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女の子でも主人公に転生したので勇者王を目指す!  作者: 三月べに


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5/5

05 兄妹でいいだろ!




 私が、主人公に転生した理由が、少し分かった気がする。

 正直、主人公に憧れていたのだ。

 自由に、勇敢に、冒険している主人公ルメロ。

 言動も笑顔も眩しすぎる彼と比べ、私はベッドの上でマンガを読み漁るだけ。羨ましかった。

 どうせなら、主人公ルメロに手を差し伸べられて、仲間になって、彼とともに冒険を楽しむ人生を味わいたかったけれど。

 もしかしたら、主人公ルメロが「お前の番だ」って背中を押して、私をこのポジションに転生させてくれたのかもしれない。

 私が、主人公ルメロの言葉を、心を持って、行動しろと。

 自由に、勇敢に、冒険しろと。

 私に手を差し伸べ、そして背中を押してくれたのかも。

 なんて、ね。




 目が覚めれば、村の医者の家にいた。

 薬草をすり潰した匂いが、臭い。それで医者の家だと判断した。怪我をする度に来たけれど、どうにも好きになれない家だ。

 蹴られた腹や、掴まれていた首元が痛かった。

 これくらいの痛み、どうってことないと言い聞かせて、起き上がる。


「あっ、ルメリ!!」

「ルメリ!! 大丈夫か!?」


 寝かせられていたベッドには、ティアスとアルマが乗っていた。


「ティアスもアルマも、大丈夫っ? モーアさんは!?」

「オレは別に……」

「気を失ったのは、ルメリだろ! モーアさんは……親父達を引き渡しに行った」


 そっぽを向くティアスに続いて、アルマは俯く。

 実の父親が、牢屋に入れられるのだ。

 何も思わない無情な子どもではない。


「っ、それより! ルメリ!! 無茶しやがって!!」

「うわっ!」

「ルメリが殺されるかと思った!」


 がばっと抱き付いてきたアルマは、ひしっと締め付けてくる。

 怖かったのだろう。自分のせいで、殺されてしまうと。

 友だちを失ってしまうと。


「私は殺されないよ。だって、勇者王になるんだ!」


 ポンポンとアルマの頭を撫でてやって、笑い退ける。


「お前なぁ〜っ!」


 私に心底呆れた様子のティアスは、アルマを引き離す。

 アルマはしょうがなさそうに笑いを溢していた。

 笑えるなら大丈夫だろう。さっきと違って、無理矢理笑っていない。勝手にそう判断して、私もにししっと歯を剥き出しにして笑った。つられたように、ティアスも笑い出す。


「おい。元気にしてもらったなら、出ていくぞ。お前ら」


 一頻り笑うと、モーアさんの声が聞こえてきた。

 見れば、もじゃもじゃ髪の無精髭のモーアさん。

 手当てをしてくれた先生にお礼を伝えると、気怠げに撤収するぞと声をかけてくる。


「あ、あのっ! モーアさん!!」

「ん? なんだ」


 アルマはベッドから降りると、モーアさんのところまで駆け寄った。


「オレを預かるって話……」

「あー、どうせ、一人いるんだ。一人も二人も変わらねぇ」


 そう言えば、マンガでは主人公が気絶したあと、モーアさんはアルマの父親に向かって「オレが保護者になる」と告げたのだっけ。

 そっぽを向いたモーアさんを見上げた私は、さっきのティアスの仕草と同じだと気付く。間違いなく、モーアさんはティアスの育ての親なんだな、と思った。にんまりしてしまう。


「ありがとうございますっ!!!」


 アルマは、バッと深く頭を下げた。

 私もティアスも、顔を合わせて、にっと笑みを溢す。


「ほら、行くぞ。だいぶ時間が過ぎた。修行をするぞ」

「「「えっ!? 修行すんの!?」」」


 あんな事態が起きたのに、平常通りに修行をすることを言われて、三人揃ってギョッとしてしまう。


「嫌なのか? そんなんで勇者王になれると思うのか?」

「修行する!!!」


 呆れたような眼差しのモーアさんに、私は慌てて声を張り上げた。


「ルメリは今日休めよ」

「そうだぞ」

「修行するぅうう!!」


 アルマとティアスに言われるけれど、私は譲らない。

 モーアさんについて行って、家を出た。


「お前……無茶したな」

「え?」

「無茶しやがって」

「うわわわっ!」


 モーアさんの手が、ゴシゴシともみくちゃにしてきたから、頭を揺さぶられる。痛い。怒っている。


「でも、まぁ、水鉄砲が成功したな。ルメリ」


 しゃがんだモーアさんは、ポンと手を置いてきた。


「よくやった」


 モーアさんがそう褒める。いつものような仏頂面だけれど、どこか優しい目をしているように思う。師匠として、褒めてくれる。

 毎日、せっせと練習していた水鉄砲が、やっと成功した。


「うんっ!!」


 私は、元気よく頷く。正直、照れた。


「もう一回見せろよ、ルメリ」


 ひょこっと顔を出すティアス。


「うん!」

「よし、競走だ!」


 アルマが言い出したから、三人同時に飛び出す。

 サクサクと山を登り、モーアさんの家の前に行く。

 一番に到着したのは、モーアさんだった。意外と大人気ない。

 アルマとティアスが同着。そして、ビリは私である。

 めちゃくちゃ悔しがっていれば、さっさと水鉄砲を見せろと急かされた。


「ほら、水鉄砲で消してみろ」

「ババンとやって見せてくれ」


 ボッと火を灯すティアスとアルマ。いつものように。

 私はまた手で銃の形を取り、構えた。


「水鉄砲!!!」


 二発、ぴゅーっと水が出る。いつものように。

 地面にぴちゃっと落ちた。当然、火は消せていない。


「……あれ?」

「ルメリ、何してんだ」

「おい、さっきのだぞ」

「えいっ! 水鉄砲!」


 もう一度、ぴゅーっと放つ。

 全然、成功の水鉄砲にはならない。


「なんだ、ルメリ……? まさか、まぐれか?」

「……むぅ」


 そうだった。まだまだ、完璧には出来ない。

 技が、完成はしていないのだ。

 私は、まだまだ未熟。


「これからも頑張る!!」

「そうだな。よし、山頂に行って紅葉取ってこい」

「はい!!」


 ダッと飛び出して、私は山頂に向かう。

 けれども、何故かアルマとティアスが先を走っていた。

 出遅れたようだ。負けてたまるか。

 そう頑張って登ったが、結局、紅葉一面の山頂に着いたのは、またもやビリだ。


「なぁ、ルメリ」


 紅葉を一つ拾って、次こそは一番先に戻ろうとしたが、ティアスに呼び止められた。

 そうだ。この紅葉の山頂で、兄弟の絆を強く結ぶシーンが描かれたのだった。

 この場合、兄妹の絆だろう。

 ティアスから、正式に兄妹になろうと言う提案をするのだ。

 同じ師匠を持つ私達の三人で。

 キラキラと目を輝かせて待った。


「オレが勇者王になって、ルメリを勇者王の女にしてやる!」

「え。無理」


 義兄妹宣言ではなく、変なプロポーズをされて、私は反射的にきっぱりと断る。


「なんでだよ!? なんでアルマは断らなくて、オレのは即答なんだよ!?」

「勇者王になるのは私だから!!」


 そこは譲れない。


「オレだから、お前はオレの嫁になれよ!!」

「ふざけんなティアス! 先に言ったのはオレだぞ!?」

「順番の問題じゃないんだけど!」


 ティアスとアルマが喧嘩し出した。

 言っておくけれど、聞いていない二人はボコボコと殴り合いを始める。


「それよりも!!! 義兄妹になろうよ!!! 同じ師匠の弟子なんだから!!!」


 じれったくって私から言い出す。


「「兄ちゃんなんて呼ぶなよ! オレの女にしたいんだ!!」」


 そこだけは、揃った二人に、私も負けずに声を上げる。


「兄ちゃんとは呼ばないけど、兄貴分として慕う!!! もう決めた!!」

「バカヤロー!! 決めてんじゃねぇ!!」

「そうだ!!」

「競走だ! よいドン!!」

「「待てコラ!!」」


 私が先に飛び出したのに、兄貴分の意地なのか、先に到着したのはまたもや二人だった。


「あ、そうだ。皆、夕ご飯は家で食べて! 今日、お祖父ちゃんが大物仕留めるって張り切ってたから!」

「なんでだ?」

「私の誕生日だから!」


 モーアさんは私の返答を聞くと、目を見開く。

 固まっている。


「えっ……ルメリ、なんて」

「大物仕留めるって」

「いやそのあと」

「私の誕生日だから?」


 ティアスとアルマに、もう一度言うように言われた。

 首を傾げていれば、目を見開いて、二人も固まったのだ。


「「「なんでそれを早く言わない!!」」」


 動いたかと思えば、怒鳴られた。


「え? なんで?」

「ふざけんなよ! お前! モーア! オレも狩りに行く!!」

「待て! オレが狩りに行く!!」

「いや、お祖父ちゃんや村の人達がごちそうしてくれるから、それを食べてくれればいいよ」

「「ふざけんな!!! ルメリの誕生祝いをタダ飯で済ませるかよ!!!」」


 なんでタダ飯なのに、怒るの。

 意味わかんないと首を傾げていれば、呆れたようにモーアさんがため息を吐いた。


「誕生日だと知ってたなら、何か祝いの品を用意してたんだが……他にないから、狩りの獲物を用意する」

「いや、お祖父ちゃんが用意するから」

「余れば、村に配ればいいだろ。お前の誕生日だ、祝わせろ」


 モーアさんの手が、私の頭にまた置かれる。

 今度は、ごしっと強めに撫でられた。


「ティアス、アルマ、大物を仕留めるぞ」

「おう!」

「はい!」

「お前、先に帰ってろ」


 修行はお預け。私の誕生日祝いのために三人は狩りに行った。

 私はむくれつつ、大人しく帰る。

 家には、お祖父ちゃんが戻っていた。私が無事だと知ると、よかったと一言笑う。そして、今日の獲物を見せてくれた。私の好物である大鶏を見付けたと自慢する。鶏の三倍は、大きい動物。丸焼きにしてくれるという。

 お肉にはしゃぎつつ、招待するように言ったモーアさん達も狩りに行ったことを話す。私の誕生日祝いをしたい、と。

 お祖父ちゃんは「よかったな」と、ぽんぽんと頭を撫でた。


「今日は盛大な誕生日になるな」

「うんっ!」


 一時間ほどしたら、仕留めた獲物を持ってモーアさん達が訪ねてくれて、それを焼き上げてくれる。ティアスとアルマの魔法で、だ。

 仕留めたのは、大牛。なかなか歯応えのあるいい肉なので、これも好物。

 焼ける香りが、いい。もうお腹、ペコペコだ。

 他にも、村の人々が料理を運んできてくれた。

 ついでのように、朝の騒動を解決したお礼を、モーアさんに言う。

 搾りたてのジュースをコップに入れてもらい、ティアスとアルマと乾杯をした。


「「おめでとう!!! ルメリ!」」

「ありがとうーっ!!!」


 ルメリ、六歳。

 勇者として旅立つまで、あと十年。







一先ず、完結。

こんな感じでちょくちょく更新していきたいと思います(希望)

幼少期のルメリや兄貴分達の成長を書いていきたいですね。

短編に出てきた仲間との出会いも。


また書き溜めてから更新します!


ここまで読んでくださり、ありがとうございました!



20200103

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