ジョゼット、後日談を語る
思い返してみれば、昔からミリアはおかしな行動が多かった。嫌っている割には私から奪った物を大切そうに眺めたり、嫌っている割には私の行く所ならどこでもついてきたがったり。
……そう、私のことが好きだったのね。
怖い妹ではあるけど、抱かれている感情が思っていたものと真逆だと分かった途端、不思議とこの子が可愛く思えてきた。
私は正気に戻った父と婚約者に、妹を許してくれるように必死に頼んだ。
父は「そんな秘宝が二つもあれば、当家は子爵家から公爵家になれたものを……」と残念そうに呟いていたわね。こんな父だからお婆様は宝石を私達に託したのだろう。(その判断も完全に間違っていたけど)
そして、婚約者の彼からは「君を愛しているが、妹が無理すぎる……」と婚約破棄されてしまった。まあ、無理なのも無理はないと思う……。
――私の婚約破棄を受けて、もちろんミリアは上機嫌だった。
ちなみに、彼女は自分のこれまでの態度が私の誤解を招いていたことを大いに反省したらしく、もっと分かりやすく好意を示してくるようになった。
「どうぞ、お姉様! 私のケーキも召し上がってください!」
「いらないって、太る……。本当に結婚できなくなる……」
「いいじゃないですか、この屋敷で私といつまでも末永く幸せに暮らしましょう!」
「言葉の端々にいちいち狂気を感じるのよ……」
ミリアは、何でも欲しがる妹から何でも差し出す妹に変わった。
ところで、この子が今も子爵家で暮らせているのはエレノーラさんのおかげと言っても過言じゃない。実は、魔法で人を操るという行為は結構な重罪にあたるそうだけど、今回は内々のもめ事ということで上手く取りはからってくれるらしい。
彼女がいなければ私はミリアの本心にも気付けなかったかもしれないし、感謝するべきだろう。
まあ、私は当面結婚できそうにないけど……。
視線を向けるとミリアは楽しそうにケーキを頬張っていた。
「ああ、こんな日が来るなんて! もしこの幸せを奪おうとする人が現れたなら私は……」
ミリアは口に笑みを浮かべ、虚空を見つめたままフォークをぎゅっと握った。
う、これは本当に結婚できないかも……。
……なんか、前より悪くなったように感じるのは気のせい?
お読みいただき、有難うございました。
はた迷惑な姉妹の話でしたが、楽しんでいただけたなら嬉しいです。
そして、新作短編を書きました。
この短編と同じくサクッとお読みいただけます。
『聖女として王国を救いにいったら、「私の婚約者を奪わないで!」と公爵令嬢がナイフを構えて突進してきた。』
この下にリンクをご用意しました。




