に納得させるなら、手っ取り早く脱いじゃえば?巳月。」


 ぬうっっ、ぐぅぅぅーーー!!?


「バカいってんじゃぁないわよぉっ!!」



 久兵衛の爆弾発言で、車の中が一時シャレになんないほど異常な空気と十八禁なセリフの応酬で、許容範囲を超えた私が死にかけたことは言うまでもない。




 ーーーーその後、


 巳月さんのお店に寄ってから私を家に送っていただきました。


「こっちの袋は由利さんからいただいた物。それからこっちの袋は、今日食事の後に一緒に食べようと思って作っておいたタルト。クリスマスだから、お家の方と食べてちょうだい。」


 巳月さんに渡された大きな紙袋二個を両手に持つと、ズッシリとした重さが。


「メイちゃん、明日は何か予定ある?無いなら今日振り回しちゃったお詫びにお昼作るから、お店まで来ない?」


「ーーー予定は無いですけど、ええっと、連日ご馳走してもらうのはちょっと気が引けると言うかぁ、そのぉ………」


「夕食も作ってあげられなかったから、そのお詫びも兼ねてのお誘いなんだけど、メイちゃんに予定があるならーーー」


「いえっ!ぜんぜん無いデス!」


「じゃっ、来てくれる?」


「ーーーゔゔゔっ………あい。」



 結局明日も会う約束をして巳月さんは軽やかに?帰って行った。




 由利さんからいただいた物を開けると、お節料理ですか?!と思わず叫んでしまったぐらい豪華なお料理の詰め合わせだった。


 家族と有り難くいただきました。


 巳月さんのケーキはベリータルトだった。


 私の大好きなベリー盛り沢山のタルトに歓喜の雄叫びを上げてお母さんに怒られました。


 甘酸っぱいベリーとしっとりとしたタルトに感動しつつ、今日一日のことを思い返してみた。



「明日行ったら、きっと今日の続きだよねぇ。」



 車の中で発覚?した巳月さんの性別。


 いまだに半信半疑な私だけど、必死な表情で私に訴える巳月さんに、頭の中と気持ちの違いのせめぎ合いで結局うやむやになったままでーーーどうしたらいいのか。


 私の中で巳月さんは超絶美人認定されてるから、これを超絶美男子?にはおいそれとは変換できないわけで。


「私としてはーーーー巳月さんにはお姉さんになって欲しかったんだけどなぁ。お兄ちゃんはタカちゃんがいるから。」


『ゆっくり、ゆっくりでいいの。すぐとは言わないから、メイちゃんに男として意識してもらえるように私も頑張るから、ね。』



 御行儀悪くフォークを口に入れたまま、ゔ〜んと腕を組んで首を傾げる。


 どうしてそこまで私を?


 小学生のときに傘を貸しただけなのに、何がきっかけになってるのかなぁ?


 と、テーブルに置いていたスマホが震える音が。


 フォークを置いてスマホを取って見てみれば、


「ーーー巳月さん。」


 読むと、今日楽しかったこととごめんなさいの言葉、明日の約束と画像が三枚。


 一枚は【チューチュー王国】のゲート前。


 緊張した顔の私の隣に顔を寄せて綺麗に微笑む巳月さん。


 二枚目はアトラクション前。


 チュロス片手におどけた私の後ろのベンチで顔色悪くグッタリとしている久兵衛の姿。


 そして三枚目。


 お揃いのウサギ耳のカチューシャをつけて、手を繋いで歩く私と巳月さんの後ろ姿。


 私も巳月さんも横顔が笑顔で、どうしてだろう………すっごく自然で、とっても良く撮れていて、


「ーーー久兵衛、いい仕事してる。」


 惹きつけられてず〜〜っと見てられる。


「そうだよねぇ、巳月さんイイよねぇ。」


 綺麗な横顔がとっても楽しそう。


「………やっぱり無理だよ。」


 言いながら溜息が出ちゃう。


 だってね、見れば見るほど姉と妹の楽しそうな姿でしかなくって、どう転んでも恋人同士には見えない。


「なんでかなぁ、なんでだろう。やっぱり、サッパリわかんない。」


 ポチポチとお礼の返事と明日十二時までには行くことを入力して返信。


 スマホをテーブルの上に置けば、また溜息が出ちゃう。


 お皿に残ったタルトを何気なく見ていれば、頭の中に浮かぶ巳月さんの表情。


 巳月さんの優しい笑顔。( 久兵衛の怖い顔。)


 巳月さんの照れた顔。( 久兵衛の悲壮な顔。)


 巳月さんの笑ってるのに怖い顔。( 久兵衛の白目をむいた顔。)


 巳月さんのイライラした顔。巳月さんの萌え顔。巳月さんの困った顔。巳月さんの乙女な顔。


 巳月さんを思い浮かべただけでなんだかホンワリした優しい気持ちになる。


 あんなに変な出会い方だったのにすでに懐柔されてる私って………………って、えっ?


 ちょっと待って、待って!待って!!


「おかしいよね?だって、小学生のときに傘を貸した男の子が巳月さんなら、初めからわかっていて私に抱きついてきたってことになるよね??」


 ってことは知ってて初めての()()をしていたってこと?


「信じらんない!今そこに気付く私ってどぉーよっ!」


 ゔゔゔっ、コレはきっとまた久兵衛に嫌味を言われるパターンだ。


 はぁ〜って大きく息を吐いて残りのタルトにフォークを刺す。


 明日、行くの面倒になってきたけど、約束の念押しされちゃったしなぁ。


 タルトを食べれば、口の中でイチゴやブルーベリー、ラズベリーやブラックベリーの爽やかな酸味やさっぱりとした甘さが広がって、思わず口元がニンマリとしてしまう。


 巳月さんが作った美味しいベリータルトが私を幸せにしてくれる。


「もうさぁ、見た途端どれだけ贅沢なタルトなんだろうって思っちゃったのね、私。だってこれはプロだよ。めっちゃ美味しいもん。こんなに美味しくて綺麗で豪華なタルトを作っちゃう巳月さんとお友達以上だなんて、恐れ多いでしょう!」


 もう!ホント!昨日から濃すぎるんだよ!


「よし!考えてもわからないんだからしばらく放置!で、」


 お皿を片付けてお風呂へ直行!


 うだうだしてても仕方がないもんね。だって、性別抜きで巳月さんのこと好きだもん。


 ただそれが異性の好きにスイッチできるかってとこで気持ちが定まらないんだから今は無理。


 この先どうなるかなんてわからないし。


「優希君にだっていきなりフラれたんだから、巳月さんとだってどうなるかわかんないよねぇ………」


 そう、一寸先は闇。禍福は糾える縄の如し。


 慌てて返事をしなくてもいいって巳月さんも言ってくれてるから。


「明日は明日の風が吹くってね。」


 お気に入りの入浴剤でゆっくり湯槽に浸かって、楽しかった【チューチュー王国】でのことを思い返して今日は寝よう。




 明日のために気力と耐力を回復させなければ。





はい、これにて一応完結とさせていただきます。


ここまで読んでいただいてありがとうございました。


じつは巳月さん、他の所でもチラッと出ています。


またこの続きを書ければと思っております。


ありがとうございました。

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