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本物の公爵令嬢  作者: Na20


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「……」



 王家と公爵家は、どうしても私をパーティー会場へと引きずり出したいらしい。

 きっとそこで何かが行われる。重大発表があるとも言っていた。

 おそらくその発表というのが、婚約破棄なのではないか。


 孤児の私より、公爵家の娘であるリリアンの方がふさわしいのは分かっている。

 だから婚約破棄を望むなら、私はいくらでも受け入れるつもりだ。

 なぜならこの婚約を私も望んでいなかったから。


 互いに望んでいない婚約。

 それなら穏便に済ませようと思えばいくらだってできたはず。

 でもそうはしてくれないらしい。

 大勢の前で私を貶め、傷物にし、そして捨てる。

 そこまでしなければあの人たちの気が済まないのだろう。


 正直に言えば行きたくない。

 でも行かないわけにもいかない。



「……私に選べる選択肢なんて最初からないのね」



 公爵一家が出掛けていったからか、屋敷の中は静かだ。

 窓の外を眺める。外には一台の馬車がある。

 あれに乗っていけということか。

 たしかあれは、私が公爵家に来るときに乗ってきた馬車だ。

 あの当時でもゴミ扱いの馬車だったのに、さらに年数が経った今、果たして無事に走ることができるのだろうか。



(鳥のように飛べたらいいのに)



 そうしたら私はどこへだって行ける。

 そんなことを思いながらぼんやり外を眺めていると、馬車が二台やって来た。

 こんな時に誰だろう。

 公爵一家はすでにパーティー会場へ向かっていて不在だ。

 残念だけど、このお客様はすぐに帰る羽目になるだろう。


 自分には関係ない。

 だって私は偽物の公爵令嬢だから。


 そう思いそのまま外を眺めていたのだが、屋敷が騒がしくなった。

 それに足音がこの部屋に近づいてくる。



 ーーコンコンコン



 そして足音が部屋の前で止まったと思うと、礼儀正しく扉がノックされた。



「!」



 扉がノックされたことに、私は驚いてしまった。

 ここの人たちはほとんどの使用人も含め、私の部屋にノックをして入る人はいない。

 唯一ノックしてくれるのは、公爵家に来た当時からいた一人のメイドだけ。

 ただその彼女も、つい先日退職してしまったが。

 だからこの屋敷に、私の部屋をノックする人などいないはず。



「……どちら様ですか?」



 しかし無視をするわけにもいかない。

 私は恐る恐る扉の向こうにいる人物に尋ねた。すると、



「突然の訪問ですまない」


「えっ……」



 今の声には聞き覚えがある。

 いや、毎日聞いていたあの優しい声を間違えるわけない。



「……テオハルト様?」


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