Flag number 07 「 強者への道 」
初の依頼達成の翌朝、ダレン達が拠点にしているという[止まり木亭]という宿屋に訪れていた。
食堂で待っているダレンに連れられ、3階のレレイが取っている部屋に入ると、既に2人も揃っていた。
昨日別れる際に、色々と相談をしたいと話しておいたのだ。
立って話しをするのもなんなので、腰を下ろすように勧めた。
「ナオヤ兄!今日は強さの秘訣を教えてくれっす!」
「…アニィ…楽しみ…はやく。」
ダレンから仲間に対してさん付けは変じゃないか、という話題になり色々試した結果、兄貴分ということで纏まった。決してそう呼ばせたわけではない。
ついでにPTリーダーになる事になったが。
待ちきれない仔犬の様に身を乗り出すダレンなのだが、隣の2人もソワソワしている事を隠しきれなかった。
相談事の一つをお願いするためには、その事も話さなければならない。
コホンと咳払いし、直哉は話し始めた。
「秘訣という程でもないけど、ステータスの高さはスキルにあると思う。私の場合は、固有スキルの成長補正と身体向上スキルでレベルアップ時に上がるからね…どちらにしても、既に他の向上系スキルを獲得している3人は、もう取れないよ。」
「やっぱりそのスキルでしたか…残念です。」
既にこの世界では、向上系スキルの複合不可は知れ渡っていたようだ。
昨日渡された3人のステータスカードには、それぞれの筋力上昇などの単一向上スキルを取得していた。
単一型にも利点があり、直哉の網羅型の10補正とは違い上昇幅が15と大きくはある。
しかし、やはり尖った特化型であるため、身体能力が低い種族は、亜人族や魔族などと平均値と元々の上昇幅で差が付く。
リオンはまだしも人族の2人は、相手より少しレベルが高いだけでは、他種族への勝率は薄い。策を弄しないと勝てないのだ。
しかし、それでも方法はある。
ため息まで出して、落胆した様子のダレン達に、パンッと両手を叩き視線を上げさせ、直哉は微笑みながら話しを続けた。
「けどね、他のスキルを取って強くなることは出来ると思うんだ。」
どんよりしていた雰囲気が一転し、ダレン達の目に期待の光が戻った。
しかし、上手く伝わってないのかすぐ様不安げになっている。
これは直哉自身の問題なのだが、どうにも癖で、相手に興味を持って聞いて貰う体勢を作る話し方をしてしまう。
悪い癖だと思いつつも話しを進めた。
「えっと…ダレンなら剣で、レレイなら魔法で、リオンは拳で強くなるとか、何を主体にしていくのかは、大体決まってるよね?」
「そう…ですね。いずれは護身術を覚えたいと思ってますが、先ずは魔法です!」
「俺は剣を使いたいっす!そんで強くなったら巨大な剣を2本持ってドラゴンとか倒すっす!」
「…素手が…効かない…相手もいるから…別のも覚えたい。」
意外としっかりした考えを持っているようで、直哉は関心した。
まあ、ダレンだけは脳筋的な回答で予想通りだったが。
「それなら、スタイルに合ったスキルを、たくさん取っちゃえばいいよね。」
「それは…素晴らしいのですが、現実的ではありません。」
「…スキルは…才能…いつの間にか…覚えるもの。」
自信を持って伝えてみると、レレイとリオンは否定してきた。
直哉は知らない事だったが、この世界では、スキルとは神が与えた才能であると理解されていた。
例えば2人の人間が、剣術を同じ時間修練をしたとしても、剣術スキルが身に付くまでの時間もバラバラで、最悪才能が無ければ一生身につかなかい事も有り得ると実証されていた。
だからこそ貴重なスキルという区分が出来るのだ。
また、強い人間程自分のスキルを、どの様にして獲得したのかを開示することはしない。
それが常識とされている現在、直哉の言葉は机上の空論である。
そういった常識を異世界から来た直哉が、知らないものだと思っていた2人だったが、はっきりと否定しても笑みを崩さない様子に、ある予感が過ぎった。
「え…? まさか、ナオヤ兄さんはそれが出来るって言うのですか?」
内心まさかとは思いつつも聞かずにはいられなかった。
「はい。可能だと思っています。それと、どんなスキルがあるのかも知っています。」
揺らぎない自信を持って言い切った直哉に、3人は信じられないといった様子で目を見開く。
しかも、後半の言葉はとても見過ごせなかった。
「……スキルを……全部?」
「そうですよ? といっても、通常のスキルだけですが、恐らく全て網羅しています。けども、タイプスキルについては何も知らないですけど…」
3人ほ唖然として口を開けるしかなかった。
表情豊かなダレン達に、思わず苦笑してしまう。
「冗談…じゃなさそうですね。」
断言した言い方に、何か理由があるのだと思うが、いまでも新しいスキルはごく希に発見されており、まだどれだけあるのか分かっていない。
それを網羅していると言い張る直哉が、信じられないのだった。
尚も疑り深い3人に、直哉は持っていた黒のレザー製で出来た仕事鞄を漁る。
そこから取り出したのは手帳を、3人に見える様、中央の床に開いて置く。
「これを見て下さい。」
3人は置かれた手帳を眺めるが、うんうんと微妙な反応をしていた。
「これって、いつも休憩中に見ている本っすか?……読めないっす。」
「異世界人の文字でしょうか?すみません分からないです。」
手帳を色々な角度で見回していた3人だが、結局読めないと諦めてしまった。
そういえば手帳に書かれた文字は、直哉が日本語で書いていたので、読めなくて当然だった事をうっかりしていた。
「ああ…ごめんね。書いた文字は変換されないんだね。いずれはこちらの文字の練習をして行かないとなぁ。これはね、私が知っている全てのスキルを記録しているんだよ。」
3人は再度手帳に目を通し、パラパラとめくる。例え読めなくても、几帳面に区切られた文章で、一つのスキルだと判断してみるが、それがA4サイズの手帳の十数頁に渡って書かれており、いったいいくつあるのだろうと思う。
ダレンとレレイが、几帳面にも数を数えていると、リオンが四つん這いで直哉の近くに寄って質問してきた。
「…例えば…拳闘士なら…どんなスキルが…有用?」
「剛力、闘気、纏気、覇気、鬼化、硬化、狂戦士、崩拳、霊拳、流拳、剛撃、蹴撃、飛脚、移動術、五体強化、武具破壊、状態異常追加、状態異常確率上昇…その他にも、これらから更に派生するスキルがありますね。」
考えることなくスラスラと挙げる直哉だった。
一部のスキルは周知されているものだったが、聞いたこともない未知のスキルが色々と出てくる。
整理が追い付かなくなったのか、固まるリオンの横から表れたのはレレイだった。
「えと!私はどうですか!? 補助主体の魔法職が、戦闘でも役に立つにはどんなスキルがありますか!」
「魔力増加、魔力操作、魔力強化、魔力変換、魔力回復上昇、同時発動、詠唱破棄、回復魔法、身体強化魔法、弱体化魔法、妨害魔法、天使召喚魔法、精神干渉魔法、事象干渉魔法、創造魔法…他にもいっぱいあります。」
「詠唱破棄…事象干渉魔法? 創造魔法? 聞いた事ないスキルがいっぱいです…」
同じ様に一瞬の間もなく答えてくる直哉に唖然とする。それらもまた知らないスキルが多い。
「他にも、魔力感知、気配察知、害意感知、急所察知、罠解除、最高位鑑定、並列思考、全耐性なんて便利なスキルや、取得すれば多少ステータスを乗算するスキルだってあるんだよ。」
止まらない未知のスキルの列挙に、遂に容量オーバーになったのか、焦ったようにダレンが止めに入る。
「ちょっ、ちょっと待つっす!直哉兄は全部覚えてるんっすか!?」
「はい。そこにはスキル名しか書かれてないですからね。内容は全部覚えて省略しています。覚える事は得意なのですよ。記憶術スキルも今朝ようやく手に入れられましたし。これでもう忘れる事はないかと思います。」
再度唖然とするダレン達であった。
どうみても、100はゆうに超える数のスキル全てを記憶していると、平然と言い切ったのだ。
簡単に言っているが、これがどれ程貴重なものか分かっているのだろうか。
周囲に知られたら、絶対厄介事に巻き込まれると想像出来るのだ。
自分ならどうするか…と思考していると、まだ直哉の話しは終わっていなかったのだ。
「それで……取得方法も分かるっていったらどう思いますか?」
トドメの言葉であった。
ただ知っているだけじゃなく、会得方法が分かるという、とんでもない発言だ。
子供が悪戯する時の顔で説いてくる直哉に、3人は反射的に答えた。
「本来なら信じられません…が、ナオヤお兄ちゃんなら有り得ます!」
「…必要なモノを…優先的に…効率よく…今日ご飯奢る。」
「ナオヤ兄に、一生付いていくっす!」
レレイの呼び方が変わり、リオンがでかしたと頭を撫でてくる。混乱しているようだ。
三者三葉のズレた褒め言葉でも、満足して一層笑顔になるし直哉だった。
暫くテンションの上がったダレン達が、落ち着くのを待っていると、今度はダレンから質問をしてきた。
「けど、なんでそんなに知ってるんっすか?」
「あーまあそれは、異世界から来たせいかな。あ、でも多分ですが、こんなに知っているのは私だけかもね。」
そこは自信があった。
特異体質でもなければ、あの時間で全部覚えるのは無理だろう。
スキルの中には記憶術なども存在するが、それを選択するより生き残る為のスキルを優先的に選択しているはずだ。
それに、高校生達は自称神に選んだスキルを伝えてから直ぐ転移していたので、再度スキルを確認はしていない。
全知全能なんて便利なものは無いので、直哉だけと思って間違いないだろう。
ダレン達が納得してくれたのを見て、大切な事を伝えることにした。
「その反応を見て確信しましたが、やはり私がそれを知っているという事は、内密にして貰えると助かります。ただでさえ、変な人が昨日現れたばかりですしね…」
3人同時に頷く姿は、小動物の様で可愛らしかった。
「あ…それと、レレイには魔力というものに付いて教えて貰いたいのです。私達がいた世界には魔法なんて無かったので、いくら取得方法が分かっていても、説明内容に魔力を〜って書かれていて分からないのですよ。」
初めて直哉が自分にお願いをしてきたことに、喜ぶレレイであった。
「はい!勿論です!でも、魔法が無い世界って…生活はどうしていたのですか?」
確かにと不思議そうにこちらを見る3人だった。
彼等の生活には魔法は欠かせなく、特に生活において魔法具は必須アイテムだ。
大都市から離れた寒村などでは、魔法が使えなく魔法具も買えなければ自力でやらなければならず、大変な生活だった。
直哉がそういった生活をしていたとはあまり思えないが、異世界への興味が出てきたらしい。
その質問に対してどう答えようかと少しだけ考えて、口を開いた。
「ずっと昔は、自力で火や水を確保してましたが、私達の時代は、科学という別の力で便利に生活していたのですよ。半永久的に明るい光を生み出したり、無尽蔵とも思える水が家で飲めたり、乗り物次第では100を超える大勢を乗せて空を飛んだり、国が違う遠くの人と何時でも顔を合わせて会話出来たり…生活に不便な事は殆どありませんね。これらは身分に関係なく、誰でも気軽に扱えて便利だったかな。」
これまで住んでみて、この世界で不便だと思った事が、異世界ではどうなっているのかを簡易的に説明してみた。
聞かされた内容を想像したダレン達の反応は。
「俺らの生活が貧相に思えてきたっす…」
「…カガク…すごい。」
「……それ…魔法じゃ出来ませんよ!何ですかその夢の様な世界!!」
何故かレレイに怒られた。
もう許容量いっぱいになったのか躁鬱の落差が大きくなっている。
後でこちらが食事を奢らねばならないなと思う直哉だった。
「えーと…魔法は魔力の量が限度となりますので、それらを再現したとしても、数分持つかどうか…せめて大量の魔道具が必要になりますね。カガクって凄いですね!」
いきなり怒ってしまい恥ずかしさがこみ上げ赤面してしまい、誤魔化すように早口で説明し始めるレレイだった。
「なら、カガクってやつを広めたら豊かになるっすね!」
いい事考えたとドヤ顔したダレンだったが、直哉の表情が変わったのに不思議に思っていまった。
良い事づくめでは無いのも話さなければならない。
「まあ私はその仕組みを理解してませんし、この世界の素材で再現出来るのかも分かりません。それが出来たとしたら…例えば銃と呼ばれる武器で、酷いものは極わずかの時間で数十人を射殺出来たり、数百万人を一瞬で焼き殺す爆弾等も簡単に作れる程なので、ただ便利なものじゃないよ。」
「神話の魔法と同じ…いやそれ以上の強さじゃないですか…カガクって怖いものですね。」
レレイは想像しのか、両手で身体を掴み青ざめていた。ダレンやリオンですら口を閉ざして真剣な表情をしている。
「だからね、そんな世界から来た勇者達とは出来るだけ揉めずに、何かあっても逃げるのをお勧めするよ。彼等がどんな人物か分かりませんが、ステータスだけでなくそういった知識も勿論持っている筈なので、みんなの常識が通用しませんよ。」
はっきりと脅威の理由がよく分かり、ダレン達は必死に頷いた。
昨日の内から勇者と直哉の違いは聞いており、チートな能力を有し尚且つステータスも高いとなると、知識を再現出来る可能性はありえる。
そうなると勝つ事は不可能に近い。
仲間には、無謀な事はして欲しくないと思うが、もし何かの拍子にダレン達が巻き込まれたら…その時のために強くなる事を再度心に刻む直哉であった。
その後は、個人毎に有益なスキルの取得計画を立てた後、宿の食堂で朝ご飯を食べる。
食事後、これから始まる自分達の最強への道に浮き足立つ彼等の目を見ながらリーダーとしての最初の指示を出した。
「じゃ、今日からの予定としてスキル獲得のため、1ヶ月程外出は無しで全員“トレーニング”をします!」
期待と違う、汗臭い指示に落胆したダレン達であった。
近道はある、が努力をしないわけではない。
地道な努力こそ強くなる秘訣であった。
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名前:斎藤・ロットン・直哉
種族:異世界人
称号:巻き込まれた一般人
職業:冒険者
タイプ:見習い剣士Lv5
レベル:22
体 力:360 ➡ 375
魔 力:340 ➡ 355
攻撃力:340 ➡ 355
耐久力:346 ➡ 361
素早さ:349 ➡ 364
知 力:100 ➡ 101
器用さ:280 ➡ 290
【 固有スキル 】
異世界言語変換、成長補正【弱】
【 習得スキル 】
身体向上補正Lv3、疲労回復速度Lv3
短剣術Lv3、弓術Lv2、不動の心、
記憶術Lv1
【 タイプスキル 】
一閃
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