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「……」
王家と公爵家は、どうしても私をパーティー会場へと引きずり出したいらしい。
きっとそこで何かが行われる。重大発表があるとも言っていた。
おそらくその発表というのが、婚約破棄なのではないか。
孤児の私より、公爵家の娘であるリリアンの方がふさわしいのは分かっている。
だから婚約破棄を望むなら、私はいくらでも受け入れるつもりだ。
なぜならこの婚約を私も望んでいなかったから。
互いに望んでいない婚約。
それなら穏便に済ませようと思えばいくらだってできたはず。
でもそうはしてくれないらしい。
大勢の前で私を貶め、傷物にし、そして捨てる。
そこまでしなければあの人たちの気が済まないのだろう。
正直に言えば行きたくない。
でも行かないわけにもいかない。
「……私に選べる選択肢なんて最初からないのね」
公爵一家が出掛けていったからか、屋敷の中は静かだ。
窓の外を眺める。外には一台の馬車がある。
あれに乗っていけということか。
たしかあれは、私が公爵家に来るときに乗ってきた馬車だ。
あの当時でもゴミ扱いの馬車だったのに、さらに年数が経った今、果たして無事に走ることができるのだろうか。
(鳥のように飛べたらいいのに)
そうしたら私はどこへだって行ける。
そんなことを思いながらぼんやり外を眺めていると、馬車が二台やって来た。
こんな時に誰だろう。
公爵一家はすでにパーティー会場へ向かっていて不在だ。
残念だけど、このお客様はすぐに帰る羽目になるだろう。
自分には関係ない。
だって私は偽物の公爵令嬢だから。
そう思いそのまま外を眺めていたのだが、屋敷が騒がしくなった。
それに足音がこの部屋に近づいてくる。
ーーコンコンコン
そして足音が部屋の前で止まったと思うと、礼儀正しく扉がノックされた。
「!」
扉がノックされたことに、私は驚いてしまった。
ここの人たちはほとんどの使用人も含め、私の部屋にノックをして入る人はいない。
唯一ノックしてくれるのは、公爵家に来た当時からいた一人のメイドだけ。
ただその彼女も、つい先日退職してしまったが。
だからこの屋敷に、私の部屋をノックする人などいないはず。
「……どちら様ですか?」
しかし無視をするわけにもいかない。
私は恐る恐る扉の向こうにいる人物に尋ねた。すると、
「突然の訪問ですまない」
「えっ……」
今の声には聞き覚えがある。
いや、毎日聞いていたあの優しい声を間違えるわけない。
「……テオハルト様?」




