しにもどりしんでんのしすたーさんにあう(死に戻り、神殿のシスターさんに出会う。)
「プロミネンスって、そういう事かぁ」
店名の由来を察した俺の口から思わず独り言が溢れる。あのジジイ、俺がプレイヤーで無かったら殺人罪なんじゃないのか?
はぁ、何だか体から香ばしい美味しそうな匂いが漂っているのは気の所為だと思いたい。
現実逃避している間にデスペナルティの情報がログに流れてきていたらしい。
何々、所持金の半分はあのジジイに取られ、後は本来なら1時間のステータス半減が『雛鳥の装い』、もうひよこ装備でいいか、そのおかげで半分で済むらしい。
残りが10分くらいなので結構長く現実逃避していたようだ。
「どうかなさいましたか?」
今後の事をあーでもないこーでもないと考えていたら後ろから声を掛けられた。
振り向くと青のシスター服を纏った翡翠の様な艶やかな長い髪、そして何より目を引くのは撓わに実った果実。その果実が服を窮屈そうに押し上げている。
何あれ?中にメロンでも入ってんかよ!って、凝視してんなよ俺の目!不味い、確か此処はこの世界の三大宗教の一つ、ユーミル教の神殿だったか?下手な事をすると神殿騎士がすっ飛んでくるらしい。それに美人ってヤツは苦手だ。
懸命に視線を上に上げると優しげな整った顔がある。困って視線を右往左往させる間に方針は決まった。逃走の一択だ。
何でって、この世界の三大宗教、ファミリア教、ユーミル教、蓮華教と言うらしいのだが、それぞれの教会騎士、神殿騎士、僧兵と言う荒事に対応する組織があるのだがメッチャヤバいらしい。
何でもレベルが100を越えたトップクラスのプレイヤーが即殺されたらしい。特に危険なのがファミリア教でたった一人の騎士にクランを全滅させられたとか色々と噂がある。まあ、ファミリア教は教義がガチガチではないので一番取っ付き易いらしいが。
一応、三大宗教は異端というのは身内から出た異形堕ち等の事を言うらしいので他教徒が訪れても騒ぎにはならないらしい。何でも世界の危機には手を取り合って撃退したとかいう設定があるそうだ。ただし、その他の宗教はその限りでは無いらしい。
それで本題のユーミル教なんだがこっちは結構ガチガチで色々と戒律が厳しいらしいから、うん、ヤバい匂いがプンプンするぜ!はっはっは、まあ俺からは焼き鳥の匂いがするけどな。等とくだらない事が浮かぶくらいにはテンパっているらしい。
ジリジリと後退り、逃走の機会を伺っているが奥の神官や出入口の騎士の視線がヤバい。さっさとシスターさんの質問に答えろや!と眼が言っている。
「さ、さよなら!」
シスターに背を向け出入口に向かうが騎士達が槍を交差させて道を塞ぐ。
「渡り人様、何やらお困りとお見受け致します。宜しければシスターケイティに話してみませんか?」
後ろから声を掛けてくる神官の眼は、おぅ、うちのシスターに徳を積ませろや。逃げてんじゃねぇーぞ、ぐぉらー!と言っている。
お困り?あぁ、困ってるよ!さっさと行かせてくれないかな?と視線に込めて神官に訴えるが睨まれた。
「アッハイ、ジャー キイテ モラオウカナ?」
神官が怖すぎて思わず片言になってしまったよ。




