表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の手違いで死んだ社畜おっさん、まずは自由を願い、次に明日を願う!TS転生し美少女に!最強チート《願い》は一日一回だけど万能です!異世界スローライフで世界も人も未来も救ってみせます!  作者: 兎深みどり
第一章《TS転生しちゃいました!》

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/142

第55話《蓄願》

 塔の夜は深く静かだった。

 窓の外で風が低く鳴り、燭台の火が細く揺れている。

 検査の疲れがまだ残るのか、ナユは寝台の上で小さく息を吐いた。


 ――今日はもう終わり。ゆっくり休もう。


 まぶたが落ちかけた瞬間、頭の奥で微かな電子音のような響きが鳴る。

 《時計》スキルのアラームだった。


 《通知:残り十五分。本日の《願い》は未使用です。》


 ――あっ、忘れてた……!

 毎日一度だけのチャンス。

 使わなければ消えてしまう。

 けれど、今は動く理由がない。

 逃げる訳でも、助けを呼ぶ訳でもない。


 ナユは小さな手を胸に当てた。


 ――もったいないな……。

 使わずに“取っておく”ことが出来たら、もっと役に立つのに。

 例えば、何かが起こった時に一気に使えたら……


 思考が形を取り始める。

 その瞬間、心の奥がゆっくりと熱を帯びた。


 《願い》の発動条件――“心からの願い”。

 それを満たした時、世界は静かに応じる。


 ナユの胸の中で、柔らかな音が鳴った。

 まるで、鍵が回るように。


《新機能解放:蓄願ちくがん

《効果:未使用の《願い》を一日分ずつ保管可能。最大三回まで蓄積可。》


 ――……えっ。これ、マジで出来ちゃった?

 貯めないといけないけど三回連続で使えるのはチート過ぎませんか神様!?

 だけどこれは良い保険になるな。


 小さく笑いそうになったが、声は出さずに毛布に顔をうずめた。

 嬉しさよりも、安堵が大きかった。

 これで少しは余裕を持てる。


 外で、夜の鐘が一つだけ鳴る。

 《時計》が自動的に日付を更新した。

 ナユは目を閉じ、静かに呟く。


「今日の記録:検査後。二十三時四十五分のアラームで未使用に気付く。“ストック出来たらいいのに”と願った結果、《蓄願》発動。これで《願い》を貯められる……明日への保険が出来た。日報完了。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ