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俺はサラリと話したつもりだったが、ダチは妙に、そのことについて色々と聞いてきた。
俺は事実をありのままに話しただけのつもりだったが、少し意表をつかれたかんじで、とりあえず、それらに答えると、
「その明細書をブッキラボウに捨てた人を君は救ったという話だけど、その実、救われているのは君の方だな…」と、低いトーンでだが、はっきり言われた。
「救ったって、いうニュアンスは何となく理解できるが、俺が救われた、っていうのは、どういうことだ…?」
「顔見知りの給与明細書だったんでしょ。本来、君も分かってる通り、他人の給与の額なんて知りたくても一番知りづらい事柄なんだよ。君は、他の誰かが、その人の、それを見られないように細工したと思うが、まず、君、それを見なかったよね?」
ズバリだった。
ダチが言うように、俺自身が、それを見ずに更なるゴミの深みへと、俺は、それをオイヤッタ。