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神様の手違いで死んだ社畜おっさん、まずは自由を願い、次に明日を願う!TS転生し美少女に!最強チート《願い》は一日一回だけど万能です!異世界スローライフで世界も人も未来も救ってみせます!  作者: 兎深みどり
第一章《TS転生しちゃいました!》

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第56話《聖律》

 王都の夜を切り取るように、天文塔の上層が青白く明滅した。

 観測魔導陣の符が一斉に震え、空気が低く唸る。


「……反応値、上昇。これは……魔力か?」


 若い観測官が顔を上げる。

 だが、隣の主任がすぐに首を振った。


「違う。魔力ではない。波形が……理そのものを揺らがせている」


 盤上に刻まれた光点が、次々と軌跡を描いては消える。

 それはまるで、世界の法則が一瞬だけ書き換わったかのようだった。


 主任は唾を飲み込み、低く呟いた。


「干渉式が……成立していない。式そのものが変化している……?」


 魔法では説明できない。

 だが確かに“何か”が起きた。



 下層の監察室では、フェルネがその記録を眺めていた。

 光盤に刻まれた線が、ゆっくりと螺旋を描く。

 それはどこか、音のようでもあり、律動のようでもあった。


「見えぬ手が……理をなぞったか」


 フェルネの声は震えていた。

 長年、学問として理術を研究してきた彼でさえ、初めて見る現象だった。


 “それ”は魔力でも神聖でもない。

 ただ、世界の法に触れた何か。

 まるで“因果の糸”が、静かに結び直されたような感覚。


 背後の助手が慌てて声を上げる。


「記録が追いつきません!現象が……止まりました!」


「よい。記録はここまでだ」


 フェルネはゆっくりと立ち上がる。

 目の前の光盤には、最後に微かな軌跡が残っていた。


 円を描くような線。

 それは、まるで世界が自ら呼吸しているかのように脈動していた。


「……因果が、一瞬だけ動いた。だが、誰の手によるものか」


 フェルネの瞳が細く光る。

 その奥にあるのは畏れでもあり、興奮でもあった。


 ――この世界には、まだ知られぬ“理の鍵”がある。


 その夜。

 王都の人々は何も知らずに眠り、

 ただひとり、学者だけが震える手で報告書を書き留めていた。


「学者記録:観測魔導陣、深夜二時に異常反応。魔力反応は皆無。干渉式不成立。因果構造の一部が再編された形跡あり。……解析不能。」

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