我を崇めよ
私は奴らの母船に乗って、奴らの母星に向かった。火星軌道付近で、太陽系のある宇宙とさよならをし、ファジス星のある宇宙に入り、ワープ航行に入った。シャルファーレンスさんのサポート無しで、奴らに地球侵略を辞めさせられるのか、若干の不安はあるが、やるしかない。いずれ、シャルファーレンスさんの新しい身体が出来れば、常にサポート受けられるわけではなくなるのだし。
ワープ航行が終わったようだ。青い惑星が見えている。海の面積は地球程ではなさそうだが、大気は青いようだ。ただ、地表が建造物で溢れている感じがする。海の近くでも建造物があるようだ。建造物が無いのは、ほんの一部だけのようだ。どうやら、軌道エレベーターの様なものがあるらしい。
母艦は軌道エレベーターの終端で止まった。さて、何処に行くべきかだが、政治の中心を押さえて侵略行為や破壊行為を止めさせなければならない。政治の中心地を調べねば。
「この星の政治の中心地は何処?」
私は母艦の司令室にいたうっとりしている乗員に聞いた。
「クネセットと言います。」
「どうやれば、行ける?」
「この軌道エレベーターを使って地上に降りて、公共転送システムを使えば行くことができます。」
「わかった。ありがと。」
私は軌道エレベーターで下に降りた。地上に出ると、公共転送システムはすぐに見つかった。私はシステムを使い、クネセットの中心部に転送してもらった。高層ビルが立ち並ぶ街並みが待っていた。私はちょっと行先に迷ったが、何とか連邦政府機関のビルを見つけ、そこに入り込むことにした。入るためには、入り口で身分証明の提示が要求される。身分証、身分証…。あれ?持ってきたはずだけどな…。ない。ない。ない。ない。うーん、しょうがない。私はチェックをしている人の目を見つめて、こう念じた。”あなたは宇宙連邦警察の身分証を確認した。”そうしたら、通過させてくれた。
ビルの案内図を見ると、連邦議会の会議室と議長の執務室があった。情報端末で見ると、どうやら今日の午後、連邦会議があるらしい。多分、議長は執務室にいるだろう。あの破壊行為を提案した奴を特定して、そいつの考え方を変えよう。私はそう考えると議長執務室に向かった。
私は議長執務室のドアをノックした。
「はい。」
「宇宙連邦警察のシャルファーレンスと申します。議長にお話があるのですが。」
「わかりました。五分ほどお待ちください。」
中から声が聞こえた。私はドアの前で、五分ぐらい待った。
「どうぞ。お入りください。」
私は部屋に入った。
「どういう御用件でしょう。」
議長と思われる人は言った。
「どうも、あなた方の星の人間で、他の星での破壊行為を行う人間がいるらしいのですが。」
「はあ。」
「何か、心当たりはありますか。」
「いいえ。」
やはり、そうきたか。
「かなり大規模なものなので、政府が関知していないと言うのは、おかしな話なのですが。」
私は更に突っ込んで聞いてみた。
「うーん、そう言われても、連邦議会でそのような話題が出たことはありません。」
「そうですか。」
さてはて、嘘か本当か。嘘なら、この星の連邦政府が動いている。本当なら、この星の別の組織が動いている。私は取りあえず、部屋を出た。もし、連邦政府が絡んでいるようなら、この後、何か動きがあるはず。そうすれば、尻尾は掴めるはず。
私は連邦政府機関のビルを出た。少し、ビル街の中を歩いた。殺気が漂ってきた。うーん、やっぱりか…。私はミラクルハープをつま弾く準備をした。後ろに不気味な影が四人ぐらい。何かしてくる前に、ミラクルハープを奏でるべきか。他に人影は…ないか。私は立ち止まってミラクルハープを奏で始めた。
四つの影は動きを止めた。
「あなた達は、誰に雇われたの?」
私は影に聞いてみた。
「我々は、ラファエールズ社に雇われたものだ。」
ほう。黒幕の一つかな。もしかしたら、他にも黒幕がいるかも。
「そのラファエールズ社って何処にあるの?」
「本社はモサッド星に、支社はこの星のクネセットにある。」
なるほど。じゃあ、案内してもらおうか。
「じゃあ、その支社に案内して。」
四つの影は、私をある高層ビルに案内した。そいつらとはそこで分かれた。さて、このビルに忍び込んで、社内放送をジャックすれば、取り敢えず、このビル内の人間は術中に落とせるはず。私はビルの受付で言った。
「社内放送のメンテナンスに参りました。済みません。放送室は何処でしょうか。」
「ああ、放送室なら、一階の奥、この廊下を真直ぐ行って、突き当り右側です。この鍵をご使用ください。」
「ありがとうございます。」
私は鍵を受け取って、放送室に向かった。ちょっと迷ったが、何とか放送室を見つけ、鍵を開け、中に入った。そして、緊急放送のスイッチとマイクのスイッチを入れ、ミラクルハープを奏で始めた。
五分ぐらい弾いたところで、私は演奏を止め、支社長室に向かった。向かう途中、また迷ったが何とか辿り着けた。私は部屋のドアを開けた。支社長はうっとりしている様だ。
「誰が他の星での破壊行為の首謀者なの?」
私は支社長らしい人に聞いた。
「教団シオーヌの中心人物たちです。」
「教団?宗教?」
「そうです。」
「その聖地って、何処にあるの?」
「この星のコーテリアルと言う場所にあります。」
「どうやって行くの?」
「公共転送システムで行けます。」
私は公共転送システムのステーションの場所を聞き、放送室の鍵を帰した後、そこに向かった。やはり、少し迷ったが、何とか着いた。そして、コーテリアルに転送してもらった。
そこは、珍しく建造物が少ない場所だった。只っ広い広場の様な所に、高さ二十メートルぐらいの白い壁が長く続いている。その壁につながるように神殿のような建物がある。どうも、その建物の中に教団関係者はいるらしい。私は神殿のような建物の中を覗き込んだ。神官の様な男が一人、座って何か読んでいた。だが、私と目を合わすと突然立って、建物から出てこう叫んだ。
「ベヒモース!」
すると、全長五十メートルぐらいの巨大な水牛の様だが、二本の長い牙を持つ生物が現れた。うーん、バイオアーマー持ってきた方が良かったか。私はミラクルハープを奏でてみた。しかし、効かない。聞こえないんだろうか?これは…困った。そいつは前足で攻撃してきた。私は何回かそれを走って避けた。そして、私は建物の陰に隠れた。その時、その生物は口らしきところから、光線の様なものだした。え!何それ!本当に生物?
私は建物の中で鏡を探した。鏡は…有った!直径二十センチぐらいの手鏡。私はそれを持って、外に出ると生物が光線を出してくるのを待った。私が壁にかなり近寄った時、奴は光線を発した。私は手鏡を向けた。手鏡は高温になり私は手を放したが、どうやら反射したものもあったらしい。生物に当たり、生物の肌に銀色の部分が見えた。これは、また、ロボットだ!私は、”ミラクルウィルス”と囁き、奴に触れた。そして、奴にウィンクした。
奴は五秒ほど、動きを止めたが、また動き出した。駄目か。誰か、乗ってるんだろうな。そいつを何とかするしかないか。こんな時に、宇宙船があれば内部に転送してもらえるんだけど…。ええい!そんなこと言ってられない!どこかに入り口があるはず。それを見つけなきゃ。でも、どうしたら…。そうだ。神殿の中に知ってる人間がいるはず。その人に聞くしかない!
私は神殿の中に入った。ついに奴は神殿を破壊し始めた。神殿の上の階から人がいっぱい降りてきた。私はミラクルハープを奏でた。殆どの人が立ち止まった。その中の一人に聞いた。
「あのロボット、何処に乗降口があるの?」
「右肩の部分にある。」
「ありがと。」
後は、あの右肩にどうやって登るかだ。ロープかなんか、あれば良いけど。私は神殿の中を探し回った。押入れの様な所の中に、有った!ロープだ。二十メートルぐらいある。地上からじゃ届かないか。ある程度、上に登らないと。私はロープを持って、外に出た。周りに高い建物は二つ、一つは金色の玉ねぎ型をしたアラビアなんかにある宮殿の様なもの。もう一つは塔のようなもの。どちらも、あのロボットの肩ぐらいまでの高さはありそうだ。多分、塔の方が、足場がしっかりしていると見た。私は塔のある建物に入り、急いで上に登った。塔の大きな窓から、ロボットを見た。やっぱり結構高い。四十メートルぐらいある。ダイジョブかな…。ええい。やってみるしかない!私はロープをあのロボットの頭が入るぐらいの大きな輪を作って、大きな窓を開け、ロボットが目の前に来た時、斜め上の方向にロープを投げた!いけぇぇぇぇ!……駄目だ。ロボットの首には、引っかからなかった。私は急いでロープを全部引き上げて、再度チャレンジ!あ、ロボットはこっちに気付いた。まずい。こっちを攻撃してくる。私は急いで再度、ロープを投げた。頼む!引っかかってくれ!ロボットは前足で、この塔を壊そうとしている。あ!引っかかった。私は塔が壊される寸前にロープに摑まって、ロボットにぶら下がった。揺れるぅ。振り回されるぅ。私はロープに必死にしがみついて、何とかロープを登っていこうとした。足でロープを抑えながら、手を上に進めていく。さすがに前足では私を掴めないらしく、振り落とそうと揺らしてくるが、何とか耐えた。
十分後、私は何とか、肩まで登った。そして、右肩にあると言う乗降口を探した。ロボットであることを隠している皮膚の様な部分と体毛が邪魔して、見つけ辛い。しかも、足元が揺れる。動く。私はロープがロボットの頭にまだ掛かっているのを確認すると、一時的にロープで腰を縛り、ロボットの身体にしがみつきながら、乗降口を探した。探して、探して、やっと見つけ、ハッチのような場所を開けた。中に入ると、やはりこの星の人々が三人ほどいた。私はミラクルハープを奏でた。
「あなた方の指導者は、今、何処にいるの?」
ロボットの乗員に私は聞いた。
「今、神殿の地下シェルターにいると思います。」
「ここから、連絡できる?」
「連絡はできますが、テキスト通信です。」
「このロボットは何処から出てきたの?」
「地下の格納庫です。」
「じゃあ、そこにこのロボット、行けるかしら?」
「できます。」
少し、ロボットを動かしていたが、その後、何か連絡を取って、どうやらロボットは転送されたらしい。
「着きました。」
「わかった。ありがと。」
私はロボットから出た。手で掴めるレベルの高さに梯子が上から降りている。私はそれを何とか登っていった。そして、格納庫の周り通っている通路を通って、そこを出た。後は、指導者の所へ行って、考えを変えさせないと。私は廊下を歩いて行った。前から、この星の人が歩いてくる。私はミラクルハープを奏でた。
「あなた方の指導者はどの部屋にいるの?」
「この奥の、左側の部屋にいます。」
「ありがと。」
私は奥にある左側の部屋に入り、ミラクルハープを奏でた。
「あなたなの?他の星での破壊活動を先導したの?」
「はい。」
その時、突然、地面が激しく揺れた。私はバランスを崩した。あ、倒れる!私は思わず、持っていたミラクルハープを前に押し出してしまった。身体は前に倒れ、ミラクルハープはそこに置いてあったペンタゴンマークがついている燭台らしき置物に差し込まれる感じで、弦は燭台の横棒に引っかかり、その上に私の体重がかかるという状態になった。
”ブチ””ブチブチブチブチブチブチブチ”
ミラクルハーブの弦が切れた!何と言う事!こ、これでは弾けない。揺れは収まったが、非常にまずいことになった。そして、私は寒気がしてきた。何だ、一体。何かが、何かが来る。何か悍ましい気配がこの部屋を包んだ。そして、薄気味悪い声が聞こえた。
「我が名はヤッハウーエ。この世界の生みの親である。」
「何?何が喋ってるの?」
「我は創造神である。我を崇めよ。」
私は薄ら寒くなってきた。何とかして、この声が話すのを止めたい。そう思うようになった。そうだ、ミラクルハープなら…って、駄目だ。弾けない。
「破壊せよ。すべては大イズラヘムを築くため。されば約束は果たされよう。」
この声が、諸悪の根源?じゃあ、絶対にこの声を何とかしないと。でも、ミラクルハープが駄目な今、どうやれば良いんだろう。その時、ボーとしていた指導者の様子が変になった。明らかに何かの意志を持っているようだ。私はこの人を外に出しては駄目だと直感した。指導者は立ち上がって、ここから出ようとした。私はその前に立ち塞がった。
「どけ。」
やっぱり、声がさっきの薄気味の悪い声と一緒だ。多分、この声だけだと、この場所から出られないんだ。そこでこの人に乗り移ったらしい。
「どかない!」
「なら、実力行使するまで。」
指導者は私の首を両手で絞めてきた。私はそれを両手で外そうとした。その時、何故か、この声の持つ記憶が流れ込んできた。
それは悲惨な記憶だった。三千年以上前、彼らはこの宙域で国を形作ったが、移住先で奴隷にされて逃げ出し、この星に定住するようになったが、二つの国に分かれ、一つは他の星の軍に滅ぼされ、もう一つは他の星によって征服され人々は捕虜として連れて行かれた。その後も、一旦解放されてこの星に戻ってくるが、争いに巻き込まれ他の星の支配を受けたり、巨大な星間国家の支配を受け迫害を受けるようになり、抗って戦争を起こすが負けて民族は大宇宙に散り散りとなってしまう。そして、散った先でも彼らは迫害を受けていた。その後、100年ほど前、やっとこの星に帰ってきたのだ。
私は指導者の手をそっと首から離すと、自分の両手で包み込むようにして、目を閉じて祈るように手を前にもってきた。私の瞳から涙が流れた。すると、瞼から外の光を感じた。どうも私自身が光っているらしい。五分後、光が消えた。私は目を開けた。指導者はうっとりとした状態に戻っていた。悍ましい気配は完全に消えた。何が、どうなったんだろう??
私はこれで全ては終わったと思って、帰路に着いた。軌道エレベーターで上空に上がり、そこで停泊中の船に乗船した。ブリタニア号とか書いてあったかな。地球に寄るように、彼らの目を見て念じた後、少し休んだ。宇宙船は無事地球に着き、私は荒廃してしまった八王子に転送してもらった。




