表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

プロローグ



 鉄格子の向こうに、男が一人俯きながら座っていた。

 抵抗の様子はなく、うなだれているだけだ。

 ぼんやりとした明かりが点滅して点き、ほのかに男の顔を照らしている。しかし男の眼に光はなく、口をぱくぱくと何か言うように動かしているのみで、生気がまるで感じられない。

 きっと正気の沙汰でない。近くにいた警備員がそう言うように眉をひそめた。その表情には、憐憫もかすかに含まれていた。なぜなら男が、数奇な運命に立たされてこの鉄格子の中にいる存在なのだから。

 しばらくして、スーツ姿の女が鉄格子の前までやってきた。男とは違って凛とした表情を携え、目には正義を宿している。女がやってくるなり男は口をつぐみ、目を逸らした。そうしてより深くうなだれて、自分を守るように両手をぎゅっと組みなおした。

 女は鉄格子を挟んで男の前に座った。睨みつけるように、しかし説き伏せるように男を見る。

 

 おまえは、そうではなかった。


 男は女が小声でそう言ったのを聞き逃さなかった。涙がこみあげてくるようだった。

 そして女は今度ははっきりと口を開いて、

 

 「おまえには、これから知ること全てを話してもらう。」


 きっと、ずっと前からこうなることは決まっていたんだ。

 男は震える唇を少しずつ動かして、ぽつりぽつりと言葉を漏らし始めた。しかし女に問いかけるようにではなかった。

 まるで、空言のように。

 記憶の中の誰かを想って語り掛けているようだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ