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いま、宇宙にある日常  作者: 水無月 林檎
ep1。いま、宇宙(ここ)にある日常
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42/44

本当にあったギャラクシーな話11 キャバ嬢の場合

先月の16日を最期にランクインから外れてしまいました。もう一度返り咲きたい!評価をお願いします!



「ふあー、眠い」

オフィスに入ってすぐの大欠伸を美月がたしなめる。

「何?ミィまた徹夜?」

「んむ。最近のゲームは凄くてさー、ついついね。ミィが小さい頃はゲーム機なんて8ビットで2枚のドット絵でピコピコ走ってたのに」

「あんた、歳いくつよ?」

「前に言ったじゃん。116だよ」

「なんだ。覚えてたのね。口からでまかせかと思っていたわ」

「違うよ、ほんとにそうなんだよ。ミィたちは人間とは成長の速度が違うのだよ」

「へぇー」

「ミィの御先祖様は猫又と呼ばれて歴史書に登場するくらい長生きで、すっごい由緒ある血筋なんだからね!」

「そりゃ、余所のご家庭でしょ。ロシアンブルーの猫又だなんて無理があるわ」

「じゃぁミィはどこの子なのさー」

「知らないわよ。あ、ちょっと待ってよ。ミィより年上に見えるキャバ嬢の年齢って」

「聞いてみる?」

「いゃ、やめておく…」


「ねーねー、キャバ嬢!」

「はーい、どうしました?」

「おバカ、なんてことしてくれんのよ!」

「だってー、気になるじゃんー」


「それじゃあ、今日は私の秘密の話をしますね。

紅茶を入れたので飲みながらゆっくりくつろいで聞いていてくださいね。」

そう前置きして

沙織は唐突に語りだした。

「幼い頃、私はウェールズの原野で両親と逸れ、迷子になってしまった事があるの。

私は父親につれられて近所の原野に来ていたわ。

当時は父の実家があるウェールズで暮らしていたわ。自然の多い穏やかな土地でね。私は放牧されている羊を観るのが大好きだったの。

ウェールズの原野は一面の草原で木はほとんどないの。その日は珍しくお天気も良くてポカポカした陽気だったのを覚えている。

「わー、ひつじさん、めぇーめぇー」

ウェールズでは放牧されているひつじが多いの。それでその日は仲良くなった羊さんが草をはんでいるのをずっと追いかけていたわ。のんびりとした時間をずいぶんと長いこと過ごしていたのね。いつの間にやら日が傾いて、肌寒くなっていたわ。ずいぶんと遠くまで来てしまっていたの。あたりを見回しても草だらけ、どこまでも続く草原しか見えなかったわ。

もはやどっちの方角から来たのかも分からなくなって、途方に暮れて泣いてしまったの。

そうしたらしばらくして私の声を聞きつけたのか、当時飼っていたキャバリア犬のチャーリーが来てくれたの。チャーリーは必死に私を慰めようとしてくれたわ。そして一緒に帰ろうって言ってくれたの。でもね、小さな私がイヌの足についていくなんて無理よね。また泣いてしまったの。

「チャーリーみたいに上手に走れないよー」って。

そうしたら、またチャーリーは私を慰めてくれたわ。ペロペロってなめて。そしてこう言ったの

「沙織よ、お前からは微かにカヴァスの匂いがする。」

「かゔぁす?」

聞き慣れない単語を聞いて聞き直したわ。

そうしたらアーサー王の猟犬の名前だっていうの。神の使いみたいなものだって。

「血は薄れたとはいえ、力はのこっているかもしれん」

「どうすればいいの」

「早く走りたいと願いながらおなかに力を込めて目を瞑るのだ」

「うん、やってみる」

私が目を開くとあら不思議。チャーリーが大きくなっていたわ

「それは違うぞ。お前が小さくなったのだ、沙織」

「え?え」

自分の手を見て驚いたわ。わんこのてになっていたの」

手だけじゃないわ足もお腹も見える範囲は全部イヌのようになっていた。いえ、見える範囲だけじゃない。手で触ってみて気づく、頭の両脇にふさふさしたものがたれさがっている。耳だ。体毛の色と柄でなんとなく想像がついた。私、キャバリアになってる?

「きゃうん」

声を出してみて確信した。本当にキャバリアになってる!

意を決して立ち上がってみる。当然4本足だ。初めてのはずなのに、なぜかしっくりきた。少しだけ駆けてみる。身体が軽い。力がみなぎってくる。

今なら速く走れる。チャーリーに連れて行ってもらおう」




その頃、家では警察も交えて必死の捜索にも関わらず沙織は見つからなかった。暗くなってしまったので、その日の捜索は打ち切られ翌日早朝から再開しようということになった。


次の日の朝、家の扉の前で、2匹のキャバリア犬が寄り添って眠っていた。片方は飼い犬のチャーリーだ。しかし、もう一方の小さいキャバリアは見たことが無い。沙織の両親が怪訝に思って近寄ると、小さなキャバリアが目を覚まし、娘の姿に変わった。そして駆け寄って両親に抱きついた。

「パパー,ママー、会いたかったよー」

そして抱きついたまま泣きじゃくった。


「これが、宇宙人の血が発覚した最初の出来事。しかし、それ以降キャバリアの姿になることは無かったの。

現在飼っているキャバリアのもちゃは当時から数えて3代目。私は宇宙人の血は極めて薄いため、自由に変身することはできないの。本当はもう一回くらい野原を駆け回ってみたいんだけどね。

私がキャバ嬢って呼ばれているのはキャバリアを飼ってるからだけじゃないの。

これが私の秘密のお話。満足してくれたかしら」



「そうそう、私の年齢は25よ」

「あちゃー、聞かれていたかぁ~」

ちょっとした後悔と絶望感に苛まれる美月だった。

沙織の成長速度は人と全く同じようだ。(実年齢よりは若く見られるが、それが宇宙人の血のせいかは定かではない。)




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