表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/62

第二十七話 タノシイ

 その日、僕は毎日、鬼に戦いを挑んでいた。


 学校からの帰り道にいつもの路地裏で鬼は待っていた。


 「来たか……こっちだ」


 「おう!今日こそリベンジしてやる!!」


 毎日、薄暗い路地裏にいるのか知らないがいつも出くわしていた。


 最初の頃。


 「オリャ!デリャァァ!!」


 ヒュンヒュンと風を切る六真の拳・脚の殴打をするがそれでも見切られる。


 まるでこちらの動きを予測し、いなしている。


 「ハァハァ……やっぱり当たらない」


 「その程度か?」


 こっちは完全に息が上がっているのになんでアイツは汗も……息も……かいてないんだ。


 鬼は一切の無駄のない動き、乱れない呼吸をしている。


 「これが……武人としての力?」


 対する六真はあまりにも大振りの拳の突き、ヨレヨレする脚捌きであり、無駄が多い。


 あの時のタケミナカタさんと見知らぬアンちゃんの特訓は無駄なのかと心が折れそうになる。


 六真にはまだ戦闘経験が浅く、未熟であることは自覚しているつもりである。


 だが、それでもこの格差は異常である。


 人知を超えた圧倒的肉体で代表格の【鬼】である。


 戦闘は初めてではないのに心は解っても頭に【恐怖】の二文字が頭を支配する。


 「クソぉぉぉぉ!!」


 焦りが高まり、冷静さを失った六真は無謀の突撃をする。


 「フン……甘いわ」


 「なっ!?」


 片腕を掴まれ、鬼の剛腕が六真の腹を抉り、壁に叩きつけられる。


 まただ……またあの時と同じ。


 そうして六真は気絶した。己の無力さと悔しさを残したまま瞼を閉じた。


 「フン……俺の見込み違いだったか。ここで喰っちまうか」


 六真の肩に手を伸ばし、そのまま己の血肉として腹を満たそうと考える担ぎ上げようとするが。


 「いや、まだだな。早計すぎる」


 そうして鬼は路地裏の奥に入っていく。


 「六真君!?大丈夫!!」


 バッと飛び出し、穂野江は六真に治療魔法をかける。


 「穂野江さん……僕……また」


 「喋らないで!傷口が増えてしまうわ」


 近くで見ていた穂野江は、六真がDDO隊員に正式に認められるまでサポートするように言われていたが六真に止められたのだ。


 「穂野江さん、この依頼は僕一人でやりたいんです」


 「駄目よ。この件はあの偵察部隊が壊滅まで追い込まれたのよ。貴方は死にたいのかしら」


 凄みがあるプレッシャーで押し潰されそうになるがそれでも。


 「僕には……漢には引いちゃいけない時があるんです!しかもこの依頼は僕が実際にやりこなした実績がないと駄目じゃないですか」


 「それでもよ。今回の相手は悪すぎるのよ……貴方がどんなに強い悪魔フレンドを使役したとしても」


 そう悪魔や天使など契約フレンドになったとしてもまだ正式に隊員としてなっていない六真は二体までしか召喚できないのだ。


 まだマスターとしての力量も不足している六真であり、唯一仲間にした天ちゃんはあまり争いを好まない。戦闘では回復を得意とする天使である。


 「六真様、やめましょう。貴方様が苦しむのを視たくありません……」


 サイタイス越しで涙目な彼女を見るがそれでも……魂が叫んでいる。


 ここで諦めたらきっと後悔すると。


 「だからお願いします穂野江さん、天ちゃん」


 僕は、深く頭を下げる。


 「分かったわ……けど条件があるわ」


 はぁぁーーと深いため息を漏らす。


 「条件……ですか?」


 「私は魔法でターゲットで視認されないよう隠れているから、もし危険と判断したらすぐに助ける!そして期限は一週間までよ」


 「はい!!」


 解ってもらえてよかったぁぁーー。


 そうして毎日、挑んでいたが完敗だった。


 ちぎっては投げられ、ちぎっては投げられの連続で鬼はイラつきを通り越して呆れていた。


 そして今が一週間最後の日。


 だけどなぁここで挫ける訳にはいかねぇんだ!


 「お前はしつこいなぁ人間」


 「しつこくて結構……ハァハァもうへばったのか?」


 それが地雷を踏んでしまったのか。


 ピキピキと青筋を立てたのか鬼は怒りに任せた打撃をしてそれをまともに食らったのだ。


 それを繰り返して行く内にドンドンと六真の身体に駆け巡る。


 「くっ!?」


 「アア!!」


 それは戦い続けて行く内に六真の身体は急速に成長していたのであった。


 一年間、タケミナカタの所で修行していた器がようやく開花したのだ。


 「お返しだ!」


 左ジャブを繰り出すが鬼にガードされてしまったが反撃出来たのは初めてだ。


 「よっしゃあぁぁ!」


 内心ガッツポーズをとるがそれでも構えを解かない。


 「ほう……やるじゃねぇか。俺に反撃するなんてな」


 ニヤっと不敵に笑みをこぼし、鬼は自分と対等にやれるができる相手が表れて嬉しいのか。


 僕も何故かタノシクなってきた……こんなにゾクゾク背筋に興奮が押し寄せてくるなんて!!


 「よし……来い!人間!!」


 「イクゾォォ!オニィィ!!」


 バァンバァンとお互いの拳が重なり合い、まるで銃弾が放たれた轟音が響き渡る。


 互いに血が吹き出すがそれでもやり合いたい、この時間だけは誰にも邪魔されたくはない。


 「負けないで……六真君……」


 透明化の魔法【インビジブル】そして気配を殺し、路地裏から見ていた穂野江。


 今すぐにも助けに行きたいがそれでも耐える。


 胸がはち切れそうになりながらも、六真の勝利を願っている。


 「ハハッ楽しいなぁ人間名は?」


 「六真……正士。お前は」


 「オレの名前は羅暴鬼ラバキ。六真、さぁ続けるぞ!!」


 静かに構えを取り、俺は覚悟を決める。


 顔面、腹、腕、足と全ての四肢を使う。


 「っ!?あぶねぇなぁ。ヒヤッとしたぜ」


 「……」


 六真はいわゆるゾーンに潜っている。プロのアスリートが掴める蜘蛛の糸のように薄い線を手に取ったのだ。


 そして周りが気づかない程、集中力が身体に巡り回っていたのだ。


 どんなに小さな動きを読み、一瞬の隙も与えさせない。そんな気迫をしていた。


 「ビリビリするなぁ。それとこの戦いに決着をつけるぞ」


 「オウ……」


 互いに全力をブツケル。


 「オイオイまたあの技か?そんなのはもう効かねぇぞ」


 「黙ってみてろ……」


 「あの時の【一点鐘】じゃない、我が物にした本物の技を受けてみろーー」


 深く息を吸い込み、腹から吐き出す。そして膝を曲げて深く腰を落とす。


 目の前が暗くなる。それは集中力を限界まで高め、相手を貫く一撃を振り絞るためだ。


 「ほぅ、じゃオレもお前に敬意を払ってこの技で終わらせよう」


 ラバキの雰囲気が変わった。相手を確実にノックダウンさせる眼をしている。


 互いにジリジリと一歩も引かないがそれでも睨み合いが続く。


 そしてーーポタン……と誰かの汗の雫が滴り、火蓋が切られる。


 地面を蹴破り、脇腹まで拳を引く。風が纏い一つの弾丸が飛び出す。


 ラバキは片腕から血管が湧き出し、筋肉が膨張しているのか熱を吹きだしている。


 完全にラリアートの態勢で首をへし折ろうとする。それが彼なりの強者に挑んできた者の敬意なのだろう。


 ((受けて立つ!!))


 数mmまで近づき、お互いの全力の一撃が放たれる。


 「一点鐘!!」


 「首砕き!!」


 六真は首を、ラバキは腹を受けた。


 骨が砕かれる感覚がひしひしと伝わってくる。痛い、苦しいけど。


 「がぁ……ぁぁ」


 「ぐっ……グフッ」


 ((コイツには負けられねぇんだ))


 だが勝者はただ一人である。ーードサッ


 一人が脚を崩して倒れた。勝者はーー


 「この俺……六真、しょうじだ!!」


 ラバキは満足そうに仰向けに倒れ、六真は高々に空に拳を突きつけた。


 「ハハッ強えな。お前は……」


 六真は緊張の糸がきれたのか、身に余る集中力の反動でアバキの隣に倒れる。


 「六真君!!」


 魔法を解いたのか姿を現し、六真に抱きつく穂野江さん。


 「穂野江さん……イデデ」


 「あっごめんなさい。今治療するわ」


 ポワァと暖かい光の輝きが六真の傷を癒やしていく。


 「ラバキのお陰だよ。お前に挑んでなきゃこんなに強くなれなかった」


 「そうか……そうだったな。それじゃあホラっ」


 「ん?」


 ラバキは手を差し出し、握手を求めてくる。


 俺はその手を取り、健闘した戦士としてガッチリと握手を交わした。


 「イダダ!お前、力強いんだよ……」


 「ありゃすまねぇ」


 (まさかあんなにダメージを負ったのにまだあんな力を出せるなんて……)


 治療が終わったのか穂野江さんは立ち上がり、脇に携えたレイピアを取り出す。


 「さぁ暴鬼……いえラバキ、貴様を殺すわ」


 「待って!穂野江さん……」


 「へぇ〜弱るまで俺を殺す瞬間を待っていたのか?ずいぶん卑怯な手口じゃねぇか」


 「六真君、この依頼はこの鬼を討伐するまで完遂できないのよ。ここで息の根を」


 僕は振り絞り穂野江さんの肩を掴む。


 「穂野江さん、ラバキを殺すのは待ってください。コイツがどんな悪いことをしてしまったのかはわかりませんけど」


 コイツを殺させる訳にはいかねない。もうラバキは僕のフレンドだから。


 「そうはいかないわ。ここで殺さなきゃ人類が脅かされるわ」


 「でも……こんなの」


 「でもじゃない!!これがDDO隊員としての責任であり、義務なのよ」


 そんなここで殺すのかよ。タノシイと感じた奴をーー


 「だったら俺が契約します。ラバキが人に害をなさないよう監視します」


 「オイオイマジかよ。六真……」


 「何を言って!」


 サイタイスが起動し、魔法陣が形成される。


 『契約プログラム起動……六真正士様、これより種族【鬼・羅暴鬼】と契約します。よろしいですか』


 「あぁ頼む」


 「オレもコイツならついていって良いぜ。なんたって対等にやり合える奴を見つけたからな」


 「サイタイスが勝手に契約を!?」


 穂野江さんが驚いている内に僕はさっさと契約を済ませた。


 「このオレ、羅暴鬼は六真正士を主として認める。よろしく頼むぜ、相棒!」


 そうしてラバキはサイタイスに吸い込まれ、僕の新たな仲間になったのだ。


 「本当に!なんてことをしてくれたの……あぁなんて報告すれば」


 「すみません穂野江さん……お願いします」


 ハァと額に手を当て空を見上げていた穂野江と満足した六真は夕焼けを見上げていたのであった。

どうも〜作者の蒼井です!

新年そうそう嫌な出来事がありましたが無理にとは言いませんが前向きになって歩み続けましょう!!

どんなに辛くても人間は最後まで立ち上げれる力があります(¯―¯)

それではまたお逢いしましょ〜う(^O^)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ