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『女って怖い』

 間が空いてしまい申し訳ありませんでした。

 パソコンの修理が終わったので今頑張って書いてますが、時間が経ち過ぎていろいろ忘れてしまっています。

 速度を優先して仕上げているので前話から見て文体が崩れていたり口調が安定していないと思ったら一声下さい。

 書いてる時は自分では中々わからないのでよろしくお願いします。

 「あ、先輩……おはようございます」

 部屋の鍵をかけ、一階に降りようとしたところ、三階に繋がる階段から制服を着た少女が降りてきた。

 ぱたぱた、と小走りで駆けてきて僕の前で大きく頭を下げる。

 ぴょん、と跳ねる三つ編みを目で追いながら僕も挨拶を返す。

 「おはよう、白尼(しらに)

 僕の声に頭を上げた少女――白尼淡(しらにあわ)はこちらと目を合わせると控え目な笑みを浮かべた。


 『白尼淡が話しかけてきた。【親密度72】』


 ちらりとウインドウを見た後、思うところがあった僕はじっと白尼を見つめた。

 小柄な体にフチなし眼鏡をつけた小顔を乗せている。

 肌がきめ細かくとても白い。頬にかかる濡れ羽色の髪とのコントラストが思わず僕の目を引いてしまう。

 ボリュームのある黒髪をゆるく三つ編みにして背中まで伸ばしており、色艶(いろつや)と合わせてとても大事にしていることがうかがえる。

 惜しむらくは童顔よりであることか。色気よりも未だ幼さが見え隠れして、立ち振る舞いと合わせて控え目な地味系美少女といった感じだ。

 うちの制服の明るいエンジ色のブレザーとスカートを身にまとえばいっそう華も増し、学校でもひそかに人気があるタイプではないだろうか。


 「せ、せんぱい?」

 「あ、ごめん。何でもない」


 見つめられ過ぎて挙動不審になってきた白尼から視線を切ると、言い訳にもなっていない適当な言葉で場を流し歩みを促す。

 基本礼儀正しいこの少女は先輩に追及の手を伸ばすことなどできず言われるがまま歩き始める。


 「なるほど。……こんなものまで見えるのか」


 ウインドウの可能性について考察しながら横に並ぶと、漏れた声に疑問符を浮かべた白尼が見上げてきた。

 当然話せる事情でもないので頭をぽんぽん叩いて気を逸らして適当な話題を振る。

 同じ屋根の下に住んでる者同士交流もあるため今更話のネタに困ることもない。


「そういえばこの間蛸引買ったんだけどね」

「蛸引……って。……また包丁ですか!」

 刺身包丁はもう持ってるでしょう!と呆れて見せながらもこちらの意図を読んで話題転換に付き合ってくれる気の利いた後輩。とてもできたお気遣いさんである。

 

 ちなみに蛸引とは関東型の刺身包丁のこと。柳刃包丁が関西型なのだ。

 料理を趣味としている以上一度自分で使い勝手を確認しないと気が済まなかったのである。

 そしてすぐに包丁の種類に理解が及ぶ白尼もまた、料理に並々ならぬ情熱を注いでいる同志なのだ。

 互いに出来の良い料理をおすそ分けしあううちに切磋琢磨しあう好敵手になり、今ではこと料理に関しては先輩後輩の関係を超越し普段はこちらを立てる白尼の隠された一面が垣間見える時がある。


 「白尼だってこの間ので鍋何個目だ?」

 「う……用途に合わせた大きさや素材、加工で料理の完成度が変わるんです」

 火の通りが……とか鉄とアルミの違いが……とか本当に細かな違いにこだわって熱心に語ってくる。


 もっと突っ込んでみてもいいのだが自分に返ってきても困るのでころころ話題を変えてみる。

 料理から天気、天気から授業、授業から駅前に出来たという塾や甘味処について。

 学校までの15分の道のりを学生らしく特に中身のない会話を楽しんでみた。


 






 玄関でお辞儀する白尼に手を上げ別れ、下駄箱で上靴に履き替え教室へ。

 席は一番後ろの列で窓から2番目。

 軽く見回せば半数ほどが登校済みといったところか。


 鞄を置き適当な男子グループに混じる。それぞれの挨拶に一声返し、雑談に混じる振りをしながらウインドウを確認。


 『高梨晃【親密度51】

  曾根崎義輝【親密度48】

  上杉雅史【親密度60】

       ・

       ・

       ・       』


 そこそこの付き合いのクラスメート(友達)で大体50代らしい。

 これで白尼一人では分からない基準も大体見えてきた。

 仲が良いつもりの一方通行でなかったことに内心白尼に手を合わせる。

 流石にお互いの部屋に招きあう仲の女の子が校内での付き合いしかない男連中以下だったらショックで人間不信になっていたかもしれない。特に女の子は金輪際信用できなかっただろう。


 「おっは!」

 そこで快活な声とともに背中を叩かれた。


 振り返るまでもなく誰かは分かった。

 女性にしては高身長、柔らかな輪郭を残しながらもギュッと躍動感を詰め込んだスポーティーな体つきと明るい笑顔で皆に頼られる姉御肌な雪平菜苗(ゆきひらななえ)である。

 健康的に焼けた肌と短めのスカートから垣間見える肉付きの良い脚が男共に人気があるらしい。

 僕としては体つきよりも髪に魅力を感じる性質(たち)だ。

 染めることでわざわざ傷めるなんて論外である。

 その点、雪平は天然の茶髪で良い色をしている。シンプルにポニーテールで纏めているのもまたグッド。

 若いうちは素材の味を生かしごてごてとしない方が良いというのが僕の持論だ。

 少々考え方が古いのかもしれないが他人に押し付ける気はないのでこれでいいのだ。


 「ああ、おはよう雪ひ……らぁ!?」

 思わず声がひっくり返った。


 それもその筈、振り返りながらウインドウを確認、挨拶を返すという単純な動作すら支障をきたすインパクトがその表示にはあったのだ。


 『雪平菜苗が話しかけてきた。【好感度99】』


 思わず顔とウインドウを何度も見比べる。

 え? 99? 好感度? 親密度じゃなくて?

 動揺が(あらわ)になっている僕を見つめて首を傾げる雪平はいつも通りの様子で、何もおかしなところはない。

 なんだこの数値好感度って何だ親密度とは別にあるのかそれとも親密度から変化するのかとか脳内を大量の疑問が駆け抜けていくがまずは、と表情を取り繕い普段の自分を意識して挨拶を返す。


 「おはようゆきひら」

 「おはよ、朝から面白い顔してるね、どしたの?」

 「なんでもないよ、そしてこのかおはうまれつきだ」


 えらい棒読みを披露してしまったが声を出したらちょっと落ち着いた。

 ん~? と首を捻りながら顔を覗き込もうとする雪平をスウェーで避けながらちょっと悩む。

 

 僕と雪平は仲が良い。親友と言っても良いだろう。

 去年からクラスが一緒なうえ、席がいつも近かったので話をすることも多かった。

 彼女は行事のたびに中心で皆を引っ張っていたし、僕もそれなりに真面目で目端もきくのでよくフォローしていた。

 そんなことをイベントのたびに繰り返していればコンビのように扱われるのは当然で、今ではお互いに楽しんでその立場を享受している。


 だが……、と考えたところで顔が引きつった。


 『雪平菜苗は好感度が上がった!【好感度100】』


 勘弁してくれ、と眉間に皺が寄った。

 何もしてないのに勝手に上がっているうえ、外見に変化がまるでない。

 いつもみたいに楽しそうに笑いながら僕に絡んでいるだけだ。

 考え事をしながらぞんざいにあしらっているようなものなのに上がられるこの状況、まるで理解できない。


 『雪平菜苗は好感度が上がった!【好感度101】』


 頭が痛い。

 ウインドウの中の人には一体何が見えているのか。

 朝から面倒事は本気でやめてほしい。

 もうわけが分からないが一周回って諦めがやってきた。


 遠ざけようと突き出した手でボクシングをしている朝から元気な雪平にチョップ一つ叩き込みやめさせるが、せいぜいなつかれているようにしか見えない。

 相当極端に高くなってる筈の好感度がここまで表に出てこないというのは実際問題かなり怖い。

 笑顔の裏に強烈な感情を隠している様を想像すると外面如菩薩内心如夜叉なんて言葉が頭をよぎる。


 女って怖い、と本気で思った。







 新キャラ二人。

 白尼淡⇒白煮。醤油をほとんど使わずに素材の白さを生かして煮る料理。当然薄味。

 さらに淡いとなれば地味であることを約束されたような名前である。

 どれだけ出番があるかは作者の気分次第である。

 物語の隙間を埋める、別名「都合のいい女」

 雪平菜苗⇒雪平鍋からイメージ。取っ手付き、蓋のない昔ながらの鍋。

 蓋を必要とするときは大抵鍋より小さい物で落し蓋をするところから自分に見合ったサイズの蓋(愛情)でなくても受け入れられる懐の広さを表している。

 主人公が自分に恋愛感情を持ってないことに気付いており、あえて親友ポジとして振る舞っている。

 でも構ってもらえると嬉しい。

 自分の気持ちを押し付けないように意識して行動した結果主人公を恐怖に慄かせることに。

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