第二十一話:伝説の涙と強欲の影――少年の絶望、そして暗躍する水の一族
こんにちは、ムハンマド・ワカスです。第二十一話では、過酷な運命を背負ったタカシが、初めて自らの弱さをさらけ出し、涙を流す感動的なシーンから始まります。六百年間涙を流さなかったアラータの心すら動かした少年の悲しみ。そして、彼の存在を隠すための「平民」としての新たな生活がスタートします! 一方で、陰謀に踊らされる水師一族の暴走も加速。交差する光と影の物語をお楽しみください!
朝の陽光が小さな木枠の窓から差し込み、部屋全体を暖かく優しい光で包み込んでいた。
タカシは深く眠っていた。一年ぶりに、疲労困憊していた彼の体は信じられないほど軽く感じられた。
森の息の詰まるような重圧は消え去っていた。彼の幼い心を縛り付けていた見えない鎖の多くが、眠りの中で奇跡的に解けたかのようだった。
家族はもういない。帰るべき家もない。父の仇の顔も、砕け散った記憶から完全に消え去っていた。
彼が知っているのは二つのことだけだ。仇が存在すること、そして、復讐を果たさねばならないということ。
外では、世界が目を覚まし始めていた。
『伝説の師』――今やただの「おじいちゃん」となった男が、温かい朝食の乗った皿を持って入ってきた。
タカシは静かにそれを食べた。普通の食べ物の味は、彼の舌にはまだひどく異質なものに感じられた。
少年が食べ終えると、アラータは彼の向かいに座った。その古き瞳が、六歳の少年を注意深く観察する。
「タカシ」――アラータは静かに語りかけた。「お前は今、何を成し遂げたいと願っている?」
部屋が沈黙で満たされた。
タカシは自らの空っぽの両手を見つめていた。頭の中は完全に真っ白だった。
彼には目標がない。目的もない。想像を絶する苦痛、飢餓、そして深淵の絶対的な恐怖に耐え抜いた今、復讐のために戦うという考えそのものが、彼の小さな心を痛めつけていた。
彼は、父の温かい微笑みを思い出した。父の流した血を思い出した。
突如として、決壊した。
「全部……僕のせいだ……」――タカシは囁いた。その声は激しく震えていた。
彼の透明な青い瞳から涙が溢れ出し、木張りの床へとこぼれ落ちる。
ポタッ……。
ポタッ……。
「全部、僕のせいなんだ!」
彼は純粋な苦痛に声を裏返して叫んだ。
「みんなが言っていたことは本当だった! 僕は悪魔だ! 呪われてるんだ! 僕は不幸を呼ぶんだ!」
彼は小さな頭を抱え、抑えきれずに泣きじゃくった。
「僕のせいで……家族みんなが死んじゃった! 父さんが死んだ! 僕は病気だ! 力もない! 目的になんていらない……戦いたくない! 僕はただ、普通の生活がしたいだけなのに!」
その言葉は、まるで正しい話し方を忘れてしまったかのように、極度の困難を伴って彼の喉から引き裂かれるように出てきた。
すべてを失った壊れた子供の、絶対的な絶望の涙であった。
アラータは凍りついたように座っていた。
彼は、六百年にも及ぶ人間の残虐行為を目撃してきた男だ。
帝国が焼け落ち、何百万人もの人々が虐殺され、世界が灰と化すのを見てきた。彼の心はとうの昔に硬い石へと変わっていた。何世紀もの間、ただの一滴の涙も流したことはなかった。
だが、この小さく脆い六歳の少年が、これほどまでに魂を砕くような痛みと共に泣き叫ぶ姿を見て……その石に、ひびが入った。
『伝説の師』の目から、一滴の温かい涙がこぼれ落ちた。
彼は手を伸ばし、震える少年を力強く、安心させるように抱き寄せ、祖父としての静かな支えを与えた。
数時間後、アラータはタカシの新たな人生を築くための第一歩を踏み出した。
彼は少年を、『律神最高評議会』の最も近い地方支部に連れて行った。神ノ戦士のすべての業務を管理する統治機関である。
そこで彼は、タカシを追跡不可能な新しい身分を持つ「平民」として登録した。
次に、彼らは地元の学校へと向かった。
アラータは列には並ばなかった。彼はまっすぐに校長室へと歩み入り、厳重に封印された機密の「特別推薦状」を机の上に置いた。
それは、評議会支部長からの直接の命令書であった。
校長はその封印を一目見るなり冷や汗を流し、質問一つする勇気すら持てず、即座にタカシの入学を許可した。
この新しい時代において、地元の学校やアカデミーは単に読み書きを教えるだけの場所ではなかった。
彼らは人類を導くための新しい科学を教え、そして何よりも重要なこととして、神ノ光の絶対的な基礎を教えていたのだ。
現代の世界では、子供たちは三歳か四歳の頃に自然と眠れるエネルギーを覚醒させる。
アカデミーは彼らの親和性をテストし、属性を監視し、そして剥き出しの力をゆっくりと制御する方法を教えていた。
基礎レベルにおいて、力は生々しく未加工である。先に進むためには、学生は特定の『属性』(火、水、土など)を極めねばならなかった。
エリート一族のメンバーは、これらの属性を自然に受け継いでいた。だが、新たに覚醒した平民たち――神ノ光を取り戻したばかりの八十パーセントの人類――は、ゼロから自らの属性を開発しなければならなかった。
世界の大部分の者は、DランクかCランクに留まっていた。
だがこの世界において、剥き出しの力がすべてを意味するわけではない。真の支配力は『律神』――究極の制御技術から生まれるのだ。
神ノ光の容量が少ない戦士であっても、『律神』を完璧に極めていれば、より強力な相手を容易く屠ることができる。
アラータは、タカシにこの世の基本的なシステムを理解してほしかった。
少年に教育を受けさせ、読み書きを学ばせ、社会に溶け込ませる必要があった。タカシを無知で心を持たない殺人機械にすることだけは、絶対に避けたかった。
だが、アラータは恐ろしい真実を知っていた。
本来、タカシは存在してはならないのだ。
古代の予言では、救世主の肉体(器)は誕生の直後に砕け散り、その死をもって世界を浄化すると定められていた。
だが、ハヤト・シズカミが運命に抗ったのだ。彼は息子を救ってしまった。
タカシに欠陥はなかった。彼の唯一の「欠陥」は、力を持ちすぎていること――まさに、強欲な世界が飢え求めているその力を持っていることであった。
『|DNA進化《DNAエボリューション》』の法則の下では、戦士の激しい訓練と人生経験が彼らの遺伝子を恒久的に変化させ、特殊な特性を子孫へと受け継がせる。
タカシは、二つのSSSランクのアルファ一族の直系の子孫である。彼の生物学的な潜在能力は、まさに終末的なものであった。
『救済の日』以降、覚醒した八十パーセントの平民たちも『|DNA進化《DNAエボリューション》』の価値に気づいていた。
すべての平民が今や、日常生活で必死に神ノ光を使用し、基礎的な技術を発明し、自らの遺産を築き上げようと奮闘していた。彼らの未来の世代が、正式な「一族」を形成できるように。
入学を確保したにもかかわらず、アラータはその日、タカシを学校に残して去ることはしなかった。
彼は少年を真っ直ぐ木造の小屋へと連れ帰った。タカシが最初に学ばねばならない、命に関わる絶対的な基礎があったのだ。
この少年は、人間社会での生き残る方法を教えられたことのない王子である。
深淵で一年間野獣のように生きた後で、権力に飢えた普通の子供たちでいっぱいの学校へ彼を盲目的に放り込めば、壊滅的な結果を招くことは目に見えていた。
アラータは少年を分析した。
タカシは驚くほど聡明であった。概念を即座に理解する。決して軽率ではなく、恐ろしいほど忍耐強かった。彼が耐え抜いた恐怖が、六歳の体の中に鋼鉄の精神を鍛え上げていたのだ。
「最初の教訓だ」――アラータは命じた。その口調は、優しい祖父から厳格な師匠のそれへと変わっていた。
「お前のオーラを押し殺せ」
ヴンンンンン……。
タカシの体から、見えざる重い圧力が絶えず漏れ出していた。
それは彼自身の力ではない。『伝説の神霊・白狼』の恐るべきオーラである。
ハヤトの『封印縛魂転移』の技術により、タカシは獣の意思に反してでも、白狼の力の一部を強制的に引き出すことができた。
白狼の膨大なエネルギーの大部分は、タカシの脆弱な体を安定させるためだけに完全に集中していたが、それでもタカシがアクセスできるその一部の力は、BランクやAランクの戦士に匹敵するものであった。
六歳の平民がBランクの力を持つなど、生物学的に不可能である。
そのような初期能力を持つのは、エリートのアルファ一族の跡継ぎだけであった。
「このエネルギーを隠す術を極めなければ」アラータは厳しく警告した。「世界はお前を狩るだろう。お前は幽霊にならねばならん」
タカシが生き残れるか否かは、絶対的な秘密保持にかかっていた。
彼は世界から身を隠し続けねばならない。
彼自身の生きている血族――叔母のつぐみ、母のエマ、そして彼が残してきた妻、アイラからも隠れ続けねばならない。
彼は、この世界に産み落とされたばかりの三つの新しい命――幼き弟の嵐・静神、アイラの弟である剣之・壊滅座、そして純叔父さんの孤児となった娘、絢しからも秘密にされねばならなかった。
もし家族が彼の生存を知れば、彼らは世界を引き裂いてでも彼を取り戻そうとするだろう。
そしてもしそうなれば、タカシは即座に再び、世界の強欲の究極の標的となってしまう。
アラータは、少年が再びあの地獄へと落ちることを絶対に許さなかった。
遥か遠く、活気に満ちた東の地の王都で。
シュバッ!
ドガァァンッ!
堅牢な石の柱が、壊滅的な蹴りの下で粉々の塵と化した。
静神・アイラは荒い息を吐いて立っていた。包帯を巻かれた彼女の小さな拳から、汗が滴り落ちている。
彼女はアカデミーにおいて、誰もが認めるトップの生徒であった。毎日が、骨の折れる容赦のない肉体訓練のサイクルであった。
彼女の心は鍵をかけられ、「タカシ」というたった一つの名前の記憶によって守られていた。
だが、彼女はもはや亡霊のためだけに戦っているのではなかった。
彼女には新しく、絶対的な目的があった。彼女は、自らの世界の中心となった三つの脆い新しい命のための、難攻不落の盾とならねばならないのだ。
彼女は屋敷の方を見やり、ベビーベッドで安全に眠る三人の赤ん坊――アラシ、ケンシ、そして小さなアヤシのことを想った。
(私が守る)
アイラは誓った。彼女の紅い瞳が、太陽の光の中で危険な輝きを放つ。
(あなたが戻ってきた時、タカシ……私があなたのために、安全な世界を創り上げているから)
一方、西の地の壮麗な宮殿では。
現在の最高指導者である和樹・水師が、奪い取った玉座に誇らしげに座っていた。
『水』の属性を高度に極めた血統である『水師一族』の長として、彼は自分が世界を栄光ある新たな平和の時代へと導いていると固く信じていた。
彼は、自分の手足に繋がれた糸に全く、完全に気づいていなかった。
影の組織『新生』は、彼を安っぽい楽器のようにもてあそんでいた。
彼らは完璧な世界という甘い嘘を彼に与え、野心と強欲に目を眩ませたカズキは、その言葉をすべて鵜呑みにしていた。
「我々は、あなたの子供たちに、彼らが当然手にするべき力を与えましょう」
玉座の間の影から、『新生』の工作員が囁いた。
その申し出は、彼を陶酔させるものであった。
『新生』は、『|伝説の神霊・海王蛇《レジェンダリー・ディバイン・スピリット・シー・サーペント》』を、カズキの年長の双子の子供――娘の結奈・水師と息子の悠真・水師の体内に封印すると約束したのだ。
カズキの心臓は、幸福な強欲で早鐘のように打った。
彼にはまた、黄泉・水師という生まれたばかりの娘もいた。彼女は、静神と壊滅座の新たな跡継ぎたちと全く同じ時期に生まれた赤ん坊である。
彼の心の中で、彼の一族は永遠に地球を支配する運命にあった。
水師一族は、水と力の伝説となるのだ。
彼は邪悪で満足げな笑みを浮かべた。
『新生』がやがて彼の魂から引き出すであろう、血塗られた恐ろしい代償のことなど、全く知る由もなかった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
タカシが「全部僕のせいだ」と泣き崩れるシーンは、読んでいるこちらも胸が痛くなりました。五歳で世界を背負わされ、家族を失った少年にとって、普通の生活を望むのは当然のことですよね。アラータの流した「一滴の涙」が、二人の強い絆の始まりを感じさせます。
そして新たに明らかになった『DNAエボリューション』の法則! タカシが二つのアルファ一族の血を引く「生まれながらのバケモノ」であることが改めて証明されました。一方で、カズキは完全に『新生』に操られ、自分の子供たちに伝説の海王蛇を封印するという狂気の道へ……。
タカシが力を隠しながら学校生活をどう送るのか、そして水師一族との衝突がどう描かれるのか、これからの展開がますます楽しみですね! コメント欄で皆さんの感想をぜひ聞かせてください!




