第二十八話 黒き思惑
丑三つ時の廃れたビル。
肝試しにぴったりな幽霊が出そうな所に一人の男がいた。
三階の部屋に六本の蝋燭に紫色の炎が灯され、地面には魔法陣が刻まれていた。
魔法陣の真ん中に魔道士のフードを被った男はブツブツと唱えていく。
「アブジャカソウアラル……罪ある悪人の魂を奉り、純粋な赤子の六つの心臓……我の前に顕現せよ」
供えられているのは男が殺めたのは数々の悪を真っ当した人間の死体。
そしてこの世に生まれたが手の施しが無く、衰弱死した赤子の心臓を器用にくり抜かれた六つの心臓。
辺りに凍える風が舞い吹ぶき、普通の人だったら肌がピリピリし、狂気に染まるだろう。
黒い霧がその供物を一心不乱にボリボリと音を鳴らし喰い漁っている。
「オォォ……!遂に成功したぞ!!」
ニヤニヤと下卑たワライガオをしたまま、自ら手をかけた道具を視る。
「ようやく……この世界に混沌を……我らにシンなる栄光を手に入れられる!」
この男の名は志麻妥哀奇。
志麻妥は世界に絶望していた。
自分は完全たる人間であり、特別の人間だと思っていた。
彼は全て、完璧な人生を迎えるはずだった。
大手の企業に就職し、文句がつけられない結果を出してそのまま出世街道まっしぐらだったはずたった。
だが彼には強いプライドが邪魔をして、他人との協力をせず、自分勝手にしていた。
彼は他人に興味がなく、孤独であったのだ。
それに目をつけた醜い嫉妬の渦に囚われた同僚に嵌められたのだ。
「志麻妥君……これはどうゆうことかね」
「それは私がやった訳ではありません!!」
上司に呼ばれ、会議室に行くとテーブルに自分が横領したという嘘っぱちな証拠が並べられていた。
何度も自分は無実であると主張したがそんなことを聞く耳も持たず、解雇された。
哀奇はどん底に落ちていった。まるで積み上げていった人生の階段を突き飛ばされたように。
「畜生……なぜなんだ。なぜこうなったなんだ」
酒、タバコに身を溺らせ、家では物に当たる始末をくり返した。
そして彼は目の光を失い、空を見上げる。
「やぁ志麻妥哀奇さん。初めまして私は……」
白のローブを着ていた青年が姿を現して、瞳は清らかであったがそこには黒が混じっていた。
「誰だ、アンタは?」
「フフッそんなに警戒しないでくださいよ」
哀奇は優しく左手を差し出してくる青年だったが信用できず後ずさる。
「アナタはこのまま人生を終わらせますか?」
「なに……?」
「アナタは周りから信じてもらえずら嫉妬に狂った同僚に嵌められましたよね」
自分の素性や状況を調べたのかーーは悠然と語り始める。
「悔しくありませんか?もし我々に協力するのであればアナタにより完璧な力を授けましょう」
哀奇は魅入られたのか、その男に従い、今に至る。
悪魔と契約し、己の実力を高めて劣った人類(自分)を殺し、さらなる頂きを手に入れたのである。
その力でかつて嵌め、信じてくれなかった者に復讐した。
「た、頼む哀奇!嵌めたことは謝る……だから許してくれ!!」
「待ちたまえ!哀奇君、落ちつきたなさい。その物騒な物を下げなさい」
「……」
この期に及んで言い訳を始める目の前の塵をなんの苦も無く片付ける。
元職場からは阿鼻叫喚の嵐だったが雑音を一つ、また一つと消していく。
そうして全てを終わらせた。手にはべっとりと鮮血が付着していた。
「素晴らしいですね。哀奇さん、また劣った人類を無くしましたね」
パチパチと拍手を送るーー。
「ありがたき幸せ。ーー様、今後とも貴方様に忠誠を誓います」
「そうですか。頼みますよ」
哀奇が所属した組織の目標は【ツヨキモノ一人が世を統べる者。弱者は淘汰される存在、我等に其の事はあってはならない】である。
そのためには、まずこの世界を荒らす準備をするーーそれは魔界の門を開くためである。
この世に悪魔を放ち、人間と悪魔の血と血で殺し合いをさせ、ツヨク生きた者を選定するためである。
「ようやくだ。6日と四時間でこの門が完成し、新たな時代が幕を開ける。そのためには私はここで邪魔者が来ないように待とう……クッ」
フラフラと冷や汗をかきながらボロボロのソファに寝転び眠りにつこうとする。
(やはり……魔界の門を開くには相当な負担がかかりましたね……)
魔界の門ーーいわゆる悪魔が住んでいると言われる世界でもある。
人間界と魔界を繋げるには魔力が使える者が千人単位と一定の供物が必要である。
それを一人でやるにはあまりにも自殺行為と言ってもいいだろう。
だが志麻妥哀奇という男はそれを一人でやってのけたのだ。
(ハハ……これもーー様のためならば)
自分の役目の一つを果たし、主の理想を叶える夢を間近で視れる夢を心に踊らせながらーー。
一方、六真はというとDDO組織の始末書を必死にペンを走らせていた。
「アバキ……お前、こんなに迷惑をかけて」
書類の量は分厚く、本人には分からないことまでびっしりと書かれていた。
「オォーーがんばれーー」
サイタイス越しで背中を向けながらヒラヒラと手を振り、感謝の気持ちがこもっていない言葉だ。
「こ、コイツ……」
唇を歯で噛みながら、文句を言うのを我慢する。
「貴方が"責任"を持つと言ったのでしょう。マスターとして自覚なさい」
「ハイ……おっしゃる通りです」
今回、依頼ではアバキは討伐されるはずたったがそれをなんとか辞めさせるために身勝手な行動をして罰を受けていた。
本来だったら、DDO隊員としてなれないはずだったが穂野江さんが上司に説得し、書類の後始末で許されたのだ。
(まずいわね。このままじゃあ……)
穂野江はサイタイスから受け取った情報を読み取り、難しい顔をしている。
だがそんな事に、気付かない六真であった。
「六真様、頑張ってください!」
あぁ、天ちゃんの応援が身に沁みる。
ホロリと涙を流しながら昨日の戦闘による被害の処理に奮闘していたのであった。
どうも〜作者の蒼井です!
読者様の皆さんはお元気でしょうか?
私はノンビリ(不定期)と執筆を続けています。
これからも気長にしてお待ちしていただけたら幸いですm(_ _)m
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