超短編:いま、宇宙にある日常‐本当にあったギャラクシーな話 1「少女の落し物」
ひとまず1話が終わってしまったので、小話でごきげんを伺おうかという次第です。ストックは無いよ!
○超短編:いま、宇宙にある日常‐本当にあったギャラクシーな話 1「少女の落し物」
お盆の近いある夏の日のことだった。夏の遅い夕暮れ、家々から美味しそうな夕食の香りが漂いはじめる時間。帰り道、美月は公園のブランコに揺られ、うつむく女の子を見かけた。年の頃は小学校低学年くらいだろうか?長い黒髪で、夏の夜に出会った幽霊のような儚い雰囲気を纏った美少女だ。
もう、子供はみんなとっくに帰ってしまった時間で、公園にはその女の子と、家への近道として通りかかった美月の二人きりだ。気になって、美月が女の子の元に歩み寄る。女の子は顔を涙でぐしゃぐしゃにしてしゃくりを上げていた。
「どうしたの?迷子?」
美月が声をかける。女の子は袖で涙を拭いて答える。
「ううん」
ブランコをギュッと握って首を横に振る。
「お家に帰らないの?」
もう一度尋ねてみる。
「……帰れない」
「え?」
どういう事だろう?美月が根気良く訪ねると、女の子は涙を必死に堪えながら、ゆっくりと話してくれた。どうやら、大切なペンダントを無くしてしまい、帰るに帰れないのだそうだ。
「どんなペンダントなの?」
「金色で、中に写真が入ってるの」
「ロケットか」
「ロケット?」
美月の呟きに少女の訝しげな声が重なる
「中に写真が入っているペンダントをロケットって言うんだけど、違ったかしら?」
「んと……うん、ロケット」
「大切な写真なのかな。こんな時間まで探したんだから、怒られることは無いと思うけど」
「でも、見つけないと帰れないの」
「お家はこの辺なの?」
美月の問いに、女の子は首を横に振った。
「そっか、それじゃ、帰る前に見つけないとね。よし。お姉ちゃんも一緒に探してあげる」
「本当」
「うん、本当。ほら行こう」
言って、手を差し出す。女の子はぴょんとブランコから飛び降りて、美月の手を握った。
すっかりと日も落ちて、辺りが夕闇に染まった頃。
少女の明るい声が公園に響いた。砂場の街灯のもとで発せられた声は、滑り台に反射して美月のもとにも届いた。
「あった!」
満面の笑顔で、女の子は見つけ出したロケットの砂を手ではらい落としてから美月に見せてくれる。
「よかったね」
女の子の前にしゃがんで目線を合わせる。
「うん!」
女の子が美月に抱きついた。美月は照れたようで、ホッとした様で、抱きつかれたまま何もしないのがもどかしくて、女の子の頭をなでて喜びを分かち合う。
「おねえちゃんにだけ、写真見せてあげる。大切な写真なんだよ」
「わあ、ありがとう。誰が写っているのかしら」
「おとーさんだよ」
言って、ロケットを美月に手渡す。美月は受け取ったロケットを開いて…
「え?おとう…さん?」
「うん!」
写真は、夜空を飛ぶ円筒やひし形を組み合わせた光で、飛行機…のようなものだった。「えーと、うん。カッコいいわね」何かを期待する女の子の眼差しに負けて、美月は曖昧な感想を述べてロケットを女の子に返す。「でしょっ」女の子は褒められたのが嬉しかったようで、笑顔で美月からロケットを受け取った。「おねえちゃん、ありがとう!あたし、もう帰るね」
そう言って手にしたロケットを撫でると、ロケットはぐにゃりと形を変え、中の写真にあった、円筒やひし形を組み合わせた飛行機と全く同じ形を形取る。まるで、手品か何かを見ているようだ。
「バイバーイ」
女の子が笑顔で手を振る。美月があっけに取られていると、今度はロケットがピカッと輝き、女の子が小さなロケットに吸い込まれた。手のひらに収まるサイズの、かつてロケットだったそれは、そのまま輝きながら宙に浮き、空に向けてスゥッと一直線に飛び去った。
「えっと…バイバイ……?」
呆けたまま虚空に向けて手を振る。空に吸い込まれたロケットが、夏の夜空に一等星のように輝いて消えた。
「お家はこの辺じゃなくて、見つけないと帰れない…うん。そう、そうよね……」
自分を納得させるようにつぶやいて、美月はいつまでも空を見上げていた。
<おしまい>
※ロケットのロケット。という駄洒落な訳ですが、ひと駄洒落でこんだけ書けば満足です。
ロケットのロケット。という駄洒落な訳ですが、ひと駄洒落でこんだけ書けば満足です
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