ウサギの穴にご注意を
良く晴れた日曜日の朝。アリサは気分よく、朝露の乗ってつやつやと輝く草木を横目に、庭を歩いていきます。向かう先は彼女の秘密基地。
手には朝食と昼食が入ったバスケットと、お気に入りの本を持って、足下には家で飼っているウサギのぺティがヒョコヒョコとついてくるのがいつものこと。
この庭はあまりに広いので、秘密基地は至る所にあります。
今日のアリサの予定は、心地のいい木漏れ日にハンモックをかけ、お気に入りの本を読むというもの。なんとうらやましい休日でしょうか。
しかし、そんな日に限って何かが起きます。
ほら。アリサが秘密基地の近くに来たとき、足下にあったイタズラな小石がアリサを転ばせてしまいました。
アリサの手からお気に入りの本が、綺麗な弧を描いて飛んでいきます。飛んで行った先は、木が途切れまるでスポットライトのように照らされた場所でした。
アリサは少しの痛みをこらえながら立ち上がり、本の元へと走りました。
しかし、本の元のへと行く前にその手前にあった真っ黒な大きな穴に、アリサの体は吸い込まれるように落ちてしまいました。
そこに残ったのは、風でページが開いた本と、バスケットだけ。
庭は何事もなかったかのように、葉が揺れる音を響かせて、のどかな日曜日はゆるりと進むのでした。
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穴の中に落ちたアリサはゆっくりと落ちていきます。穴の壁は、カラフルなタイルが貼られて、直視すると目に強い刺激を与えてきます。あまりにも目を刺激するのでアリサは上を見ました。上には小さな光が見えました。それはゆっくりと小さくなっていきます。
浮遊感は無いのにアリサは下に落ちているようです。浮遊感が無いからかアリサは全く怖くありません。
しかし、元の世界へ戻れるか分からないのになぜアリサは落ち着いて居られるのでしょうか……
「ふふ、こんな体験が出来るのなら、もっと早くにあの場所を探検すればよかったわ」
どうやら、アリサはかなりの変わり者のようで、むしろ穴に落ちた事を喜んでいるようです。
しかし、どこまで落ちるのでしょうか? アリサは体をひねって下を覗いてみました。
下には闇が見えるだけで、床はまだまだ先のようです。
「こんなに時間があるなら、あの本を持ってくればよかったわ。それにしても、こんな穴あんな場所にあったかしら? そういえばペティを置いてきてしまったわね。あの寂しがり屋のウサギは家まで自力で帰れるかしら」
壁はあいかわらずカラフルなタイルが貼れていて直視するのは厳しいので、目を閉じてアリサは考え事をします。しかし、いつの間にか穴のあまりの長さと、昨日の寝不足のおかげで眠りに落ちてしまいました。
こんな状況で寝られるなんて図太い少女ですね……
さて、こんな図太い少女はほって置いておくことにして、あの一緒にいたウサギの行方、気になりませんか?
そうでしょう、そうでしょう。
では、少女が見事に大きな穴に落ちたのウサギを見に行くことにしましょう。
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はい、皆様のご想像通りウサギも穴に落ちていました。どうやら、飼い主の後を追ってきたらしいです。飼い主想いのいいペットですね。
さて、そんなウサギですがきらきら輝くカラフルなタイルをずっと見ているうちに、躯がどんどん熱くなります。そして、なぜだか自慢の白い毛並みは飼い主と同じく肌色に変わっていき躯も大きくなりました。
そう、ウサギだった躯は人間のものへと変わったのです。 真っ赤な目はうるうると潤み、真っ白なさらさらな髪の毛の中にはウサギの耳がひょっこりと見えています。
「うー 僕は一体どうしたんだろう? ご主人~」
ウサギの哀れな鳴き声は、残念ながらアリサの耳には届きません。
そして、ウサギのペティは泣き疲れて眠ってしまいました。
未だに出口が見えない穴で、二人はどこまで落ちるのでしょう。




