24
「――この国には私と似た色を持つ人はいない……。そこでふと思ったんです。私の両親はどんな人だったのだろうと。そしてこの本を見つけました」
たまたま訪れた図書室で、たまたま手にした一冊の本。
今思えばこの本との出会いは運命的だった。
だからだろう。この運命に、何か意味を見出だしたいと願ってしまうのは。
「私の髪は輝く銀色ではないし、瞳の色だって新緑とは違う緑色です。けれどなんとなく似ていると思って……。もしかしたら私には、他の国の、帝国の血が流れているのではないか……そう気になったんです」
この国には、帝国出身の人はほとんどいない。
なぜなら二つの国は、遠く離れているから。
二つの国の間には、いくつもの国がある。
だからわざわざ遠く離れたこの小さな国に来る奇特な人はいない。
けれどもしも。
もしも私に他の国の血が流れているとすれば、私がこの国にいることには、何か深い事情があったのかもしれない。
「それは……」
テオハルト様の声には困惑の色が窺える。
突拍子のない話を聞かされ、呆れていることだろう。
「申し訳ございません。今のは私の願望によって作り出された妄想……。どうかお気になさらないでください」
これ以上迷惑はかけられない。
知りたいことを知れた。それだけで十分。
いくら時間がないからといって、こんな妄想話にテオハルト様を付き合わせるなんて失礼なことをしてしまった。
やはりもう一度きちんと謝罪するべきだろう。
そう思いチラリとテオハルト様の顔を窺うと、
(……どうしてそんな表情をしているの?)
怒っているか呆れているはず……そう思ったのにどうしてなのかテオハルト様は、泣きそうな悔しそうな、そんな表情をしていた。
それを見た私の方が戸惑ってしまう。
「あ、あの……」
「……『祝福の一族』はね、帝国が建国された当時から存在している一族なんだ」
「!」
テオハルト様はゆっくりと、そして私の目を見つめ話し始めた。
内容が内容だ。
聞いていいものかと迷ったが、テオハルト様の揺るぎない視線に、私は静かに耳を傾けた。
「初代皇帝と一族の長は親友だったそうでね。今日の繁栄があるのは、一族の長が初代皇帝に祝福を与えたからだと言われていているんだ」
その後もテオハルト様は、帝国と一族の歴史を教えてくれた。
「君と帝国は何の関係もない」
そう言われて、この話は終わりだと思っていたのに……
そうしていつしかテオハルト様の話は、歴史から現在の一族についてに変わっていった。
「祝福の一族は、今はマリアント公爵家と言うんだ」
(マリアント公爵家……)
「公爵は温厚な性格だが、当主と皇帝の側近の仕事をこなしてしまう優秀な人でね。とても家族想いなんだ」
家族。
その言葉になぜか心をギュッと締めつける。
けれどそれを表情には出してはいけない。
私は普通を装い、テオハルト様の話に意識を戻した。




