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Flag number 08 「 魔法 」


ホーソン王国は、王城がある一つの中央都市と東西南北にある四つの街、無数に散らばる16の村が存在している。

そんな中央都市では、勇者再来のお祭り騒ぎで盛り上がっていたが、現在は別の話題で騒いでいた。



[あの変人に、弟子が出来た!]



スキル獲得に向け、各自トレーニングを開始してから50日が経っていた。

あれから直哉達は、冒険者組合員にて依頼達成と討伐報酬を受け取りに行き、その後直ぐ動き出した。

朝日が登る前からのランニング、終わると筋トレに不思議な踊り、疲れたら座禅を組んで瞑想、通行人に気付かれないように尾行、不意に同士討ちを始め、自傷と思える魔法撃ち、魔法を使用したサーカス行為で稼ぎつつ…そのため注目を浴びるのは仕方の無い事だろう。

住民に被害は無い事から、一種の名物扱いされていた。

結果、早い内から全員が下記のスキルを取得していた。



[疲労回復補正Lv.1]

心体の疲労時、回復時間を少し短縮する。


[歩法Lv.1]

歩行時に気配を抑制する。


[危険察知Lv.1]

自身よりLv.の高いモノの危険を察知する。


[魔法耐性Lv.1]

下級魔法に対するダメージを、を1/4軽減。



これらの取得が済んでからは、ダレンとリオンは相互で格闘術スキルの鍛錬に励み、直哉とレレイは魔法の鍛錬に別れていた。



「ようやく、魔力操作と魔力変換が習得出来たよ。ありがとう。」


「いえいえ!こちらこそ、いっぱいスキルを…取れて…良かったのです…」


厳しい苦行を思い出したのか、語尾が弱くなり目が潤んできたレレイであった。

魔法に関しては一日の長があったレレイは、直哉より早く魔力操作を覚えていた。


「けど、なんで魔力球ばかり練習していたのですか? 他のスキルを…取る練習を…しても…」


止められなかったのか、レレイはホロホロと涙を流し始めた。

原因はスキル取得の方法にあった。

魔力操作を会得後は、魔力が底を尽きるまで使い果たして、回復までは別訓練、回復後は再度魔法消費と延々と繰り返していく…と指示を聞いた時はまだ知らなかった。

ランニングしながら消費量の少ない回復魔法や強化魔法を、手当たり次第に微力な効果の範囲でかけ続け、気付かれる前に逃げる行為。

ダレンとリオン両者に回復魔法をかけて、休ませることなく戦闘を続けさせながらも稀に強化魔法を使用する行為。

その他もあるが、それらを偶然見た住民から、[ 疾走少女 ]や[ 修羅姫 ]という二つ名が生まれたというのを最近知ったのだ。

犠牲ばかりでなく、結果として下記の魔法系スキルを、順調に取得できたのだ。



[魔力増加]

総魔力量を、1/20まで使用した場合、

総魔力量を、10増加。


[魔力操作Lv.1]

消費魔力が、5減少する。


[魔法効果増加]

魔法効果を、1.05倍の補正。


[詠唱短縮Lv.1]

不要な詠唱文を、1小節削減できる。



突然泣き出したレレイの心情を理解していて、年頃の女の子にやらせる内容ではなかったと反省した直哉である。


この世界のスキルの取得条件は、大まかに4種類、

・経験が必要な時間型

・知識が必要な読解型

・固有スキルによる譲渡・強奪型

・生まれた時から保有される先天型

その他にもあるが、基本はこれらに分かれており、その条件を満たさなければ取得不可である。

今回取得したスキルは、レベルに寄らない短期間で取れる時間型であった。

これらは必要な条件として、1日中取り組む必要があり、それも取得するまで日を置かないこと、そのスキルに関連する鍛錬をやり続けなければならなかった。



落ち着きはじめたレレイに謝ると、先程の質問に答える。


「えとね、要は魔法の源である魔力が変化して、魔法は発動するんだよね? だったら…」


直哉は、目を閉じて両掌を腰の前に持ってきて集中し始めた。

はっきりと魔法を視認したのは2回。

一つは駅構内で、足元に現れ転移した。

一つは紫スライムの回りに浮かんでいた。

どちらも共通点がある…

暫くすると、レレイから驚きの声が漏れる。

目を開けると直哉の周囲には、青紫文字で描かれた二つの魔法陣が宙に浮かんでいた。


順調だと判断し、更にイメージを固めていく。

散々見て受けてきた、紫スライムの魔法陣から飛び出してくる、不安定なジェル状の黒スライムの性質と質感、真紅の炎で形成された大鷲の熱量や速度。

ぼやけている輪郭だったが、徐々に修正と補完を加え鮮明にしていく。

イメージが完成した時、片方の魔法陣が光り出すと中央から、蒼炎の大鷲が2羽飛び出て来た。

上空へクロスしながら飛行し、急速に地面に落下して爆ぜ散った、あとに残るは大きく凹み着地した部分と、散らばった炎が揺らいでいた。


「あれ?スライムの方は出そうにないね…何でだろ?」


信じられないものでも見たのか、唖然とした表情でレレイは固まっていた。

暫くそのままだと判断した直哉はステータスを確認してみた。



[無詠唱]

魔法の発動に、詠唱を必要とせず、術者固有の魔方陣を使用する。

形状と質量に比例し、威力及び消費魔力量が変わると。



直哉自身も驚いていた。

紫スライム戦で見た炎魔法とは違う色の炎魔法。

恐らくだが、無詠唱の説明部分の術者固有の魔法陣という部分が関係しているのだろう。

一人納得する直哉の元に、いつの間にか近寄ってきたレレイが興奮して話し掛けてきた。


「凄いです!なんか普通の炎魔法じゃ無かった…というか!無詠唱…って!?魔法陣を使用する魔法って初めて見ました!」


「そうなのかい?ビギナーズフォレストで会った、紫色のスライムがやっていたので、そういう方法もあるのかと思ってたよ。無詠唱ってスキルもあったからね。」


「普通は詠唱魔法なんですけど……スライムが魔法…それって魔道系クラスじゃないですか!? 森あので出る様な魔物じゃありませんよ!」


「そうなのですか?色んなスライムがいっぱいいたので、変異種かもね。良かった死ななくて。」


「…以前勇者達は、常識が通用しないって言ってましたけど、直哉兄さん見てて実感しました…」


その後、直哉にどの様な姿形のスライムかを聞き魔道スライムと判明したが、既に終わった事で済ませてしまう直哉に、レレイは渇いた笑いを浮かべるしかなかった。


昼前になり、ダレン達がやってきた。

午前中の訓練所で、既に服はボロボロになり裂傷、青丹も酷い。しかし何故か2人とも痛みに表情が歪ことなく足取りも軽い。


「直哉兄!レオンも取れたっす!」

「……苦労…した。」

「はいはい。じっとしてね!」


心配する事なく慣れた手付きで、2人へ回復魔法を掛けるレレイは、既に手遅れだなんだろう。

回復も済んで一息したダレン達に、直哉は最近考えていたことを告げる。


「そろそろ貯蓄も尽きる頃なので 、依頼を受けてレベル上げをしようと…次いでに他の街へ行きませんか?」


「遂にっすね!やったっす!」

「すぐ行きましょう!この街を離れましょう!」

「……実践…楽しみ。」


その言葉を待っていましたと超反応する3人だ。


「では、何処がいいかな?…出来れば、食事が美味しい場所がいいな…」


この3ヶ月、鍛錬よりも苦しい思いをしたのが食事だった。

生の味という単調な味に飽きて作業感で食べていた。

実際仲間が出来ていなければ、レベルが大きく上がった前回の依頼後早々に移動予定だったのだが、ダレン達の実力で旅をするのはまだ危険と考え、スキル取得を優先させていた。既に充分の成果と納得し、今回予定通り移動を決意した。

それと、食事内容が条件となるスキルもあるので、どうせなら美味しいものがいいと思っていたのだ。


「そうですね…私達もこの街を出た事ないので又聞きでしかありませんが、南は魔族との攻防が激しくなっているらしいので、そうなると…」

「西の国を経由して、南西の国アルビィヌスへ行きたいっす!」

「……南西は…料理が…絶品…らしいよ?」

「道中の村や街にも、名物があるんですよね~♪」


「それは良いですね。早速冒険者組合で移動申請してきましょう。」


ホーソン王国首都の料理がこれだから期待はあまり出来ないが、早期に目的が出来て良かった。

4人はそれぞれ宿へと戻り荷物を持って冒険者組合に向かった。受付嬢に西の街への移動申請を行うと、旅の冒険者様に用意された、国と人族が暮らす街や村が書かれた簡易地図を受け取り、外門を出て遂にホーソン首都を後にした。





西の街へ行くための道は、徒歩だと途中の村を経由しても2月程かかる。

通常は移動馬車等を利用するが、食料調達分で殆ど使い果したためその資金が足りなかった。

日本にいた時のように、綺麗に舗装された道などは存在しない。年月を経て幾度の馬や車輪の跡から作られた荒い道であった。

それにずっと街道が続く訳では無い、西の街の途中には、奥深くに龍人が住むと言われる山道や、気性の荒い淡水族が暮らす運河を越える必要がある。

何れにしても、魔物や盗賊等は突然現れるため、行商人や貴族などには、ダブルシルバー以上の冒険者が護衛依頼を受ける決まりも世界共通となっている、と道中で説明を受けた。


街道を歩いて2日目、ようやく山に入るところで、初めて直哉達の前方から馬車がやってきた。

クロスした3本の花が描かれた紋章旗をかけ、全体を青色で染め上げられた煌びやかな馬車は、どう見ても行商人の類いでは無い。

馬車の周りには、4名の冒険者らしき人達が警護に回っていた。

あまり近付きたくない雰囲気だが、脇道に移動しながら進んでいると、馬車が止まり警護していた冒険者の1人が走って来て話し掛けてきた。


「ふん。ブロンズ彰見たところ駆け出しってやつらか…おいガキ共、こっちは東の領土を統治する公爵様の護衛中だ。歩いてないで通るまで膝付いてろ!」


ダレンが言い返しそうになったが、それを静止し、言われた通りに膝をつき道を開けていると、馬車が直哉達の横で急に止まる。



「んん…そこの平民の子供ら、顔を見せよ。」



どうやら、また面倒臭い事になりそうだ。

保存していたデータが消える…

一回目は、再度書いた文章の方がいいものが出来た感じがある充実感だ。

二回目は、やっつけ感が半端ないがそれでも充実感がある。

三回目は、挫けてもいいよね?って思いながら書いた私を誰か褒めて…

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