第一話
爬虫類好き増えてくれ~って思いで書きました。
「よし、水変えは、全部終わったかな。次は……」
俺は、虫谷爬美
ペットショップでバイトをしている高校3年生だ。そんな、俺がペットショップで担当しているのは爬虫類数種類と奇虫を担当させて貰っている。
そして今は、学校に行く前に爬虫類のケージの水変えやメンテナンスを行っている。
「爬美君、今日はそれだけで良いから。学校に行って良いよ。」
「でも、メンテナンス終わってませんよ?それに奇虫たちの状態も見てないですよ、調子の悪い個体がいるって言ってたじゃないですか。」
「いいからいいから、高校生に朝から働かせる訳には行かないからね。」
俺としては爬虫類とまだまだ触れ合いたかったし、奇虫の様子を見たかったが、店長がそう言うので渋々俺はメンテナンスを切り上げ学校に向かう為鞄を取りにスタッフルームに向かった。
スタッフルームには、今日入荷して来る生体を確認している女子がいた。彼女は部屋に入って来た俺を見ると少し目を見開き話しかけてきた。
「あれ、爬美君じゃないですか。もう学校に行くんですか?何時もならもっと居るのに。」
「店長から、今日はもういいって言われたんだよ。
はぁ、もう少し爬虫類と触れ合いたかったのに。」
彼女は、楠原眞鱗
小さい頃からの幼なじみである。彼女も俺がバイトを始めたのと同時にバイトに入り海洋生物を担当している生き物好きの奴である。自分でも、生き物特に熱帯魚や大型魚を飼育している。またアクアリウムやアクアテラリウムをインスタ等にアップしておりある程度の人気もある。
彼女は、幼なじみの俺から見ても容姿が整っている。身長も高く、足が長いためスタイルが良い。まあ、胸が少し残念なんだが。それに、生き物への情熱が強すぎて容姿目当てに話しかけてきた奴を引かせたりしてるんだが。
「ムッ!今何か失礼なこと考えませんでしたか?」
「べ、別に考えてないぞ。恐らく」
「恐らく、って何ですか。含みのある言い方しないで下さいよ~」
こいつはこういう妙に鋭いから困る。
俺は彼女の疑いの視線から逃げるように鞄を持ちそそくさと部屋を出た。
「あっ、待ってください。」
彼女は急いで部屋を出る俺を見て、袋に入ったタツノオトシゴらしき生体を箱に戻し鞄を取り、部屋を飛び出した。
「じゃ、店長お疲れ様でした。」
「店長私ももう行きますね。お疲れ様でした。」
「はい、お疲れ。行ってらっしゃい。」
「「行ってきます。」」
ペットショップを出た俺と眞鱗は、通学路を二人で歩きながらお互い飼っている生き物について話し合っていた。
「どう?最近気になった生体はいる?」
「うーん、俺の好きなスキンク類の生体は特にいないかな。カメレオン系がちょっと気になってるけど。眞鱗は、どうなんだ?確かクラゲ専用の水槽を買うって言ってたけど。」
「お金はもう少しで貯まるけど、初めてクラゲを飼うからもう少し調べてからかな。」
「へー、金は貯まったんだな。」
「うん、でも電気代と餌代がなぁ。生き物を飼うから仕方ないんだけど月数万一気に飛ぶのは厳しいよ。」
「それで言ったら俺もだよ、俺は数は多いけど基本爬虫類だけだからそこまでだけど魚は電気代かかるだろうな。」
「爬美君もそんな変わらないと思うけど、あんなに飼育してたら。いい加減生き物採取止めれば良いのに。」
「バカ言うな、自然界にしかいない奴もいるんだぞ。」
「そうやって何匹のトカゲを捕まえてきたと思ってるの。」
他愛のない会話をしながら歩いているとチラホラと俺達の学校の生徒が歩いている姿が見え始めた。他の生徒は眞鱗の容姿が気になるのか、こちらをチラチラと見ていた。
「また見られてるぞ。どうにかならねぇのか。」
「どうにかって言われても容姿は変えようがないじゃん。それに、見られてるのは、私だけじゃないと思うけどな。」
「そんな訳ないだろ、此方を見てるのは大体お前を見てるんだよ。」
「うーん、そうかな?爬美君も見た目は整ってると思うけどなぁ。」
眞鱗は、こう言うが俺の容姿はそれ程整ってはいない。身長はある方で生き物のケージの移動やメンテナンス、作成等で体も引き締まっているが、顔じたいは普通のどこにでも要るような顔である。
そうして歩いている内に学校に着き、俺達の教室である2年3組の教室へと入っていった。
教室に入ると少し遅い時間に来た為ほとんどの生徒が既にいた。そのため教室は少し騒がしかったが俺達が入るとクラスメイト達が好奇心と嫉妬の混じった目でこちらを見てきた。好奇心も嫉妬も眞鱗と一緒に登校してきたからだろう。だが流石に三十人近くの人間から視線を向けられると鬱陶しいとはいえ、この視線にもいい加減慣れてきた。このクラスになってからだけでも数ヶ月、今まで一緒にいた期間で考えれば数年間登校するだけで同じような視線にさらされてくれば慣れもする。
眞鱗も注目されることに慣れているのか、すぐに仲の良い友達のとこに向かっていった。そうするとクラスメイト達は再び騒ぎ出した。登校する時間が少し遅かったのか、席に座るとすぐに担任の教師が教室に入ってきた。
「全員席についてください、HRを始めますよ。」
俺らの担任の幸山瞳は教室に入るなりHRを始めようとするがクラスメイト達が席に戻る様子はなく静まる気配もまるでない。
「ほら!早く静かにしてください。」
生徒達が席にようやく着こうとした時、教室の床が白く光り出した。それにともない、生徒達が慌て始めた。
「ウワッ!なんだよこれ!」「なによこれ怖い。」
「お、おい教室出ようぜ!」「皆さん、落ち着いて教室を出てください。」
先生が生徒達を落ち着かせ教室の外に出るように指示を出すが、段々と輝きを増すにつれ生徒の混乱も大きくなってしまい生徒の指示が全く通らなくなってしまっていた。
俺も何が何だか全く分からないこの状況に混乱していると眞鱗が此方に来て混乱しながらも話し掛けてきた。
「爬美君、これ大丈夫だよね?私、怖いよ。」
「俺にもわかんねぇよ、こんなの。なるようになるだろ。」
俺がなるようになれと思いながら眞鱗の手を握った。
「ちょっ、どうしたの?急に。こんなことしてる場合じゃないでしょ。」
「分かんないけどこうしてた方が何となく良いような気がした。」
「そんな理由で握らないでよ、もう。」
眞鱗の顔が少し赤くなっているのを見ているとすぐそこにあった眞鱗の顔が見えなくなるくらい視界が真っ白に染まりあまりの眩しさに目を瞑った。
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顔に湿気の多い暖かい風を受け俺は目をうっすらと開けると眩しい程の光は無くなっていたが自然の光による別の眩しさがありまた目を瞑ってしまった。また、握っていた眞鱗の手の感覚もなくなっていた。
「なんだよこれ!!どういうことだよ!眞鱗いないのか?!」
俺は、慌てて周りに眞鱗が居ないか探すが俺の声に返事が返ってくることは無かった。
俺は周囲を確認するため再び目を開けると漸く目が光に慣れてきたのか周りの景色が見えてきた。そして俺の目に写ったのは何時もの見慣れた教室の机や椅子、床の茶色ではなく、様々な木や植物の緑に溢れた景色だった。