『わたしはホームを後にした』
さっそく感想をいただけるとは思ってもいませんでした。ありがとうございます!
今後もペースアップ目指して頑張ります!
現実とは、強固なものである。
たとえ世界のどこかで宇宙人が目撃されたり地底人が顔を出したり、あるいは悪の秘密結社が暗躍していようともきっと世界は何の滞りもなく回るのだ。
ならばちょっと変なウインドウが見えたくらい、どうってことないじゃないか。
――などということを食パンをかじりながら考えた。
ここは見慣れた我が家、しとぎ荘。
築三年と未だに小奇麗な様相を見せる我が城である。
半年前に単身赴任ということで、地元に残る僕の為に父親が借りてくれたアパートの一室なのだ。
ちなみに大家さんは遠い遠い親戚らしい。
あった事もない僕の保護者役も買って出てくれたそうで、何ともありがたい話である。
「――ごちそうさま」
一人暮らしも長いのについ声が出てしまう。
うちは母親が幼い頃に亡くなっていて片親なのだが、三つ子の魂百までとでもいうべきかよほどうまく躾けられていたらしい。なかなか手抜きが出来ない難儀な性格に育ってしまった。
とはいえ今気にするべきことは他にある。
ちら、と視線を横に向けた。
『わたしは食事をとった。【満腹度+40】
⇒僕 は 幸せ になった!』
な っ て ね ぇ よ。
最初はもっとシステムチックなものかと思われたこのウインドウであるが、どうも中の人がいそうな気配である。
というのも実はこのウインドウが見えるようになったのは昨日のことなのだ。
日曜であることを生かし一日かけて調べた結果、いくつかの事実が確認できた。
まずこのウインドウ触れる。
それなりに硬質な手応え。厚みは殆どなし。引っ張れば動かす事もできるが他の物や人に触れる事は出来ずにすり抜ける。
次に表示される内容。ウインドウ内のメッセージは基本僕の行動に合わせて表示される。こちらからステータス、時刻などを要求しても中々表示されることはないようだ。
最初僕に話しかけてきたように会話になりそうな文章が表示される事も滅多になかった。
例外が先ほどのようなこちらのツッコミ待ちとも思えるようなメッセージである。
……いまだ謎は多い。
特に同じ行動をしても同じメッセージが表示される訳ではない、というのはどういう訳か。
食事一つとっても満腹度の他に『カロリーを摂取した』、『贅肉が増えたかもしれない』などと毎回変化がありその法則性は掴めない。
これだけしか分からないのであれば害はないのだから、と諦めるしかなかったであろうこの問題であるが、残念ながら僕には心当たりがあるから困る。
――そう、僕は夢だったの一言で済ませられそうなあの体験をしっかり覚えているのだ。
よく分からない場所でよく分からない人?達に受けた説明を、嫌だけど、嫌ではあるが全て事実であると仮定して受け入れてしまえば最低限の説明は付いてしまう。
すなわち、深く考えたくないのでざっくりとしたまとめ方になるが。
僕は天文学的確率の事故によって本来行くことの出来ないスゴイ世界に着いた。
レベルの高い世界に引っ張られ無理矢理レベルアップ。
世界の認識の仕方が変わるのに合わせて肉体も世界の見方が変わる。
ウインドウを作っているのは上昇分のエネルギー。
大雑把で憶測交じりではあるが大体こんなところだろう。
となるとウインドウの中の人も大体わかる。
『わたし』と『僕』。両方とも一人称なのだヒントは出ていた。
レベルアップしてこの世界からはみ出し気味の僕なのだろう。
これはもう感覚的なものなのだが一度そうだと気付くとなんとなくだが自分にもう一人重なっているような気がする。
なんというか、根本は一緒なのだが枝分かれして頭が二つ、といった感じなのだ。
ここまでくると後は芋蔓式で、僕たちはきっと一つの物事を物理側と上位世界側の二つの側面から見ているのだろうと分かる。
会話にならないのも鏡に映る自分と会話するような趣味が僕にないからに他ならない。
一人でボケてセルフツッコミしているのはちょっとイタいかな、と思わなくもないがこのくらいかわいいものだろう。
さて自己分析はこのくらいにして学校へ行く準備だ。
結局何かが解決した訳ではないが持ち前のしなやかな心と忍耐力とやらで棚上げし、さっと洗い物を済ませブレザーを羽織り鞄を手に取る。
「行ってきます」
いつものように答える者のいない部屋に声をかけるとドアを開ける。
『わたしはホームを後にした』
答えるものはいないが連れはいたようで、不意を突かれた僕はちょっと笑った。
主人公の能力解説回。
これだけで一話使ってしまうとあまり話が進まず面白みに欠けてしまいかねないのですが、そこは急いで次話を書き上げてフォロー!といきたいところ。
なろうの必須成分、女性要素もなるべく早く出したいです。




