↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お土産屋さんの戦士たち  作者: 遠海 流


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/6

サービスエリアの女戦士⑥

 「私がマルガリテスと出会ったのは社会人一年目の頃。就活に落ちまくった結果、別に入りたくもない会社になんとなく入社して、それはもうお先真っ暗の人生を歩み始めてた時っす」


 なんて嫌な話の導入だ。これから聖剣とやらに出会うエピソードとは思えない。


 「あの頃の私にとって、楽しみといえば仕事終わりに飲む酒くらい。駅前からちょっと離れた居酒屋に週4で通ってたんすよ。火曜日はなんとなく気が乗らないので、それ以外の平日は全部」


 「新卒の女の子とは思えない習慣だ」


 「あんまりにも足しげく通うものだから、常連さんから顔覚えられましてね。おっさんばっかりの店でしたから、私みたいな若い女はちやほやされるんすよ」


 娘くらいの年齢の女性が毎日のように飲みに来ていれば、さぞかし可愛がられるだろう。


 「金曜以外は翌日の朝も早いんで、飲む量をセーブしてたんすよ。ビールは3杯まで。焼酎はロックなら2杯、水割りなら3杯まで。日本酒は2合まで。それが私の決めた絶対のルールだったんです」


 「えっ、普通に飲みすぎじゃないか?」

 

 「いやそれくらいじゃ酔わないっすよ。こう見えても酒に強いんで。でもね、ある日常連さんがすごい気前よく奢ってくれて、私的にはルールの上限越えてるのに、飲め飲めってすごい注いでくるんすよ。相手は30歳くらい上のおっさんだし、無下に断るわけにもいかないっしょ。だから奢られるだけ飲んだんですけど…」


 当時を思い出したかのように、鴻池は口元を手で押さえた。


 「うえ、思い出しただけで吐きそう」


 「吐くほど飲んだのか」


 「吐くほどっていうか吐きました。あ、でも私だって女ですから、人前で醜態は晒さなかったっすよ」


 「トイレに間に合った?」


 「ちゃんと店の外に出て、電柱の陰に吐きました」


 朝方に吐しゃ物が路上に残っている光景をよく目にするが、こういう人間が前日の夜にやらかした結果らしい。


 「席からトイレまで距離があったんすよ。扉と便座を開ける時間を考えると、その間にリバースしちゃうかもしれないっしょ。それなら店の外にダッシュで出て、そのへんに吐いたほうが被害は少ないかと」


 「公共の道路を汚した言い訳はいいから、早く聖剣との出会いを話してくれよ。今のところ酔っ払い女が吐いただけじゃないか」


 出会ったばかりの相手の汚いエピソードなど聞きたくない。竜馬が先を促すと、鴻池は2本目のタバコに火をつけながら続けた。


 「吐いたあと、人気の少ない場所で夜風を浴びながら休んでたんす。電車に乗る気力もなくて、明日も仕事か、なんて考えながらボーっとね。そしたら突然、襲ってきたんすよ」


 「なにが」


 「アンデッドっていうんですかね。中途半端に生き返った死体みたいなやつが、キモイうめき声上げながら私に覆いかぶさってきたんすよ」


 「どっから出てきたんだよ、そんな化け物」

 

 「あの辺近くに葬儀場ありますし、そこじゃないっすか」


 通夜を終えて、あとは葬式と火葬を待っている遺体が、葬儀場を抜け出して鴻池を襲ったというのか。なんとも荒唐無稽な話だが、ドラゴンに襲われた経験者としては信じないわけにもいかない。


 「ゾンビみたいに汚い感じじゃなくて、湯灌を終えたあとの遺体だったんで綺麗でしたよ。だから見た目にあんまり不快感はなかったっす。フルチンだったこと以外は」


 「で、酔っ払いの鴻池さんはそいつに襲われてどうしたの」


 「そりゃもう酔いも覚めますよね。必死に逃げようとしたんすけど、吐いた直後で体に力が入らなくて。四つん這いで逃げようにもスピード出なくて、ああもうだめだ、殺されるって諦めかけたその時っす。見たんですよ、私は」


 腰に差したマルガリテスに手を触れ、鴻池は誇らしげに微笑んだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。