2026/10/01 三木幹男は洗濯をする。
10月、京都は澄み渡るような晴れであった。
空は突き抜けるように高く、雲は一つもなく、何処に出しても恥ずかしくないこれぞ秋晴れである。
さぞかし肌にさらさらと流れる涼しい風と、暖かな陽射しのコントラストが気持ちいことであろう。
ことであろう、というのは、当然手術2日目の俺は、おうち待機である。
こんなに素晴らしいおさんぽ日和であるが、散歩に行けない犬のようにステイをくらっている。
別に俺には飼い主がいないので、脱走を試みても構わないのだが、快くお休みを頂いた会社にも引け目があるのでやはり治療に専念することにした。
一応うっすらテレワークで働きはしたので、単純作業くらいの脳みそなら回せそうだ。
問題は電話対応で、割と面白い声が出る。
ふざけてるのか?みたいな、ちょっと高い鼻声が出る。というか、それしか出ない。
「ふはい。んかりまひた。ふんねがいします。」
規則性を一々調べてないが、鼻に抜ける言葉が詰まってしまい、変な音になるようだ。
途中で入れなくてもいい「ふ」みたいな音が無駄に混入されている。
会社の人としか話してないので今のところ問題ないが、これが直るまでは外部の人と話すのは控えようという学びを得た。
天気がいいので洗濯をした。
折角の久方ぶりの晴天を有効に使ったほうがよい。
どうせお散歩にはいけないのだから。
洗濯機をオンにして洗剤を投入して蓋を閉めると、蓋にロックがかかり、洗濯機がゴウゴウ頑張り始める仕様だ。
いつもの手順通りに蓋を閉めた。
ガガガ………
……どうしよう、何か凄く嫌な音がする。
ガガガ……ガガガ………
聞き間違いではなく、してはいけない類の音がする。
中には下着とタオル位しか入って無いはずなのに。
蓋はロックがかかっているし、わざわざ洗濯を止める程のものだろうかとも思う。
洗濯機に一番投入してしまう可能性があり、且つ、投入したら死あるのみのものと言えば、スマホである。
俺は一度洗濯したことがある。当然そのスマホはおじゃんになった。
スマホの安全確保を確認し、そやつは手元にあったので、中に入れられた不憫な奴は、少なくともスマホじゃない。
…なら……まぁいいか。
言うて騒ぎ立てるものでもないだろう。
俺は割と適当な人間なのだ。
ガガガ……という洗濯機からの警告音は無視することにして、俺は掃除機をかけたりし始めた。
洗濯機がピーピーと終わりをお知らせする頃には、ガガガ音の存在はすっかり頭から消え失せていた。
俺はつくづく適当な人間である。
洗濯機から洗濯物を取り出していると、何かがコロンと転がりだした。
そこには、とってもピカピカに綺麗になった100円玉が落ちていた。
おぉ、こやつが犯人。
ほらね、やっぱり騒ぎ立てるものでもなかった。
驚きの白さではなく驚きの超つやつやになって、100円玉も満更ではなさそうだ。
折角なので、この100円玉は経済活動の渦に投入するのではなく、お賽銭にでも使ってやろう。
良かったな、100円玉。
お前を俗世から解放してやろう。
お空は晴天。
洗濯物はよく乾きそうだ。




