2026/10/10① 三木幹男はおむすび祭に参戦する。
上賀茂神社のパンフェスティバル、梅小路公園の京都音楽博覧会、春日神社の春日祭エトセトラ、エトセトラ…うぅーーん…今日も今日とで京都はイベント催事の目白押しだ。
大阪まで足を伸ばせば、世界縁日などのアフター万博イベントが随所で催されている。
別に今日に限ったことではないのだが、全く身体がいくつあっても足りないので、分裂したい。
俺1号はあっち、俺2号はこっち、俺3号は大阪…反乱が起きないように労働はローテーションを組むつもりだ。
俺は割と素直なので「俺」たちは皆仲良くできると思う。
そんなことは考えても仕方がない。
今日の俺は
吉田神社
おむすび祭
に参戦することにした。
我ながら渋い選択だ。おむすび祭。街コン縁結び的なものではなく、米の方だ。おにぎりだ。
吉田神社は特に節分祭で有名で、京都の寺社仏閣の中でも割と有名どころである。その神幸祭の宵宮(前日祭)が、よりにもよっておむすび祭なのである。
な、ぜ………
吉田神社は厄除け開運の神様で米とは特に縁はない気がするし、新米の季節でもないのだが、吉田神社は宵宮でなぜかおにぎりを推している。謎すぎる。
その謎を解明すべく、俺はおむすび祭の本拠地、吉田神社へと向かったー……
すかっとした青い空、朱色の鳥居と緑の松がくっきりはっきりよく映える。
うん、めっちゃおにぎり日和である。
運動会の時におにぎりを頬張るにはまさに絶好の空!という天気だ。ちょっと暑すぎるのが玉にキズだが、おにぎり日和には変わりない。
立派で大きい鳥居には、店先ののれん程の質素で白い「おむすび祭」の横断幕がよいしょとかけられていた。
もう少し派手にしてもいいんやでとも思うが、成る程、おにぎりらしい、よき質素さとも言える。
おむすび祭の趣旨はこうだ。
まず、おむすび券なるものを手に入れて、その券を白米の俵おにぎりに変え、その俵おにぎりを携えた皆々様が、参道にずらりと並ぶお店達からおにぎりに合う好みのおかずを探し求めるのである。
おにぎりは白米俵一種だ。邪道は一切許されず、プレーンでノーマルな基礎装備でスタートする。
そして、俵おにぎりの手持ちは一人3個であり、我々参加者はこやつらをいかにすれば美味しく頂けるか考え、数あるおかず達の中からこれぞと思うものを吟味しなければならない。
なんかちょっと面白い。
皆が皆、3個の俵おにぎりを手に、うろうろしている。
「鮭買おうよ、おにぎりやし」
「折角色々あるのに鮭!?もっと変わったのにしぃひん?」
「カレー食いたいけど、こいつおにぎりやしな…」
なかなかもってして、皆様お考えになられている。おにぎり縛りなので、それを基礎によりよいグレードアップを図っているのだ。
俺は長いものに巻かれていくタイプなので、よくよく並んでいるところの後ろにつくことにした。
そして「ikatのブイヤベース」と「吉田山せせりのパリパリ焼」なるものを手に入れた。
魚介の旨味が濃縮されたブイヤベースは、ノーマルおにぎりをお上品な洋風おにぎりに昇格させた。
パリパリ焼の鳥のじゅわりとした香ばしい油に白米が合わぬはずもなく、おにぎりはキラキラテラテラと輝いてみえる。
ふぅ。
遠くまで青く広がる空を見上げて、木陰に座りながら、のんびりとおにぎりを食べる。
美味しい。
美味しいな。
10月の季語におにぎりを入れても良いくらいに、この空に合っている。
おにぎりをもぐもぐと頬張りつつ、現地に来ても分からなかった謎を、手元の薄い板で検索する。
『お米を通じて「人と人」「地域と人」の縁を結ぶことを目的としたお祭ー…』
あぁ、そうなのね。
やっぱり縁結びとかかっていたのだ。
じゃあ、俺が今食べてるのは、おにぎりじゃなくておむすびと呼ぶのが相応しい。
周りはわいわいとお喋りし、お店の人はにこやかで、どこもかしこも賑やかだ。
吉田山にそびえる吉田神社への石段を子どもたちが鬼ごっこをしながら駆け上がる。
そう言えば節分の時しかこなかったな、吉田神社…
おむすびの米粒を箸で摘んで食べていく。
折角来たんだ、お参りにいかなくちゃ。




