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第一話 日常の中では便利屋さん扱い






「ばあさん、この荷物何処に置いとくのさー?」


「ああ、それは此方にお願いできるかい。動かさなくて済むよう、向きに気をつけてねぇ」


「はいはーい、よっ、と……!!」


 バタバタと忙しなく動く青年の額から汗が落ちる。

 秋も深まり、晩秋の気配が見えてくる頃だが、やはり動き回ればそれなりに暑い。廊下や庭先を何度も往復する。そして最後の荷物を階段上に上げた後、青年はしゅるりと襷《たすき》を解いた。


「うっし、今日の仕事おーわりっ!」





 □□□





 腰近くに置いていた串団子を一つ掴むと、口の中へと入れる。程良い大きさの団子は食べやすいし、意外と腹持ちも良い。片手で串を引きながら目の前に広がる青空へ目を向けた。


 風は冷たいが、暇さえあればこうやって屋根の上で寛いでいる。瓦の上は太陽の日差しでじんわりと暖まり、何とも心地が良い。


 ぱたりと身体を瓦に落とし、瞼を閉じれば先刻までの疲れと共に眠気が襲ってくる。其処まで身体を酷使した覚えはないのだが、やはり疲れは溜まっていたようだ。久々に今日は夜(・)に(・)仕(・)事(・)が(・)な(・)い(・)。本格的に寝入りしようと息を吸い込んだ、その時だった。


「かっずさ! みーっけた!」


「おわっ!?」


 突如響いた声に、慌てて起き上がれば前歯が欠けた童が此方を見て、にんまりと笑っていた。

 どうやら梯子を使って登ってきたらしい。長年の勘が告げる。これは何か厄介な事に巻き込まれるな、と。


 言葉を制すように片手を出し、青年は首を横に振った。


「悪いな。今日は忙しい」


「嘘はいけねぇんだー! 上総《かずさ》は、暇な時しか屋根に登らんって、おっちゃん言うてたもん!」


「あんの生臭坊主……」


 上総と呼ばれた青年は、脳裏に過ったとある人物に悪態を吐いた。せっかくの貴重な休息時間が消えてなくなったからである。


 なあ、と声を掛けられ視線を横に向ければ何処か真剣な目で自分を見る童がいた。


「上総は何でも屋なんやろ?」


「……何でも屋、というか正確には御用聞きだ。邦《くに》限定の。でも、それじゃあ日々寂しいから、報酬さえ貰えれば何でもやる便利屋はしてる。まあ、大体荷物運びや掃除をやる事が多いがな。それがどうした?」


「頼みというか、依頼があるんだ」


「依頼?」


 うん、と頷きを返し童は懐からじゃらりと音の鳴る麻袋を取り出した。


「これ、頑張って集めたオレ達の金子。これでおっちゃんに贈り物をしたいんだ! 頼む、力を貸してくれ!」


「マジか」


 休息はもう望めないな、と上総は小さく息を吐く。此処暫く、休みなく立て続けに仕事が入っていたので今日こそは気の向くままのんびりと過ごしていたかったのだが。

 何の迷いもなく、童が自分の所に真っ直ぐ来たという事は、自分の位置を知らせた協力者がいる。それならば、既に退路も断たれているだろう。

 面倒臭くはあるが、幼く小生意気な童からの滅多にない願いだ。金子まで差し出されていては、どうも断りづらい。

 上総は居住まいを正すと軽く大腿部を叩いた。


「……ったく、仕方ねぇな」


「上総!」


「付き合ってやるよ。但し、お前らだけで進めんのは無しだ」


「えっ……」


「俺に声をかけたくらいだ。他にも協力してくれる奴がいるんだろ。そいつら全員巻き込んでやれ。そっちの方が、奴の驚きもすげぇ筈だ」


 そう言って、上総は意味ありげに口端を吊り上げた。









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